近年、高架下が楽しい! 神田、阿佐ヶ谷、中目黒、五反田、新橋など、高架下に魅力的な店が軒を並べ、1軒でガッツリも良し、ハシゴするも良しと大人気なんです。

学芸大学駅周りの高架下も、都立大学駅寄りから「学大小路」「学大市場」、道を挟んで「学大横丁」と構成され、その中でも2021年12月にオープンした「CHI-FO」は、“まるで台湾屋台”と話題の的です。

店名「吃貨縁食(チーフォエンショク)」のごとく、食いしん坊が集まってくる!

「吃貨縁食(チーフォエンショク)」の看板が目印

学芸大学駅から徒歩1分、「学大横丁」の一角に台湾屋台がやってきました。店名の「吃貨(チーフォ)」は中国語のスラングで「食いしん坊」という意味に使われています。「縁食(エンショク)」は京都大学人文科学研究所の藤原辰史准教授の造語で「孤食でも共食でもない、誰もがパッと入りやすい、息苦しくないような形態」のことを言います。つまり、ここには食いしん坊たちが気軽に集まってきてほしいとの思いを込めて名付けたのです。

電飾看板に「日本語できます」と書いてしまうほど、店内の雰囲気は台湾さながら!

そんな食いしん坊たちは18時のオープンが待ちきれないと言わんばかりに集まりだし、扉が開くと同時に席に着きます。カウンターがお店で、その前にテーブルが並ぶという、まさに台湾屋台をイメージした店内は居るだけでワクワクしてきます。

台湾クラフトビール、ボトルのナチュラルワインはグラスとともに冷蔵庫からセルフサービスで!

まずはドリンクをオーダー。台湾クラフトビール、ナチュラルワインをはじめ、ミクソロジスト(野菜、フルーツ、ハーブなどでフレッシュなカクテルを作る人)として注目を集めているバーテンダー大場文武さん監修のオリジナルカクテルや、クラフトジン、紹興酒、ハイボールが揃います。ノンアル派にも台湾茶やクラフトコーラにクラフトジンジャーエール、台湾アップルサイダーと飽きさせません。またオリジナルカクテルはノンアルにもできるのでお酒が飲めなくても十分楽しめます。

店長兼フードディレクターの菊田悟さん

料理を任されているのは店長兼フードディレクターの菊田悟さん。かつて系列店の「C/NE」で菊田さんが旅した世界各国の料理店をポップアップで開催していたところ、特に台湾料理の会は開催する度にファンが増大。ならば常設してしまおうというのが「CHI-FO」誕生のきっかけでした。

まずはMust haveの「焼餃子」「水餃子」「ごった煮」の3つを狙って!

看板メニューは「吃貨鍋張(焼餃子)」「高麗菜水餃子(キャベツの水餃子)」「今天的滷味(本日の台湾式ごった煮)」の3つ。まずはここからスタート!

「高麗菜水餃子(キャベツの水餃子)」(左)、「吃貨鍋張(焼餃子)」(右)。どちらも6個600円

では餃子からご紹介しましょう。宇都宮出身の菊田さんは餃子愛が半端ではないので、どうしても力が入ってしまうそう。餡のベースとなるのは神奈川県産「やまゆりポーク」のバラ肉と肩ロースの塊肉。お店でミンチしています。そこにキャベツと玉ねぎと調味料を入れます。ポイントはブランド豚の塊肉を挽肉にしていること。食感とうまみが断然違います。

“餃子のおいしい台湾料理屋さん”と言われるそう

菊田さん渾身の焼餃子は噛むとほろっとほどけて皮の味と餡の味が交互にやってきます。餡はやわらかさの中から時折ゴロッとした塊肉や野菜が現れ、なかなか楽しませてくれます。ボリュームはあるけれど意外にもあっさりめなので、気がつくとお皿は空っぽに!

自家製の辣油と醤油でより一層台湾の味に近づきます

対する水餃子は餡の味が際立ちます。焼餃子よりも少し甘く感じる餡にプルンとした食感だけを残して一体化する皮。具材も皮も同じなのに包み方と調理法が変わるだけでなぜか味が違うと感じるのでとっても不思議。

そうそう、餃子には菊田さんオリジナルの辣油と醤油が欠かせません。醤油はなんとそばの「かえし」のレシピだそう。「台湾の醤油は少し甘いのでそばのかえしと味が近いんです。ウチの餃子に本当によく合うんですよ」と菊田さん。

まさに看板料理の「滷味(ルーウェイ)」

餃子とともに外せないのが「滷味(ルーウェイ)」です。現地ではお肉や野菜、きのこ類や麺などから好きな具材を選びボウルに入れ、それをお店の人に渡すと、ぐつぐつ煮立ったスープに入れて煮込んでくれる台湾ローカルフードです。

スープはお店によって違い、ストレートなだしだけというお店もあれば、八角、ウイキョウ、クローブ、シナモン、花椒といった香辛料を入れたものや、漢方や薬膳を取り入れたものもあります。調理法も汁あり、汁なし、また台南には具材は非加熱で汁をかけるといったものもあり、様々です。

「滷味」にはトマト、シトラス、黒胡椒などうまみ要素がいっぱいでさっぱり味のオリジナルカクテル「台南ガスパチョサワー」(800円)を

こちらのスープは、醤油ベースにスパイスを加えただしに昆布、鰹節も入れて継ぎ足してきた複雑妙味なスープです。煮立ってくるとまさに“台湾!”という感じの良い香りが漂ってきます。そこに鶏手羽、キャベツ、青梗菜、スナップエンドウ、菜の花、エリンギ、チキンラーメンを入れて煮込み、仕上げに自家製辣油をたっぷりかけていただきます。お酒のつまみにも主食にもなる、これぞ台湾料理最強伝説!