本当においしいカフェごはんVol.5

「レストランという形に囚われず、もっと自由な形でお店を持ちたい」と、カフェをオープンする新進気鋭のシェフがいま増えています。そんな面白いバックグラウンドをもったシェフに、カフェマニアのモデル・斉藤アリスが会いに行く連載企画。

ASAKO IWAYANAGI SALON DE THÉ

モーニングスペシャリテを食べる斉藤アリス

第5回は、世田谷区等々力の有名パティスリーの新店舗「ASAKO IWAYANAGI SALON DE THÉ」。2015年に本店「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」がオープンしてから、その完成度の高いパフェで瞬く間に有名店となりました。読者の中にも、パティスリィ アサコ イワヤナギのパフェのファンという方、多いのではないでしょうか?

2020年1月のゆく年くる年パフェ 撮影:斉藤アリス

私もそのファンの一人です。月替わりのパフェを食べにほぼ毎月足を運んでいましたが、コロナ対策で席数が減って完全予約制に。

2021年12月のパルフェビジュードゥノエル 撮影:斉藤アリス

なかなか予約がとれず、しばらく足が遠のいていました。2021年12月に久々に訪れると、なんと近所に新店舗が。

サロン内観

2021年10月にできた「ASAKO IWAYANAGI SALON DE THÉ」は、本店から歩いて30秒ほどの建物の2階にあります。本店の隣にある「ASAKO IWAYANAGI PLUS」につづく、3店舗目となります。

サロンのカウンター席から見ることのできる工程

新店舗にはテーブル席とカウンター席があり、カウンターでは目の前でパフェが組み立てられていく様子を眺めることができます。その時間も込みで楽しい。

モーニングスペシャリテ 5,500円

そしてなんと言っても、新しいお店ではお食事が食べられるんです。こちらは朝8時からやっている朝限定のモーニングスペシャリテ。すごく豪華! 朝からテンションが爆上がりしました。

セットの朝パフェ

そして、この朝食にはパフェがついてくるんです。名付けて朝パフェ。撮影時はルレクチェを軸に、水切りヨーグルト、キウイ、グラノーラなど、朝のお腹に優しいパフェになっています。

斉藤アリスと若松真由さん

サロンのフード調理を担当しているのがこの方、若松真由さん。だいぶ若い人がきた!と思って、失礼ながら年齢を伺ったところ、なんと21歳! 想像のさらに上をいく若さでした。

若松真由さん

アリス「いつからパティスリィ アサコ イワヤナギで働いているんですか?」

若松さん「18歳からです。北海道で調理専門の高校を卒業して上京。製菓の専門学校に通いながら、ここでアルバイトをしていて、そのまま就職しました」

アリス「さすが飲食業界はキャリアのスタートが早いですね。創業者の岩柳さんと接する機会はありますか?」

若松さん「もちろんです。私たちはアサコさんと呼んでいるのですが、一緒にお掃除もしますし、一緒にメニューも考えますよ。アサコさんを中心に、私たちスタッフの発想や協力を取り入れながら、良いものを生み出していく、そんな関係です」

アリス「え! そうなんですね。お店の世界観がすごくしっかりしているから、それは予想外でした。めちゃくちゃ柔軟な方なんですね」

若松さん「そうなんですよ。スタッフがやりたいと思っていることを共有し合って作りあげていく、そんなイメージです」

アリス「パティシエとして入社したのに、料理人になったきっかけは?」

数種類のパンやハム、目玉焼きが並ぶモーニングスペシャリテ

若松さん「個人面談で『何をやりたい?』と聞かれたときに『料理をやりたいです』と答えました。それがきっかけで、料理の製造を担当させてもらうことになりました。他にも多くのことがスタッフたちの『こうすれば良いんじゃない?』『あれしたら楽しそうだね』から始まっています」

アリス「へー! 飲食業界って縦社会というイメージがありますけど、そういう感じではないんですね。すごく楽しそう」

若松さん「むしろ縦じゃなくて、横というか。研修に来たときに感じたスタッフの和気あいあいとした雰囲気が好きで、ここで働くことを決めました」

アリス「お料理にもスタッフの意見は反映されていますか?」

若松さん「はい。たとえばモーニングでお出しした自家製ハムは、2020年の夏から山梨に古民家を借りて現地のスタッフが手作りしています。『自分たちで育てた野菜を出したいね』という話になって、そこからです。自社農園もあるので、会社としてゆくゆくは野菜も自家製を目指しています」

ショーケースに並ぶ自家製パン

アリス「モーニングのパンも自家製でしたが、パンはいつから始まったんですか?」

若松さん「去年です。いまはパティスリィ アサコ イワヤナギ 本店のショーケースの1/3くらいがパンのスペースになっています。2015年にパフェからスタートして、その次にパンがはじまって、そのパンにデリを挟んで種類が増えて、モーニングとランチを始めて……という感じで進化していきました」

サロン・ド ・テ内観

アリス「いま考えている新しいアイディアはありますか?」

若松さん「あります。まず、このお店を夜営業まで伸ばす予定です。ここは夜になるとカウンター席が、バーのような雰囲気になるんですよ。落ち着いたら、そこでアルコールの提供をしたいです。さらにスタッフ同士で話しているのですが、月に一回だけ常連さんのためのスペシャルなコースをやってみたいです」

ボリュームのあるモーニングスペシャリテ

アリス「ファインダイニングのコース料理のイメージですか?」

若松さん「はい。現在提供しているランチでは一皿にぎゅっと要素を詰め込んでいるのですが、一皿一皿出していくコース仕立てにも挑戦してみたいなと思っています。一斉スタートで2〜3時間かけて楽しむイメージです。まだまだ勉強不足なので模索中ですが、料理を究めたいです」

アリス「パティスリィ アサコ イワヤナギといえば、パフェというイメージだったけど、そこからどんどん派生して、パン、料理、お酒と進化しているんですね。これから楽しみにしています」

料理の話を聞くはずが、いつの間にか職場インタビューのように(笑)。パティスリィ アサコ イワヤナギの本店へ行くと、ガラスの向こう側に見える厨房で、10名ほどのスタッフさんがフルーツの皮を剥いたり、パフェを組み立てたり……。真剣な顔つきで黙々と作業をする姿が印象的だったので、もっと厳しい職場をイメージしていました。一つの価値観に縛られず、みんなの意見でいい流れをどんどんブーストしていく。それが令和の飲食店の形なのかな、とワクワクするインタビューでした。

※価格は税込。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で 事前にご確認ください。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

文:斉藤アリス・食べログマガジン編集部 写真:樺沢孝彦