〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。 今回は神奈川グルメの取材歴が長い、カメラマン兼ライターの千葉英里さんのお気に入りを伺った。

教えてくれる人

千葉英里
神奈川県(湘南に在住)を拠点に、撮影・執筆・編集の仕事を幅広くフリーで活動中。スイーツからラーメン、居酒屋のおつまみ系まで何でも大好き! でも下戸なのでアルコールがまったく飲めないのが悩み。プライベートでは2児の母親で、休みの日はジムや旅行、トレッキングなどの趣味を楽しんでいる。

農作物を作り、地元農家と地域をつなぐプラットホームの役割も果たす

観光地としても人気が高い小田原。小田急線の螢田駅より車で10分ほどの場所に「農家カフェシエスタ」は21年1月にオープンした。

このカフェのオーナー小山田さんは、行政書士や自然エネルギー事業なども行う異色の肩書きの持ち主。テレビや雑誌、機関紙など多数のメディアでも取り上げられている、農業×カフェ×自然エネルギーを融合させた事業をなぜ手掛けているのか? カフェのメニューの話をきっかけに、創業時のエピソードや小田原のこと、今後の展望などについて興味深い話を聞くことができた。

創業から間もないので食べログでは3.07だが、お味は抜群。なかなかお目にかかれないほど野菜たっぷりのランチは、リピーターも多いという。さらにこれから先、私たちが考えなければならない食やエネルギー問題について重要な“場所”になっていくことを期待したい。

※点数は2022年4月時点のものです。

小山田さんたちが作ったみかんで製造した「おひるねみかん」ジュース。写真:お店から

           

オーナーが運営する「かなごてファーム」とは?

オーナーの小山田さん。気さくな人柄に惹かれ、この日も常連さんが来店していた。

小山田さんの経歴は実に面白い。大学を卒業後、行政書士の資格を取得したにもかかわらず、大手の食品製造会社に就職。社内の飲食店事業部の企画やプロデュースに携わる部署に配属になり、飲食店の経営の仕方やマーケティングなどのイロハを学んだという。

小山田さんが執筆した著書。反響を呼んで、各種メディアから取材が殺到した。

数年経ちほかの仕事も経験してみたいと、郵便局に入社し数年経ったころ、東日本大震災が起こった。震災後、原子力発電所の停止により、エネルギー発電について深く考えるようになってから、自分の価値観が一気に変わる。調べると、日本では再生可能なエネルギー発電の割合が少ないことを知り、居ても立ってもいられず何かできないか?と考え、起業した。「結婚してちょうど小田原に移住した時に、放棄地が多いという情報を聞きました。どうせなら放棄地も一緒に問題解決をしたいと思いました」と語る。

ソーラーパネルの下の農地で田植えをしている。 写真:お店から

2014年におひるねみかんプロジェクトをスタート。おひるねは、耕作放棄地(おひるねをしている土地)という意味で名付けられた。2016年には合同会社小田原かなごてファームを設立と同時にソーラーシェアリング第1号機を竣工。現在では市内に4ヶ所ソーラーシェアリングを運用している。ソーラーシェアリングとは、太陽光パネルの下に農地を作り、太陽光発電と農作物の2つを作り出す仕組みのこと。4ヶ所にはそれぞれ、さつまいも、米、みかん、大豆、落花生などが栽培されている。

自家栽培、地場産を中心とした食材を使った「農家カフェSIESTA」の誕生

家庭的な雰囲気は地元の憩いの場所のよう。本棚には再生エネルギー関連や農業にまつわる書籍が並ぶ。

2021年ソーラーシェアリング4号機設置と同じ年に「農家カフェSIESTA」がオープン。店のコンセプトは“食とエネルギーを自給して、地域でお金を回す”である。小山田さんは「小田原は自然も気候も素晴らしい場所。この場所の魅力を地元の人が知らないのは勿体無いですよね。食を通して地場の農産物や再生可能エネルギーについて関心を持ってもらえれば」と語る。

ちなみに店内で使う電気はソーラーシェアリングで発電した電気の一部を送電してまかなっている(それ以外の発電したほとんどの電気は電力会社が買い取っている)。

ソーラーシェアリングで育てたみかんを使った製品も店内で販売

店内には小田原の畑で栽培したみかんで作ったジュースやゼリーなどを販売。ソーラーシェアリングの農地で作られた米で造った日本酒『推譲』も今後は販売していくそう。
おひるねみかんジュース500円。農薬不使用で育てた青島みかんを搾ったオリジナルのジュース。瓶入りも販売しているが店内でも飲める。
 

千葉さん

みかん特有の風味や甘みが強く、酸味や苦味は控えめ。幅広い世代に好評のみかんジュースです。農薬も使っておらず、安心安全ですね!