【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2022年8月を振り返る

3年ぶりに行動制限のない夏休みとなった8月でした。というわけで、今月は旅を感じられるようなお店をご紹介しました。

1. 神奈川県の激戦区近くにできた名店の血筋の南インド料理店

2. 石垣島の欧風カレーの名店が新橋で間借りカレー店をオープン

3. 神楽坂で見つけた老舗インド料理店出身シェフの新店舗

4. 下北沢で異彩を放ったネオスタンダードカレーの隠れた名店が長野・松本へ移転していた!

そんな4店舗。今回も新しくできたお店、移転したばかりのお店ばかりです。気になったお店があったら是非チェックしてみてくださいね!

【第1週のカレーとスパイス】充実のランチに感動! 名シェフの味を受け継ぐ南インド料理店が元住吉に誕生「マリニ 南インド&フュージョン」

カレー激戦区であり、特に南インド料理の名店が集まるエリアとして知られる武蔵小杉。その隣駅である元住吉駅近くに今年6月、また新たな南インド料理が開店しました。

「マリニ 南インド&フュージョン」というお店なのですが、実はこちらは伝説のシェフ、ヴェヌゴパールさんの親戚にあたる方のお店なのです。ヴェヌゴパールさんは東京で古くから南インド料理を提供し、現在は福岡県へ移転した名店「ダルマサーガラ」のシェフとして活躍し、その後「ヴェヌス サウス インディアン ダイニング」を立ち上げた名シェフであり、古くからのファンも多い、日本の南インド料理界におけるレジェンドシェフの一人と言える方です。

ミールス・ノンベジのBセット

南インド定番の定食であるミールスは、ランチタイムだとベジタリアン仕様のものがAセットで900円、ノンベジがBセット1,050円と、まずその安さに驚きます。Bセットは日替わりの2種カレーにサンバル、ラッサム、サラダ、パヤサム(南インドのスイーツ)、ワダ(南インドの甘くないドーナツ)、バスマティライスに選べるパンまで付いているという充実の内容。

この日のカレーはチキンココナツカレーと魚カレーだったのですが、かぼちゃマサラと豆カレーまでサービスで付けてくれるという大盤振る舞い。「これ本当に1,050円?」と心配になるほどです。しかもこの値段でありながらどれを食べてもおいしいのですから、さらに驚きが重なります。

混ぜて食べるとさらに美味!

ブラックペッパーの刺激が心地よいラッサム、マスタードシードが印象的に香る魚カレー、カルダモンの芳醇な風味がインパクトあるかぼちゃマサラ。それぞれスパイスの立たせ方に迷いがなく、単体で食べて完成していながら、スパイス感のベクトルがそれぞれ違うため、混ぜてもおいしいという以上に、混ぜるとおいしさのレベルが上がるという、ミールスの楽しさが見事に詰まったものとなっていました。

ワダは小ぶりでワイルドなのが良く、プーリ(揚げパン)も油切れが良くて食べやすく、とにかくおいしい! 素晴らしい!

マサラドーサ

「マサラドーサ」1,100円は米粉のモチッとした食感と、焼き具合の良さからくるサクッとした食感が共存。中に入るじゃがいもマサラもシンプルで良い味付けであり、サンバルとココナッツチャトニをつけるとさらにおいしくなります。特にここのココナッツチャトニは濃厚でありながらしつこくない絶妙のバランス。これまた素晴らしい!

ハリヤリティッカ

テンションが上がって「ハリヤリティッカ」720円も。ミントやコリアンダーの爽やかな香りで、かなり量を食べているにもかかわらずいとも簡単に胃袋に収まってしまいます。

泡たっぷりのマドラスコーヒー

食後には「マドラスコーヒー」300円。目の前でエアブレンドしてくれるパフォーマンスも見事。柔らかく泡立った甘いコーヒーがゴージャスなランチを締めくくってくれました。

目の前でエアブレンドして提供してくれます

ホールを取り仕切る方もヴェヌゴパールさんの親戚で「(店名の)ヴェヌスはお父さんの名前、マリニはお母さんの名前」と教えてくれました(実際には子供ではなく姪にあたるそうです)。マリニのシェフもヴェヌスで腕をふるっていた方であり、レシピも基本的に同じものを使用しているそうで、だからこそのおいしさなのだなと納得。

僕のようなマニアが食べても感激する味であり、そしてお昼時の客層は地元の方と思しき老若男女多種多様であり、どのような方にもおいしいと思える料理だからこその盛況なのだなと感心しました。南インド料理マニアも、興味を持っている初心者の方も、行って損はないお店ですよ!

【第2週のカレーとスパイス】南の島からおいしいカレーがやってきた! 石垣島の人気店が新橋に間借りカレー店をオープン「石垣島カレー 南風」

石垣島に「ビストロスマイル」というお店があります。石垣島や沖縄の食材にこだわった様々な料理のどれもがクオリティ高く、オリジナリティのあるカレーもあって僕も大好きなお店なのですが、そんなビストロスマイルが東京・新橋で間借りカレー店を始めるということで行ってきました。新橋駅前ビル地下にあるバー「月夜見」の間借り。店名は「石垣島カレー 南風(ぱいかじ)」です。

月夜見は宮古島に縁のあるバー。そこに石垣島のお店が間借りするという沖縄感満載の雰囲気。

カレーは「島豚とピパーツのカレー」1,400円と「石垣島産和牛の欧風カレー」1,700円の2種。どちらも欧風カレーベースですが、スパイスの使い方が違うので食べた印象はかなり違います。

「島豚とピパーツのカレー」

島豚とピパーツのカレーは旬のパインを契約農家から1年分仕入れ、鮮度の良いうちにピューレにしたものを使用。ピパーツとはヒバーチなどとも呼ばれる沖縄の島胡椒なのですが、胡椒の刺激のみならず甘い香りも持ち合わせており、だからこそパインのフルーティーさと相性が良いのです。

島豚の甘みも相まって、甘さが強くなりそうなところですが食べた印象はむしろスパイシー。ピパーツが全体を調和させ、引き締めているからでしょう。

「石垣島産和牛の欧風カレー」

和牛の欧風カレーは鶏ガラを焼き、炒めた玉ねぎと人参をコトコト3日間かけて煮込んだスープの奥深い味わいが前面に出ており、それに石垣牛のうま味が溶け込んでいる贅沢なカレーです。欧風カレーですが小麦粉不使用なので重すぎないのも良いところ。

副菜もゴーヤなど沖縄感のあるものが使用されていて、雰囲気的にも味的にも意味のあるもの。水ではなくさんぴん茶を出してくれるのもさらに沖縄を感じることができて良いですね。

ビストロスマイルは石垣島の魅力に心酔して移住したご夫婦が営むお店なのですが、石垣島の食材の素晴らしさをもっと沢山の方に知って欲しいという意気込みでこのお店を始めたそうです。食材もピパーツ、島とうがらしなどは自家農園で栽培しているというこだわりよう。店名の「ぱいかじ」とは幸せを運ぶ風と呼ばれているそうで、つまりこちらのお店は南から幸せのカレーを運んでくれているとも言えます。

カレーのお値段を見て安くないと感じた方もいるかと思いますが、この手間暇のかけ方を考えればその価値は十分にあります。東京にも欧風カレーの名店は数多くありますが、そのどこともまた違う仕上がりの個性派欧風カレー。欧風カレー好きにもスパイスカレー好きにも好まれる味わいです。お値段の価値がわかる方に、是非一度食べてみてほしいカレーです。