東西対抗おでん選手権・前編は“創業70年以上”の歴史あるおでん屋さん

寒い季節になると食べたくなる鍋料理。中でも、あったか~いだしの染みた大根や卵など、魅惑の食材がゴロゴロ! 冬の風物詩的料理「おでん」に迫ってみようというこの企画。実は、具の種類やおつゆの味が大きく異なるというこの鍋料理の、関東と関西での違いからひもといていきましょう。

関東と関西のおでんって何が違うの?

まずは、おつゆの話から。一般的に関東のおでんといえば、濃口醤油と酒、みりんや砂糖で甘辛い味付けに仕上げ、グツグツと煮込んで仕上げていきます。対して関西のおでんは、薄口醤油を使用し、基本的に塩で味付けをしてあっさり煮込みます。なので、見た目も関東は茶色っぽい、関西は黄色っぽいという具合に、印象が異なります。

 

さらに、具材。関東では定番人気のちくわぶですが、関西のおでんには滅多に入っていないのだとか。関西特有の具材もたくさんあり、さえずり(クジラの舌)、コロ(クジラの皮)、牛すじなど、関東のおでんでは耳馴染みの少ないものばかりですね。料理名自体にも違いがあり、関東では元々おでんのことを「煮込み田楽」と呼んでおり、後に今の呼び名になったといわれています。また、関西では元々「関東炊き(かんとだき)」と呼ばれており、現代でいう駄菓子感覚の食べ物として親しまれていました。

 

そんな、東西で別の顔を持つおでんですが、共通しているのは、どちらの地域でも古くから日本人に愛されてきた料理だということ。そこで、関東・関西それぞれを代表する、創業70年以上の歴史あるおでん専門店を紹介したいと思います!

【西】創業弘化元年!“日本一古いオデン屋”と呼ばれる大阪の老舗「たこ梅」

出典:Crystal Geezerさん

 

大阪・道頓堀界隈で、ひと際目を引く木造瓦葺きの建物といえば、ここ「たこ梅」。なんと弘化元年創業、2017年で174年目を迎えた老舗中の老舗で、食通の文豪として知られる開高健など、多くの小説家に愛されてきたお店なんです。名物は、ひげ鯨の舌を独自の製法で一週間以上かけてじっくり仕上げる「さえずり」900円(一串)など、鯨を使用した種。また江戸時代、上等の酒を上々に燗をつけて出す店という意味を持つ「上燗屋」だった同店では、厳選した純米酒をハンドメイドの錫(すず)の酒器で提供するなど、お酒好きにはたまらないサービスも人気の理由のひとつです。

【東】創業大正4年!浅草の伝統の味を守り続ける「浅草おでん 大多福 」

出典:けろたん55さん

 

暖簾をくぐると漂うおだしの香り、カウンター席の連なる店内になんとも下町らしい風情を感じる浅草の老舗店。創業から100年以上続く伝統の味を楽しめるこちらのお店でリピート率が高いのは、細かく切ったエビをたっぷり練り込んだ「海老ばくだん」や、豆腐と山芋を合わせた生地の中に刻んだ野菜が入った「がんもどき」など、練り物系が特に人気です。おでんの価格は、110〜530円(一品)なので、色々な味を少しずつ楽しんでみるのもあり。また、2人前のおでんが壺に入った持ち帰り用の「おでん つぼ土産」5,000円などは、家族へのお土産にも最適。なお、現在は大川橋店の仮店舗にて営業中です。

【西】創業昭和20年!あの元祖グルメ漫画にも登場する“かんさいだき”の名店「常夜燈 豊崎本家」

出典:shimoyama01さん

 

グルメ漫画のパイオニア「美味しんぼ」にも登場したことで知られる“かんさいだき”の名店。かんさいだきというおでんの呼び方は、昭和の名優・森繁久彌氏が命名したのだとか。種は季節によって変わりますが、やわらかい食感の明石の「タコ」、京都・京丹後市から仕入れた「大根」など、関西ならではのしっかりとしただしの旨みを感じられる具材にハマる人が続出(一品200〜400円)。そして、〆の一杯として欠かせないのが、おでんのだしで炊いたごはんに、さらにだしをかけていただく「ちゃめし」300円。最後の一滴まで、おだしの奥深さを堪能することができる鉄板メニューは必食です!

【東】創業大正10年!野菜系のネタやランチのおでん定食も人気の麻布十番「福島屋」

出典:えり助さん

 

福島県出身の創業者が、静岡県のかまぼこ屋で修行した後に東麻布で創業した、麻布十番商店街で地元の人に愛されるこちらのお店。1階ではおでんのテイクアウトができ、2階ではカウンターとテーブル席でアツアツのおでんをゆっくりと味わうことができます。おでんの特徴は、丸ごと1個使用した「トマト」259円、おでんの具材としては珍しい葉物の「小松菜」151円など、野菜メニューが豊富な点。また、昼間も営業しており、ランチタイムに食べられるおまかせ6品がセットになった「おでん定食」896円は、近隣で働く人や学生に人気のメニューのひとつです。

 

後編では、現代おでんの新しい魅力に迫る予定です! どうぞ、お楽しみに。