TOKYO HIP BAR

Vol.13 新生「ドゥ マゴ パリ」でタイムスリップ体験を

 

1920年代、ヘミングウェイや

ピカソが愛したカフェ「ドゥ マゴ パリ」

 

石畳の続くパリのパッサージュを通った時や、町屋に囲まれた京都の路地を歩く時、ある時代にタイムスリップしてしまうような感覚に陥ることがあるものです。そんなとき思い出すのは、ウディ・アレン監督の映画「ミッドナイト・イン・パリ」。映画脚本家の主人公が婚約者とパリに滞在している際、ふとしたきっかけから1920年代のパリに迷いこんでしまうというお話で、そこにはヘミングウェイも、パブロ・ピカソも実存し、社交を楽しんだり、芸術論を交わしたりしながら、現代と1920年代を交差する人間関係に巻き込まれていくというものでした。

 

主人公が迷い込んでしまったその時代に、まさにヘミングウェイやピカソが通っていたといわれるのが、19世紀に誕生し幾多の文学や芸術がはぐくまれたという老舗カフェ「ドゥ マゴ パリ」です。日本では、ご存じ渋谷のBunkamura館内にオープンし、由緒正しき伝統を受け継いできたのですが、今年の2月、トランジットジェネラルオフィスの運営となり、「ネオ・クラシック」をコンセプトにしたメニューに一新されました。

 

季節の素材を使った軽やかな前菜や、ビストロ料理をベースにパスタ等も揃うメニューは現代人の味覚をよくわかっているトランジットならでは。オードブルとオリジナルカクテルを含めた飲み物をフリーフローで楽しめるメニューもあるなど、気軽に入れるビストロへと一新されました。

 

 

海外経験豊富なバーテンダーが作る、

“魔力のあるモヒート”

 

ドライフルーツが飾られたり、フルーツカクテルがあったりと見目麗しいモダンなカクテルもラインナップされていますが、こちらで飲むべきはヘミングウェイも愛したという王道のモヒート。トランジットの飲料統括責任者の日高康介さんは海外経験も多く、キューバでもリアルなモヒートを体験。そこで感じた伝統やルールを重んじながらも凝りすぎず、やりすぎていないモヒートを日高さんの解釈で提供しています。

 

「環境が整っている今だから作れるモヒートのよさもあるけれど、ミントの茎の部分が多少入っているようなラフさもむしろよかったりするんです」と語る日高さんのモヒートは、グラスもすこし大ぶりなタンブラーで、洗練された味わいながらもモヒートが本来持っている男くささのようなものをうまく表現しています。ドゥ マゴ パリの上質な空間と相まって、このモヒートはまさにヘミングウェイが口にしていたものかもしれないと思わせるような魔力があります。

 

 

劇場や映画館のあるBunkamuraで、お芝居を観た後のどこかふわっとした気持ちでドゥ マゴ パリを訪れると、タイムトリップ感は満載です。

 

 

開放的な吹き抜け天井のあるB1Fもよいですが、おすすめは1Fのカウンター席。「ミッドナイト・イン・パリ」のように隣にヘミングウェイが座ったらというような妄想をしながら、ドゥ マゴ パリでカクテルを傾けるのは、大人だからこそ味わえる贅沢な時間です。