望月 英雄氏のおすすめ4軒

家族やスタッフと訪れることが多いと話す望月氏が推薦する4店は、日本料理店3軒とフレンチ1軒。いずれも雰囲気、味ともに評価の高い名店ぞろいだが、肩肘張らずに行ける店ばかりなのでご安心を。

ディナーのおすすめ①東(あずま)いち

望月氏が1軒目に挙げてくれたのは、都営新宿線曙橋駅から徒歩3分に立地する日本料理店「東いち」。店主は人形町の老舗高級料亭「玄治店 濱田家(げんやだな はまだや)」の元料理長で、望月氏の修業先でもある。オープンは2022年5月とまだ新しい店だ。

趣ある端正な店構え。神楽坂に移転した日本料理店「まる富」の店舗を引き継いだ
趣ある端正な店構え。神楽坂に移転した日本料理店「まる富」の店舗を引き継いだ   写真:お店から

「訪れるのは休日で、1人でも行きますし10席ほどの小さなお店なので、店のスタッフや家族で貸切りにしてもらうこともあります」と望月氏。ちなみに「東いち」の店名は「東京一の名店に」との思いから命名され、同名の銘酒を造る佐賀の酒蔵も公認という。

客席はカウンター6席、4人掛けテーブルが1つ
客席はカウンター6席、4人掛けテーブルが1つ   写真:お店から

「東いち」の料理についてうかがうと「店主の経歴からクラシックな日本料理を提供するお店ですが、経営母体に精肉店が入っているのが特色。黒毛和牛をはじめとし、産地や部位もさまざまで、他ではあまり楽しめないような部位を味わえるのも魅力です」と望月氏。

オーダーは単品ではなく基本お任せのコース料理を楽しむことが多く、和牛メニューは黒毛のヒレ、近江牛のサーロイン、近江牛のヒレなどから選べるという。

もちチョコきんぐ
牛タン黒毛和牛ネックシチュー。下は牛タン、手前の分厚い肉が黒毛和牛のネック   出典:もちチョコきんぐさん

和牛を使う料理は炭火焼きやすきしゃぶなどいろいろあるが、ランチの看板メニューであり、ディナー時はアラカルトでも堪能できるのが「牛タン黒毛和牛ネックシチュー」だ。箸ですっとほぐれるほど柔らかく煮込まれた牛タンがゴロゴロ、他店ではあまり聞いたことのないネックは通好みの部位。うまみやエキスがたっぷり抽出され、店の看板メニューとなっている。

・おまかせコース 予算~20,000円

ディナーのおすすめ②プレヴナンス

「お客様のご紹介でうかがったのが最初で、シェフとコラボしたこともあります」と教えてくれたのは外苑前のフレンチ「プレヴナンス」。「プレヴナンス」はフランス語で「思いやり」という意味だが「先を見据え行動すること」という原義から付けられたもの。「食べログ フレンチ TOKYO 百名店」にも選出された実力店である。

東京ふらふら
品のあるアースカラーでまとめられた店内   出典:東京ふらふらさん

望月氏が利用するのは自店が休日の日曜で、やはりスタッフか家族と年に3~4回は出かけるそう。「我が家には10歳と7歳の子どもがいますが、大人と同じ量を食べられれば一緒に食事ができるのもありがたいですね」

シェフが提供するのは、自ら足を運んだ日本各地の生産者から届く多彩な食材をふんだんに取り入れた、日本の四季が感じられる滋味あふれる料理。「きちんとしたフレンチがいただけます。全体的に味そのものが気に入っています」と望月氏。

やっぱりモツが好き
フランス産鴨フォアグラのポアレに佐賀のホワイトアスパラ、黒トリュフなどを合わせた一品   出典:やっぱりモツが好きさん

コース料理を楽しむ望月氏が特に印象に残るものとして挙げてくれたのは、フォアグラを使った料理。シェフの静井氏自身がフォアグラ好きで、カボチャやトウモロコシのスープにパウダー状のフォアグラのアイスが添えられていたり、ポワレしたフォアグラにトリュフ、アーティチョークのペーストを敷いて、ソテーしたジロール茸とインゲンをアクセントに添えたりなど、創意工夫にあふれる美しい料理に魅了される。

きゅいそん
コーヒーとともに供されるマカロンなどのプティフール   出典:きゅいそんさん

望月氏が腕を振るう「日本料理 太月」では奥様が女将を務め夫婦で店に立つが「プレヴナンス」ではシェフの奥様がパティシエを務め同じ調理場に立つ。「シェフの料理ももちろんですが、奥様が作るデザートや小菓子もしっかりおいしいんです。うちもそうですが、互いを認め合いながら1つのものを創っていくところに親近感が湧きます」(望月氏)

・お任せコース 予算:~30,000円

ランチのおすすめ①驀仙坊(ばくざんぼう)

望月氏がランチの1軒目に教えてくれたのは、中目黒にあるそばと日本料理の店「驀仙坊」。店主が望月氏の店に来てくれていたことがきっかけで行きつけになったそう。

中目黒駅から徒歩数分、桜並木が有名な目黒川すぐに立地し、店主は学芸大学駅前にあった手打ちそばの店「夢呆(むほう)」で修業、約20年前にこの店を開いた。

ピンクサファイア♪
一見そば屋とはわからないような佇まいが印象的な店構え   出典:ピンクサファイア♪さん

「気兼ねなく行ける雰囲気で、地域の方にも愛されているお店。僕は子どもを連れてよく行きます」と望月氏。

引き戸を開けて店内に入ると木の温もりを感じる落ち着いた空間が広がり、客席は4人掛け、6人掛け、8人掛けの全42席。テーブルがゆったりした間隔で配され、大テーブルは相席で利用しやすい。

秋山 具義
人気の高い「納豆蕎麦」   出典:秋山 具義さん

そばは野趣あふれる香りと味わいの挽きぐるみ。歯ごたえを残しつつしなやかさがあり、喉ごしも上々だ。

「僕は普段から食べる量がものすごく多いので、メニューの端から5種類くらいを1度にたのんで平らげます」と、驚きの大食漢ぶりを明かしてくれた望月氏。食べたことがないメニューはないほどの望月氏が必ずオーダーするのは天ぷらそば。鴨そばもお気に入りだ。

イタ湯浅
酒の肴にぴったりな「鳥焼き」   出典:イタ湯浅さん

「おつまみになるような一品料理も多いのでゆっくりそば前を楽しむ、飲んでから〆にそばを食べに行くのもいいと思います」と望月氏が話すように「山葵のおひたし」や「あさりの佃煮」ほか季節の一品、天ぷら、豆腐、焼き物などがお品書きにずらりと並び、あれこれ選ぶのも楽しい。

・予算:アラカルト ~3,000円台

ランチのおすすめ②青山 おとと

「スタッフやお客様とよく行きます」と教えてくれたのは、外苑前駅に近いビルの地下1階にある「青山おとと」。オーナーシェフはフランスをはじめヨーロッパ各地で修業、帰国後は日本料理の名店「龍吟」などで腕を磨いた。

SUPER1313
L字形のカウンター席の目の前はオープンキッチン。テーブル席もある   出典:SUPER1313さん

木材や漆喰など自然素材を多用する落ち着く空間で存在感を放つのは、オープンキッチンにしつらえた焼き場とかまど。炭火の力で食材が持つおいしさを最大限引き出し焼き上げ、かまどでふっくらツヤツヤのご飯を炊き上げ提供する。

サンドイッチ伯爵
絶妙な火入れの紅鮭。濃い切り身の色とほのかな炭の香りもたまらない   出典:サンドイッチ伯爵さん

「お任せで焼き魚の定食をいただきますが、きちんとした料理を手頃な価格で楽しめるのが魅力です」と望月氏。

サバ、ブリ、カンパチ、マダイ、スズキ、カマス、銀ダラなどさまざまな焼き魚があり、炭火で焼かれた魚は、皮はパリッと、身はふっくら。ていねいにだしをとった味噌汁、お代わり自由のご飯、小鉢なども付き、1度味わえばコスパがすこぶるよいことがわかる。

みすきす
香りよくみずみずしく焼かれた椎茸の炭火焼き   出典:みすきすさん

「夜遅くまで営業する日もあるので、仕事終わりに飲みに行くこともあります」と望月氏が話すように、酒の肴も充実。夜は、サラダ、お造り、魚介はもちろん、野菜や肉の炭火焼きや熟成チーズなど、豊富な肴をアテにお酒を楽しみ、焼き魚のお茶漬けや南部鉄器で炊き上げたご飯で〆るのもよさそうだ。

・炭火焼きのお魚とおばんざいの定食 予算:2,000~3,000円

※価格はすべて税込です。

取材・文:池田実香(フリート)