シェフのセンスと技術が織りなす、旬の食材を活かしたフレンチとは?

山形県つや姫米 庄内沖ズワイ蟹

雪の結晶のチュイールとその下にある白色のムースはお米からできているとは思えないほど繊細だ

この料理の主役は、フレンチではほとんど見かけないお米。日本人には切っても切れない主食をあえてフレンチに採用している。池田氏が日本全国のお米を取り寄せ、この料理に合うものを探すのに何十種類も吟味し、選んだのが山形県産のつや姫だ。この調理の技法はリオレ(フランスの家庭料理でお米をミルクで炊いたおやつ)をヒントに考案された。お米独特のまろやかで優しい旨みがズワイ蟹を包み込んでおり、お米への認識が良い意味で覆される。

 

東龍さん

シェフの池田さんが日本を代表する食材の“米”にこだわったシグネチャーディッシュです。米の特長を最大限に引き出したつや姫のムースは、麹を入れて炊き合わせているので、馥郁たる香りに。米っぽくならないようにと粒や甘味は残していないので、上品な仕上がりになっています。季節によって新しくなるので、その時々の旬味を体験できます。米は何でも合う食材なので、違いをぜひとも味わってみてください。

氷見港寒鰤 ヨーグルトディル

ヨーグルトベースのソースは食べる直前にかけてくれる

サッと表面だけを炙った寒鰤の切り身でじゃがいものペーストを巻き、キャビアをのせ、ディルのエッセンスを加えたヨーグルトのソースで仕上げたひと品。鰤のみずみずしい食感とキャビアのコク、中のじゃがいもには軽く燻製の香をまとわせるという小技を忍ばせている。クリーミーかつ爽やかなソースが各々の食材たちを包み込み、主役の寒鰤を引き立たせている。

野菜の下から主役の寒鰤とキャビアがお目見え。どんな味がするのか?想像するのも楽しい

それぞれの食材が調和した味わいは計算し尽くされており、初めて食べる料理なのに食べれば食べるほどもっと味わいたくなるという不思議。シェフの手腕に魅了される逸品だ。

最高の食材を最上級の技術で調理する。野菜は石川県の自然農法で育てられた高農園のものを使用

静岡県産沼津港 赤座海老 ショーフロワ

エビの殻をあえてそのまま利用した盛り付けは、訪れたゲスト達を楽しませる

赤座海老は通称、手長海老と呼ばれ、フレンチではラングスティーヌと称される欠かせない食材の一つ。このエビの形をそのまま活かした盛り付けはインパクトがあり、ショーフロワの部分はオシャレに装飾している所が、これまた粋である。肝心の味はどうだろうか? 丁寧にこした雑味のない濃厚なアメリケーヌと、赤座海老特有の甘味をおびた深い味わいが口の中に広がり、食材の出汁感とエビの身の食感のバランスも流石だ。

新潟県産 青首鴨のロースト 鴨のエッセンスと赤ワインソース

真ん中に添えられた赤ワインソースと根セロリのピューレを足して食べることで、鴨肉の風味のバリエーションを楽しみながら食すことができるメインディッシュ。鴨肉自体は低温での調理を主体としているので、香ばしさよりも柔らかさと瑞々しさが際立つ。さらに、ささみ、もも、ムネの3つの部位をローストやコンフィといったその部位に合った調理法で火入れをしている。

フレンチではオーソドックスな鴨肉は、新潟県から野生の青首鴨を仕入れている

また鴨は解体されたものではなく一羽をそのまま仕入れており、下処理も手がけている。エトフェで鴨肉を仕上げることで鉄分を含んだ、力強く深みのある肉感となるのだ。またソースやピューレのほかに結晶塩をまぶすことで、より味わいにインパクトが生まれていた。

Plaigaという店名の由来はフランス語のPlaisir(プレジール:楽しみ、喜び)に「雅」(みやび)を掛け合わせて名付けられたそう。その名の通り店内の空間や料理に五感を刺激され、特別なひと時を過ごせるお店だ。旬の食材を繊細に吟味し2カ月ごとに変わるメニューは、その時にしか味わえない料理で、貴重な出会いに近い。フレンチ好きはもちろん、季節感を大切にしている日本食を好む人にも、ぜひ食べてみて欲しい新進気鋭のレストランである。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

撮影・文:千葉絵里、食べログマガジン編集部