【映画のあの味が食べたい！】

『オリエント急行殺人事件』完璧主義の名探偵ポアロの朝食は、こだわりのゆで卵。

 

子供が卵をもってイスタンブール市内を駆け抜けます。これは、ある紳士の朝食なのですが、その紳士は、ふたつ用意された左右のゆで卵がきちっと揃っていないことを確認しダメ出しをします……。

 

大きな口髭をたくわえたこの完璧主義な紳士こそ、世界最高の探偵といわれるエルキュール・ポアロです。

 

シャーロック・ホームズと並んでミステリー小説史の中で最も有名で人気のある探偵、ポアロ。ホームズのような緻密なタイプを「犬じゃあるまいし」とちょっと小馬鹿に、ひらめきで事件の全容を把握する天才タイプ。生みの親は「ミステリーの女王」といわれたアガサ・クリスティ（1890〜1976年）。彼女はイギリス人ですが、ポアロはフランス語圏のベルギー出身という設定です。なので、英語で会話しているときも、ときどきフランス語が混じります。オシャレ、完璧主義でシンメトリー好き、そしてなによりも美食家。

 

この辺りの「人間味」が人気の秘密でもあります。

 

映画化やドラマ化もされていて、1974年のシドニー・ルメット監督による映画版は、ポアロ役のアルバート・フィニーを始め、ローレン・バコール、ショーン・コネリー、イングリッド・バーグマン、ヴァネッサ・レッドグレーヴなどのスターキャストで話題となり、アカデミー賞６部門にノミネート、バーグマンが助演女優賞を受賞しました。

 

そして、今年、74年版に勝るとも劣らない豪華キャストで再映画化されました。主演・監督ケネス・ブラナー。キャストは、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、デイジー・リドリー、ウィレム・デフォー、そして天才ダンサー、セルゲイ・ポルーニンら。このアンサンブルだけでも観る価値がありますね。

 

オリエント特急は、トルコのイスタンブールからフランス北部の港町カレーへと走る高級寝台特急。仕事でイギリスに行かなければならなくなったポアロは、休暇を返上してイスタンブールからオリエント急行に乗り込みます。満室だったのですが、オリエント急行の運営会社の重役である旧知の友人ブークの計らいでなんとか乗り込めたのです。乗客は、アメリカ人の富豪、ロシアの貴族、宣教師、家庭教師、伯爵夫妻、医師など国籍も職業もさまざま。

 

出発して早々、ポアロはアメリカ人の富豪ラチェットから、身辺警護の依頼を受けます。彼は、何者かに脅迫を受けていたのですが、いかにも胡散臭いラチェットを好きになれないポアロはあっさりと断ります。が、深夜列車は雪崩のため脱線事故を起こし、立ち往生してしまいます。と同時にラチェットが自室で刺殺死体で発見されます。果たして、犯人は誰なのか？　乗客全員が容疑者となりますが、彼らにはそれぞれアリバイがありました……。

 

キャストだけでなく、セットも衣装も豪華で目にも贅沢なこの映画。ストーリーの多くは、食堂車で展開されます。

 

列車の旅の醍醐味は食事で、食堂は旅行客たちの社交の場なのです。そして、彼らの注文するメニューや注文の仕方でも個性が表れます。ジョニー・デップ演じるラチェットも朝から美しく、美味しそうなスイーツをポアロと分け合ったり、食のシーンも見逃せません。

 

映画は、とても今日的なエンディングを迎えます。いつになく葛藤しているポアロに親近感が沸きますが、なかなか考えさせられる結末です。

 

列車内でもポアロが、冒頭のようにゆで卵の朝食をとるシーンが登場するのですが、最後の結末を知ると、この朝食のシーンが意味深いものだとわかるハズ。彼を真似て、こだわりの朝食をとりながら、天才の思考回路を辿ってみるのも楽しいかもしれません。

出典：Chocottoさん

 

ポアロも合格点を出すであろう朝食をサービスするレストランといえば、帝国ホテルのフランス料理「レ セゾン」。ゴージャスなインテリア、ホスピタリティは、まさにオリエント急行級。ボイルド・エッグをふたつ注文すれば、気分は名探偵！

出典：よしぼん４４さん

 

出典：eb2002621さん

 

ポアロはボイルド・エッグだけど、卵の料理は誰もが自分好みの一皿があるもの。レ セゾンではそれぞれのお好みによって、ボイルド・エッグはもちろん、フワフワのオムレツや目玉焼き、エッグベネディクティンなどさまざまな料理を選ぶことができます。卵好きならばいつかは行きたいレストランですね！

 

 

作品紹介