町寿司の雄、そしてエンタメ寿司の新店

寿司でもそれぞれ方向性の違う注目の2店がオープンしました。

大人気の町寿司の新店

「すし乾山」 写真:大木淳夫

11月20日、初台にオープンした「すし乾山」は、「すし宗達」「すし光琳」「すし其一」という、お好みで楽しめる大人気の町寿司店を率いる新田真治さんの新店で、こちらでは親方自らが握ります。カウンター6席とテーブルが2卓。ほぼ宣伝していないということもあり、地元の赤ちゃんを連れた若い夫婦、娘さんを連れたお父さん、一人客などが皆楽しそうに過ごしていて、とてもいい空気感。握り2,800円~、おまかせ6,800円~でもちろんお好みもOKです。毎朝6時に豊洲を訪れ、仲卸さんと強い関係性を築いている新田さんならではの握りや酒肴を堪能できます。親方も大好きという鯨はぜひ。グループ店全ての名前の由来である、琳派の画家はまだまだいるそうなので、来年もきっとさらなる出店があるのでしょう。

SNSに上げたくなるような寿司ネタが魅力

「鮨結う紬」港区巻き
「鮨結う紬」港区巻き   写真:お店から

12月10日、六本木にオープンしたのは「鮨結う紬」です。場所は麻布警察署の裏側、銀座に移転した人気店「鮨由う」があった場所です。親方は2021年、恵比寿にオープンするや、高級寿司をカジュアルな値段で、さらに飲み放題付きということでブレイクした「鮨 結う 翼」にいた田原和樹さん。こちらも飲み放題付きおまかせで16,500円。プリン体がたっぷりなことから「プリン巻き」と名付けられたあん肝巻きや、蟹、ウニ、さらにキャビアがのった「港区巻き」など、誰もがSNSに上げたくなるようなメニュー、そして約2時間、徹底的に楽しんでもらいたいという姿勢はさすがです。最近、寿司店の日本酒の値段がどんどん上がる中、値段を気にせず飲めるのはいいなあとも、改めて思いました。

三つ星店系列の魅惑のビストロと気鋭のフレンチ

最後はフレンチです。

YouTubeで大ブレイクしたシェフの王道のビストロ

「le bistrot des bleus」 写真:お店から

まずは12月5日、広尾のイートプレイワークス2階にオープンした「le bistrot des bleus(ル ビストロ デ ブル)」。「レフェルヴェソンス」などを持つサイタブリアの「ビストロネモ」があった場所で、料理監修は同じ系列である「ラ・ボンヌターブル」の中村和成シェフ。コロナ禍の時期にYouTubeで大ブレイクした人気料理人です。てっきりイノべーティブ系かと思ったら、なんと王道のビストロメニューがずらり。

「le bistrot des bleus」 写真:大木淳夫

ウフマヨ、ドフィノア、ポムフリット、パテアンクルート……。もううれしくなってどんどんオーダー。特にジャガイモ系が素晴らしく。ワインも5,000円台からのボトルがあり、これは危険なビストロです。スタッフはシェフ、スーシェフ、ソムリエと皆20代で平均年齢27歳。それを温かく見守る中村シェフ。これからが楽しみでなりません。

自家製カンパーニュも注目のフレンチ

「atti」 写真:大木淳夫

そして11月10日、 白金高輪にオープンした「atti(アティ)」も注目したいお店です。松野敦シェフは代官山「アタ」の元料理長で、赤羽橋「タワシタ」ではスーシェフを務めていました。しかし華麗な経歴にこだわることなく、興味の赴くままに発酵料理などさまざまなジャンルに挑戦。自分の成長を止めてしまう気がするので、敢えてスペシャリテは作らないというほどのチャレンジャーです。この日はアラカルトでいただきましたが、9品で11,000円のコースは充実。例えばブーダンブランには台湾の烏来から直接取り寄せたスパイス・馬告(マーガオ)を使い、ソースは15種の無農薬野菜で。有名パン店での経験もあり、カンパーニュは自家製です。これだけで気になる方が多数だと思いますので、ぜひ訪れてみてください。

ではよいお年を!

※価格は税込。

文:大木淳夫、食べログマガジン編集部