〈食べログ3.5以下のうまい店〉
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは、口コミ数が少なかったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり、点数が上がると予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。
そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、食べ歩きをライフワークに活躍するフードライターの森脇慶子さんに、二十四節気ごとの雲南料理を提供する中国料理店を教えてもらった。
教えてくれる人
森脇慶子
「dancyu」や女性誌、グルメサイトなどで広く活躍するフードライター。感動の一皿との出合いを求めて、取材はもちろんプライベートでも食べ歩きを欠かさない。特に食指が動く料理はスープ。著書に「東京最高のレストラン(共著)」(ぴあ)、「行列レストランのまかないレシピ」(ぴあ)ほか。
“皇帝の台所”最高位の「華魂和装」で中国料理の奥深さを体験
中国料理と聞くと、庶民的な町中華、北京、四川、上海、広東などの本格中華が思い浮かぶが、日本の25倍もの面積に14億人が暮らす中国。その食文化は多種多様で、まだまだ知られていない奥深い魅力に満ちている。
そんな中国料理の多様性を、衝撃的ともいえる料理の数々で堪能させてくれるのが、ご紹介する「御膳房 華魂和装(かこんわそう)銀座店」だ。
口コミ数はわずかに3件、食べログの点数は3.01だが、銀座や六本木にある「御膳房」姉妹店の点数は軒並み3.5を超えており、食通や政財界の利用が多いことからも期待を裏切らない、否期待を超える体験ができそうだ。
※点数は2023年1月時点のものです。
銀座や六本木などに9店舗を展開、知る人ぞ知る高級中華の名店「御膳房」。その最高位として、2021年にオープンしたのが「御膳房 華魂和装銀座店」である。「御膳房」は、歴代皇帝が暮らした紫禁城(故宮)に設けられた皇帝専用の厨房を指し、訪れる客を皇帝のように思い、常に緊張感をもって調理・接客にあたる、という志が込められている。
森脇さん
落ち着いた雰囲気と高級感のあるインテリアも魅力的です。
「医食同源」「美味求真」をコンセプトに、本場のシェフが国産素材で作る中国雲南料理を提供してきた「御膳房」。
「御膳房 華魂和装銀座店」では、先のコンセプトに加えて「不時不食(季節はずれではなく旬の味覚を食す)」「華魂和装(中華料理の魂に和の装いを加える)」を掲げるのが特色。
中国の農耕文化から生まれた「二十四節気」に基づき、薬膳の考えを取り入れた、体にやさしい料理を提供している。日本ではあまり知られていない、唐宋時代の漢詩を料理で表現した「意境菜(いきょうさい)」を味わえるのも興味深い。
森脇さん
二十四節気ごとの旬の食材にちなんだ料理というコンセプトに惹かれ、中国の行事食への興味もあって伺いました。最近忘れられがちな、歳時記的なものを料理で感じたいと思うのは、中華も同じであり、少量多皿のコースによるプレゼンテーションも楽しいです。
「雲南省は米と茶の発祥地とされる農耕文化の原点のような地域で、和食とのなじみもあります。25の少数民族が暮らしさまざまな食文化が融合し、食材では種類豊富なきのこが特に有名です」
雲南料理の魅力をこう話してくれたのは、来日37年になるオーナー、徐 耀華(ジョ ヨウカ)さんだ。日本の旧文部省に当たる文化省に入省し、外交官として23歳で日本へ。後に中国と日本の橋渡しとなる仕事がしたいと日本で起業、当時珍しかった雲南料理を広めるべく、28年前に「御膳房」を立ち上げた。
席は前日までの完全予約制、メニューはランチ2コース(13,200円~)、ディナーは3コース(19,800円~)から選べる。「予約制にすることで、出来上がりまでに時間を要する手間暇かけた料理もお出しすることができます」(徐さん)