大石さんイチオシのタネはこちら

4月以降のイチオシは富山産白えび。こんもりと盛られ、昆布締めだが昆布が強すぎないのがよい。酢飯は京都のミルキークイーンとコシヒカリを超軟水で硬めに炊き、3種の赤酢と米酢1種で仕上げている。

繊細な香りと食感を口内で感じる白えび。440円
 

大石さん

なめらかな舌触りと昆布で引き立てられたえびの甘味がたまらない。旨味のある日本酒とも相性抜群。白えびやウニは軍艦で出てくることもありますが、個人的にどちらも海苔なしが好きなので理想通りです。

「やま幸」のマグロも思う存分食べられる

マグロは「やま幸」から仕入れ、壁には本日のマグロの札が貼られている。赤身が440円、漬けが490円、中トロが660円と他にはない値付け。個体ごとの寝かせ具合もドンピシャだ。

三崎の釣り本マグロの中トロ。660円
 

大石さん

マグロは気持ち多めに注文した方が賢明かも(笑)。先日も食べて唸って、大将の“今日のマグロはいいなあ”なんて話を聞いて、なぜ5貫頼まなかったんだろうと後悔しました。

「やま幸」のマグロがたっぷり入ったトロたく巻きも必食。目の前で巻かれるマグロのボリューム感には驚くこと必至だ。

中に入った煎り胡麻がいいアクセントになったトロたく巻き。990円

光り物の締め加減が絶妙すぎる!

たて塩と米酢で締めたコハダは脂ののり加減と酸味のバランスが秀逸。噛むごとに何層にもわたって味わいが出てくる。細かな切れ目により、ほぐれる酢飯との一体感も抜群だ。

天草からのコハダ。440円

高級なタネも手頃な値段でいただけるのがうれしい!

黒ムツやのどぐろ、毛蟹などの高級なタネを気軽に食べられるのも魅力。手頃な価格帯であっても確かな産地からの上モノが届いていて、例えば館山からの黒ムツは脂がのった濃厚な食べ心地だ。それでいて食後にすっと引いて、いい余韻が残る。

皮と身の間の旨味がたまらない黒ムツ。550円
 

大石さん

そもそも酢飯がおいしいから通いたくなる。米粒の輪郭があって粒離れも絶妙で噛むともっちり。喉越しもよくてタネと酢飯が同時になくなる。自分に合った酢飯に出会えたので、あちこち寿司を食べ歩く必要がなくなりました。タネの仕込みもきつすぎなくて、魚それぞれの味がしっかりしている。あと、寿司に限らずですが、私は店にいる時の寛ぎ度合いが味に大きく影響する方で、ここは本当に楽。ラッキーなことにいつも周りにいいお客さんがいて、客層のよさも感じています。もちろん黙々と食べるのもありですが、こんなに自然に周囲といい間合いで話せるお店も珍しいですね。気分と価格はカジュアルで味は本格筋。満足度の高さに繋がる好循環がある寿司店です!

目利きの大将が選んだ日本酒の品揃えに驚かされる!

田島さん自身が日本酒に造詣が深いため、店には常時50種ほどの通な銘柄が揃う。値付けも良心的で、大半は600〜1,000円。握りはなし、おつまみと酒を楽しむ日、「立ち飲みあきら」も定期的に開催している。

左から新政 NO.6 X-type」「仙禽 ナチュール ZERO nigori 2023」「HIRAN 神楽 無濾過生原酒」「あべ ピンク 純米吟醸生原酒おりがらみ たかね錦」

「さくっと入れてさくっと食べられて本当においしい寿司屋を作りたかったんだけど、並ぶようになっちゃった……」とはオーナー大将の田島さん。内容がいいだけに人気になるのは仕方がない。店のInstagramのストーリーで随時入りやすい時間帯を流しているので、寿司気分になったらチェックして築地へ向かおう。

※価格は税込です。

撮影:八木竜馬
取材、文:大石智子、食べログマガジン編集部