驚愕コスパな「ジーナコース」でエジプトを堪能

メニューはアラカルトでも用意していますが、せっかくなら「ジーナコース」6,000円が絶対おすすめ。自慢の料理を少しずつ食べられるフルコースです。献立は仕入れによって変わりますが、オードブル盛り合わせ、スープ、肉料理、魚介料理、エジプトライス、エジプト風ピッツァ、デザートと、だいたい6〜7品。

これ1人前!? インパクトありすぎるメインディッシュ

単品でもオーダー可能です。1,800円

「少しずつ」とか言いましたが訂正してお詫びします。全然少しじゃありません。まずオードブルは、サバのスモークや和牛の一口ステーキ、テリーヌなどワインのアテになる料理が4種ほど盛り合わせ。具沢山のスープに続き、このメインよ。

これって3人前くらいですかねえと聞いたら「1人分よ!」とのこと、食べ切れるんかい。ちなみのこの料理名はバッタ・マシュウィーヤです。「は??」だと思いますが、アヒルのローストのことで、エジプトで鴨やアヒルは大変ポピュラーな食材。鴨と違って飛ばないアヒルは脂がのり、肉も柔らかいのだとか。

最初に丸ごと1羽のアヒルからスープを取ります。そのままだと臭みが出るので、タマネギを天日干し&オーブンで2日間かけて乾燥させたオニオンパウダーを加えています。そして半身にしてアヒルから出た脂を使ってじっくり火入れ。味付けは塩コショウだけ、と潔いですが、これも「エジプトではだいたいこの二つで味を決めます」とのこと。素材から出るダシを大切にしているんですね。

使う塩も全て料理によって変えているそうです

アヒルの下には自家製のパイ。先ほどの手作りバターを染み込ませて何層にも重ねて焼き、その間にラム肉のミンチを詰めています。パイはアヒルのスープに浸してから焼き上げているので、口の中で香ばしくさっくりと崩れます。アヒルのダシをまとったラム肉入りパイ……字にするだけでおいしそうですね(笑)。

塩とコショウだけのシンプルな味付けなのに、肉汁を吸ったパイ、ピンクペッパーとフェンネルの香りも利いて、どの部分を食べてもアタリって感じです。

フライパン一つで何でもできちゃうんです!

ものすごいニンニクの良い香りを炸裂させて蒸し焼きされていたのは、巨大なブラックタイガー。メインの魚介料理は、ジーナさんの得意な「アレクサンドリア風 海老のハーブ蒸し」です。これはエビの背にニラとセロリを刻んで詰めて蒸したもの。ニラとセロリって香味野菜の二大巨頭みたいなクセの強い食材同士ですが、ケンカしないのかしら!?と思いきや、めっちゃくちゃ合う、この組み合わせ。

こちらは2人前の写真です

一切水を加えず、野菜とエビだけの水分でスチームされたこの一品。ニンニクとニラ&セロリ、ハーブ、クミンの香りがエビと野菜にこれでもかというほど染みていて、エジプトの無水調理の底力を思い知らされます。下にはムール貝もたっぷり。正直、このニラ&セロリの合わせ技には感激しました。家でやってみよう!と誓いましたがいまだに実行していません。

わざわざ遠方から買いに来るほど完成度の高いデザート

2~3人でこの量が出てきます(笑)

デザートは「クナーファ」という、エジプト・ファーティマ朝時代、少なくとも10世紀にはすでに存在していたお菓子です。小麦粉でできた麺状の「クナーファ」という生地にクリームを挟んで焼き上げ、ヘーゼルナッツやアーモンドをトッピング。仕上げに砂糖とレモン、ローズウォーターを煮詰めたシロップをかけています。

クリームには通常、水牛を使うのですが、日本では手に入りにくいため牛乳、バター、クリームパウダーなどで同じ味を再現しているとのこと。食べてみるとしっとりした生地にミルキーなクリーム、クナーファのザクザク感が相まって新感覚の味わい。日本では絶対出てこない異国の味です。

エジプト菓子はローズを多用します

すごいのが来たー!と驚きますが、これは別の日のデザートの一例。メレンゲやビスケット、クッキーなどの盛り合わせで、もちろん全て手作りです。

ジーナさんはFacebookに「こんなお菓子作りました」という新作情報を発信しており、それを見て遠くから買いに来る人も多いそう。

蜜が染み込んだ生地がもっちり

私がめちゃくちゃ好きなケーキが写真手前の「バスブーサ」。セモリナ粉の生地をローズウォーター入りシロップに浸した、フィナンシェのような焼き菓子です。

デーツとはナツメヤシの実のこと

こちらは「カアブ・エル・ガザブ」と言って、デーツ餡を包み込んだクッキー。ローズオイル、ローズヒップが入っていて、外はカリッ、中はしっとり。1個でも食べ応え十分、どっしりしたクッキーです。

当日でも予約はできますが、前日までにしておくのがベターです

訪れるたびに料理の内容が変わるので、まだまだ紹介したい絶品がたくさんあるのですが、それは行ってのお楽しみということで。ちなみにジーナさんは材料を全てその日に調達するため、食事利用の際には事前予約が必要です。

※価格は税込。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認ください。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

撮影:三國賢一
文:猫田しげる、食べログマガジン編集部