日本人ならやはり、締めは“ご飯”
メインの肉料理の後のリゾットも、コースにおける重要な役割を担っている。「たとえイタリア料理でも、日本人なら最後はやっぱり、ご飯料理で締めると安心感を覚える」との考えから採用したもの。この日、提供されたのは「鱧 万願寺唐辛子 ハーブ」で、ハモと万願寺唐辛子という、いかにも日本的な食材を上手に取り入れている。
香ばしく焼いたハモと、京野菜の万願寺唐辛子。これら初夏を感じさせる和の食材が、イタリア料理の“締めのご飯”に登場する。何とも新鮮な体験だ。また、締めのご飯料理なので、重たくならないようハーブが加えられ、さわやかな風合いに仕上げられている。
また、リゾットはここに至るまでの客の食べるペースを見ながら、さり気なく量を調節。まだまだ入りそうな人には量を多めにし、逆に「もう、お腹いっぱいかな?」と見受けられる人には少なめに盛りつける。こうして、それぞれの胃袋の状態に合わせ、心地よい満腹感を味わってもらっている。
最後のデザートまで楽しみが尽きない
締めのご飯料理でお腹が満たされた後は、別腹のデザートが待っている。しかも2品も出てくるという、女性客のみならず、スイーツ男子にもたまらない構成だ。まず1品目は「チョコラティッシマ」というクリームチーズのような口どけの生チョコ。2品目は「さくらんぼ ココナッツ」で、ココナッツの香りを移したパンナコッタと、旬のサクランボのコンポートである。
料理の締め、別腹の締めときて、最後はコーヒー、エスプレッソ、3種の紅茶の中から好きなドリンクを選んでフィニッシュ。ドリンクにはお茶菓子も付くため、捉えようによっては“3品目”のデザートと解釈することもできる。
なぜなら、そのお茶菓子は「ブルッティ マ ブォーニ」「ビスコッティ」「クルミーリ」といったイタリア伝統の郷土菓子というこだわりよう。実に、最後まで楽しみが尽きないコースだ。
長年、研鑽を積んで独立を果たす
同店オーナーシェフの天野智詞さんは、日本を代表するイタリア料理界の重鎮の店で14年間修業し、料理人の人生をスタートさせた。その後、イタリアの星付きレストランなどで働き、帰国後に務めた店でシェフとして5年間腕をふるい、独立を果たしたのである。
「origami」という店名に込めた思い
店名の「restaurant origami」とは、イタリアに渡った際、現地の人にオリガミを折ってあげたら大変喜ばれたことから、人と人をつなぐコミュニケーションツールになることを発見。また「origami」は海外でも通用する言葉であり、老若男女を問わず広く親しまれている。自店もそんなふうになりたいとの思いを込め「origami」にしたという。
さらに、オリガミはちょっとでも折り方がずれると仕上がりがダメになってしまう。それは料理も一緒であり、その正確な仕事の徹底を自らに課した店名でもあるのだ。
親しみやすさは、“分かりやすさ”
料理を盛りつける光景を間近に楽しめる同店は、“キッチンビュー”と呼ぶにふさわしいイタリア料理店だが、その“至近距離”の魅力は何も距離の近さだけではない。料理の中に日本の食材や季節感を盛り込んだり、パスタをコースの中の重要な位置に据えたりといった、親しみやすい心理的な近さもそこに含まれている。
親しみやすさは、“分かりやすさ”。イタリア料理を食べ慣れた人もそうでない人も、一瞬で虜にしてしまう。そんな、まるで「オリガミ」のような分かりやすい魅力が、同店の真骨頂である。