丁寧な仕事がなされた握りを、モダンな錫作家の器で
「ギトギトってぐらい、脂のっています」というノドグロは、皮目を軽く炙って淡路島の藻塩をぱらりと。塩って脂を引き出すんですねえ。肉汁じゅわ〜、もとい、魚汁じゅわ〜。プニップニでみずみずしく、むっちりしたボディです。ノドグロ様、よくぞここまで脂を蓄えてくれました。山口県の海に感謝です。
牡蠣はこのように可愛らしい海苔巻きで供されます。北海道のブランド仙鳳趾(せんぽうし)牡蠣でっせ。砂糖、醤油、酒などで煮詰めて、そこに牡蠣から抽出したエキスを合わせた、いわば和製オイスターソースを塗っています。牡蠣を牡蠣のタレで食べておいしくないわけがありません。めっちゃくちゃ濃厚ミルキーで、歯ごたえもプリップリ。上にはワサビではなくマスタード。これでピリッと味を引き締めるっていう計算です。やるう、中田さん。
そう言えば器も素敵ですよねえ。なんでも中田さんの同郷・奈良県生駒市の錫作家に特注したものだそうです。寿司ゲタって呼んだら失礼なぐらいモダンな器です。
商品化したら?の声もある名物「なかた巻き」とは
そして気になるでしょう「なかた巻き」。いわば同店のスペシャリテ的な一品で、たくあんの代わりに瓜の奈良漬とトロを巻いた、オリジナルの巻物です。要するに「とろたく」ならぬ「とろなら」。奈良漬の深い熟成味と甘み、瓜のコリコリ感がたまりません。
あまりにも好評で「商品化したら儲かるんとちゃう」と「なかた巻きビジネス」を提案してくる常連さんもいるのだとか。確かに。中田さん、早めに商標登録取った方がいいかもしれません。
しかし値上げの波の中、これで7,700円って大丈夫ですか?と聞くと、申し訳なさそうに「実は……食材費が全部上がっているので11月から値上げするんです、8,800円に」とのこと。たった1,100円の値上げでいいんかい!と心配になりますが「なるべく安くお客様に喜んでいただきたくて」と中田さん。今の時代、2〜3万円超える寿司店も多いのに、どこまでも控え目な中田さん。ますます応援したくなります。
ちなみに「冬は魚の種類が増えて、もっと内容が充実します」とのこと。雲子(たらの白子)の握りや天ぷらなど、ますます酒が進む料理が登場します。以前来た時はアワビをアワビのキモソースであえて、最後にシャリを入れてリゾット風で食べる……といった背徳的美食が出てきました。あれまた食べたい。とつぶやきましたら「ご要望があればお出ししますよ!」とのこと。皆さんも事前予約の際にお願いしてみたら食べられるかもしれません。ぜひ。