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二人三脚で織りなす多彩な料理に口福の連続!
目と舌で楽しむ「本日の前菜三種」

手を加え過ぎないシンプルな調理で、季節の食材のおいしさを引き出しているビブリカルの料理。それを象徴する一皿がコチラだ。その日の前菜3種類を盛り合わせにしたもので、多くの客が注文するという。
この日は、一口目に相応しいフィンガーフードに、海鮮、ポタージュを盛り合わせた。見た目の美しさにも目を見張る一品だ。

まずは、最初の一口目に相応しい、手軽なフィンガーフードから。豚の血で作る黒いソーセージ、ブーダンノワールを春巻きの皮にのせたものだ。
ふんわりとしたテリーヌのような食感と、パリッとした春巻きとのコントラストが軽快さを演出。そこへ角切りにしたリンゴとハーブの爽やかさを加えることで、ブーダンノワールの旨みが優しく口の中に広がる絶妙の仕上がりに。一口目からワインが進み、他の料理への期待も加速する。

そして、一際存在感を放っているムール貝の冷製。こちらは、茨城県産の大振りなものが使われており、半分にカットされていてもこの大きさ。薄切りにしたズッキーニと柿と共に、ビネガーを利かせたドレッシングでいただく。

ガラスの器に入れられたのは、さつまいものポタージュ。甘さを丁寧に引き出したさつまいもに、マッシュルームやオリーブオイルを加え、シンプルに。優しい口当たりが、この後の料理への繋ぎ役としてぴったりだ。
濃厚なおいしさで、〆にもつまみにもなる「カルボナーラ ローマ風」

秋山さんがビブリカルを推す理由の一つが、パスタのおいしさにある。

秋山さん
このカルボナーラを含めパスタがおいしいので2種類は頼むのをオススメします。前菜を食べ過ぎてお腹いっぱいでパスタのオーダーをするよりも、前菜の量とバランスを考えながら最初にパスタのオーダーをするのがいいです。
パスタの内容は食材の仕入れなどによっても変わるが、多田シェフも「言ってもらえればいつでも作りますよ」という自信作が、このカルボナーラ。前職でローマ出身のシェフに教えてもらい、そこからアレンジを加えたという一品だ。

このカルボナーラは、とにかく濃厚な味が特徴。〆にガツンと食べるもよし、おつまみ代わりに白ワインと合わせるにも最適だ。その濃厚さの秘密は、こだわりの卵黄にある。
プリン専門店も使う「王卵」という、新鮮な卵を卵黄のみ使い、ソースに最適な濃度の絶妙な火入れによって、見た目にも濃厚さが伝わってくるカルボナーラに仕上がる。具材は、薄切りのグアンチャーレ、チーズは、ペコリーノ・ロマーノとグラナ・パダーノを5:5で使用。口の中で噛むほどに旨みが溢れる。

秋山さん
色の濃いカルボナーラソースを見ただけで口の中に唾液が溜まります。味も期待を裏切らない濃厚さでおいしいので、カルボナーラ好きの人に食べてほしいです。
船の上で食べる味にこだわった「本日の生牡蠣」

「全国から旬ごとに取り寄せる生牡蠣はリピーターの方も多く、ぜひ召し上がっていただきたい一品です」と伊藤シェフ。秋山さんもそのおいしさに驚き、絶対に頼むべきと言う。

秋山さん
時期にもよると思いますが、この牡蠣がメニューにあったら、牡蠣好きの人は絶対に頼むべきです。ワインと共に食べれば最高です。
おいしさの秘密は、特別な牡蠣の管理方法。牡蠣が産地で取り込んだ海水を身に保ったまま保管、運搬できる塩水シャワー型のいけすを使うことで、船の上で取りたてを味わうような産地のリアルな味をテーブルの上で楽しむことができるという。
「味の違いを感じていただけるよう、なるべく2種類以上用意していますので、ぜひ食べ比べてみてください」(伊藤シェフ)

この日は北海道と千葉から2種類の牡蠣を用意。大きさや形も違うが、それ以上に味の差がハッキリと感じられることに客はみな驚くという。
そんな特別な牡蠣とくれば、ワインにもこだわりたくなるもの。ビブリカルでは、ブルゴーニュ産のワインと自然派ワインを、合わせて約100本ストックしているからご安心を。
「ワインをしっかり楽しんでもらいたい、という思いが店づくりの根幹にあります。なので、どの料理もワインとの相性を考えながら作っています」と多田シェフ。ブルゴーニュワインと自然派ワイン、両方をそろえるこだわりながら、ほとんどのワインがグラスで注文可能というのもうれしいポイント。料理に合わせてペアリングしてもらうこともできるので、気軽に頼める。

最後の〆にコレがある贅沢。「まかないカレーライス」


秋山さん
メニューに「まかない」と付いているとついつい頼んでしまうのですが、初めて行った時に食べてからこのカレーのファンになって、行くと必ず頼みます。牛すじのカレーの時もあれば、牛すじイカ墨カレーの時もあって、毎回違うカレーが楽しめます。
そこまで秋山さんを虜にしているというこのカレーライス。毎回内容が変わるのは、メインディッシュの肉料理などで使う肉の余りを使っているから。

秋山さんの言う牛すじや鹿すじ、ラム、鶏肉などなど、ビブリカルのメニューが多彩だからこそ、このカレーライスもバリエーションがとても豊か。
この日は、鹿のすじ肉とイカ墨を使ったカレーがメニュー入り。力強い個性のある食材を見事にまとめた本格派の味わい。ゴロゴロ肉から出る濃い出汁とイカ墨が、どこまでも深いコクを与え、〆に相応しい満足感のある一皿に仕上がっている。

「パンデミック真っ只中のオープンということで、不安と期待を抱えながらのオープンでしたが、本当にいろいろなお客さんによくしていただいた1年間でした。その方々にも、そして新しい方々にも通っていただけるよう、より一層、良いお店にしていきたいですね」(多田シェフ)
「レストラン級の料理をビストロで」。その思いが料理と店の雰囲気に真っ直ぐに表れたビブリカル。ここに来れば、いつでもおいしい料理とワインを、居酒屋くらいの気軽な気分で楽しめる。そんな使い勝手の良い店、あるようで意外とないものだ。今後、ますます人気が高まっていくことは必至。予約が取りづらくなる前に、ぜひとも訪れておくことをおすすめしたい一軒だ。