大規模な再開発にともない、しばらくこの地を離れていた大人たちから再びの注目を集める街・渋谷。だけど、いざ来てみたら食事処に迷ってしまうというケースもしばしば。そんな、“シブヤお久しぶり組”の迷える大人たちのため「食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO(Chief Eat Officer)を務める小宮山雄飛さんに渋谷の新&定番グルメスポットを両方教えてもらっちゃおう!というこの連載。

[新]編25回目となる今回は、移転した渋谷・公園通りのやきとん店跡地に新たにオープンした、焼鳥店「酉乃洲」をご案内します。

【大人の渋谷メシ・新編】第25回「酉乃洲」(とりのす)

かつて渋谷公園通りにあった串焼きの名店「やきとん大地」。ビルの建て直しに伴って移転したお店が、やきとんから焼鳥に業態を変え、店名も新たに「酉乃洲」となって、同じ場所に帰ってきました!(やきとん大地は渋谷2丁目で営業中)ということで、さっそくできたばかりの新店へ行ってきました。

スタイリッシュなカウンター

やきとん大地へ通っていた人なら「お!」と思う、当時と同じような配置のカウンターとテーブル席。厨房も焼き場も、すべての作業を間近で見られるオープンカウンターが清々しいです。その中でも特等席は、なんと言っても入って右手の焼き場前でしょう。

焼鳥メニューは、前菜から締めまでお決まりのコース2種と、好きなところでストップをかける「焼鳥ストップ制コース」。常時、鳥串15種・野菜串5種前後揃っているそうなので、好きなだけ思いっきり食べられるストップ制がおすすめ! 食べた本数で値段は変わりますが、大体のお客さんが焼鳥8本・野菜串2本で平均4,000円前後になることが多いとのこと。

「鶏白湯としじみのダブルスープ」

最初に出てくるのが「鶏白湯としじみのダブルスープ」。鶏の旨味と貝のだしが合わさって、しっかりとしたおいしさを感じますが、見た目よりもあっさりしていて、焼鳥ワールドの始まりにぴったり。

わさびの緑色も鮮やかな「ささみのさび焼き」
一口食べると現れる見事な断面

1本目は「ささみのさび焼き」から。表面は白みがかっていますが、肉をひとつ食べると見えてくる断面は見事なレア! 厚さにして1mmくらい、表面のみの見事な火入れで、ささみ特有の筋っぽさは皆無。しっとりとした上品な食感です。

「レバー」

鶏は大山どりを使用。女性にもうれしい小ぶりの串に、ぎゅっと旨味が詰まっています。

「鶏皮」

紀州の備長炭の中でも最高級の「小丸」という炭を使い、強火で焼き上げているので、どの串も香ばしく軽い口当たりが特徴。鶏皮も良い具合に脂が抜けて、実に美味。

「キウイとわさび菜のサラダ」

ここで箸休めならぬ串休めにサラダを。辛子菜に季節のフルーツを合わせたサラダ、この日のフルーツはキウイ。ホワイトバルサミコ酢の酸味とフルーツの甘味が合わさって、これがまためちゃくちゃおいしいんです。串と串の合間に、口の中をしっかりリフレッシュしてくれます。

「手羽中」
「青森シャモロックのモモ」

食べやすいようにと骨を丁寧に除いた手羽中の骨抜き。鶏肉の旨味がぎゅっと詰まっている手羽中ですが、骨を抜くことで一口で味わえて、よく食べる手羽中の焼き物とは全く違うおいしさ!

ネギの表面がしっかり焦げるくらいに、強火で焼かれたモモも香ばしくて絶品! どの串も鶏肉の旨味をストレートに引き出す、シンプルな味付けなのがうれしいです。

ここらでまた一品料理を注文。

「新牛蒡のがんもどき」

居酒屋の人気メニューに厚揚げがあるように、シンプルなツマミをと考案したのが、豆腐と大和芋・新牛蒡を使った自家製のがんもどき。卵黄以外は動物性の材料は入っていないので、あっさりした味で、これまた焼鳥の合間にぴったりです。

「鶏ハムカツ」

さらに居酒屋の定番メニューのハムカツを、焼鳥屋らしく鶏肉を使って作った特製ハムカツ。こういうこだわりが楽しいです。

未体験のフワフワの食感!

ドイツのコンテストでグランプリに輝いたこともあるデリカテッセンに作ってもらっている鶏肉のハムは、ハンペンのようなフワフワの食感が魅力。薄くカラッと揚がった衣も軽い口当たりで、一般のハムカツとは全く違う、これぞここでしか食べられない逸品。

名物「まくらとキンカン」

やきとん大地の名物だった、まくら(つくね)はこちらにもあります。軟骨を叩いて入れてあるつくねをニラで巻き、串の先にキンカン(未成熟卵)を付けた、実に手間のかかった一本。

こちらは量が限られているので1人1本限定! 半熟状態のキンカンとつくね、ニラと特製のタレの相性がばっちりで、これは何本でも食べたい!(しかし、1人1本です……残念)

すっかり串を堪能したところで、〆のご飯がまた魅力的。

「土鍋炊きご飯」

注文を受けてから土鍋で炊くご飯。お米と一緒に、串を焼くのに使われているのと同じ備長炭を入れて炊くことで、遠赤外線の効果でお米にじんわりと熱が通り、水も浄化されておいしく炊き上がるそう。お米が見事に立っていて、見るからにおいしそう!

備長炭を入れて炊いたお米を使った「土鍋炊きそぼろご飯」

そんなおいしいお米を使ったそぼろ丼。親鳥のせせり(首の肉)を使っていて、歯応えのある肉を噛むと鶏肉の強い旨味を味わえます。

黄身をつぶして親子丼状態にすると、またおいしい!

出だしのスープから締めの丼まで、鶏のおいしさを余すところなく堪能できる酉乃洲。実はお楽しみはこれだけじゃないのです。なんとこちらには、何度も通って常連にならないと入れない秘密のフロアが存在するのです。

常連になると、暗証番号とも言えるエレベーターのボタンの特殊な組み合わせを教えてもらえます(組み合わせは毎週変わります!)

そのままそのフロアのボタンを押しても点灯しないのですが、お店の方に教えてもらった特殊な組み合わせでボタンを押すと、そのフロアにエレベーターが到着!(まるでスパイ映画のようなカッコ良さ!)

そして着いたのがこちら。

こちらが秘密のフロア
ラグジュアリーなプライベート空間です
テラスもあり、渋谷の景色もばっちり堪能できます

おいしい焼鳥を食べた後、2軒目のバーとして訪れるも良し。プライベートパーティーなど貸切も可能。渋谷のど真ん中で、文字通り隠れ家として優雅な時を過ごせます。会員制クラブとは違い、常連にさえなれば訪れることができるので、ぜひともお店に通って秘密のフロアへのキーを手に入れてください!

おいしい焼鳥に、秘密のバーフロアまで。渋谷の夜がますます楽しくなる、新たなグルメスポットの誕生です。

※価格は税込

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・文:小宮山雄飛

撮影:GENIUS AT WORK