神田がカレーの街になった理由(前編)

神田といえば、知る人ぞ知るカレーの聖地。大正13年創業の老舗『共栄堂』や昭和57年創業の『ガヴィアル』、昭和63年創業の『エチオピア』など、昔ながらの有名店を筆頭に、400軒以上ものカレー提供店が軒を連ね、新店も増えつづけています。そもそもなぜ神田はカレーの街になったのでしょうか? 来る11月4日・5日に開催される神田カレーの祭典、「神田カレーグランプリ」事務局の中俣拓哉さん、船木生子さんにお話を伺いました。

 

安くてボリュームがあり食べやすい。学生の街だからこそ愛されて広がった

「神田は江戸時代は幕府のお膝元として発展し、明治時代に大学が多く創設され、それにともなって書店が増えたことから、本屋街として発展していきました。本を片手に読みながら、スプーン一本で簡単に食べられるということで、カレーの需要が高まるようになったといわれています」

 

学生たちの読書の友にぴったりだったというカレー。安くてボリュームがあるというのも、学生たちに支持された理由のひとつだと言います。

 

「例えばデカ盛りで知られる『まんてん』などが有名です。さらに『ボンディ』といったボリュームがありながら豪華で、食べると贅沢な気持ちになれるカレーも人気を集めるようになっていきます」

 

奥深い世界観をもつカレーが、さまざまなマニアが集う街・神田にマッチした

しかし、学生の人気を集めたのがなぜカレーだったのでしょうか? ラーメンや牛丼など安くてボリュームのあるものは他にもいろいろありますが?

 

「神保町には古本屋が、御茶ノ水にはスポーツ店や楽器店が、秋葉原にはパソコン店がありオタク文化が形成されているように、神田は好きなものを求めに来る趣味の街でもあります。またカレーという料理自体も食の中では非常に奥が深く、マニアックなものです。カレー好きは自分で作るケースも多く、何十種類ものスパイスを調合するなど徹底している人も多いですよね。趣味嗜好を求めに来る人が多い街にあって、カレーの方向性がマッチしたのではないかと考えています」

 

欧風カレーから本格インドカレー、スープカレーにお店ごとのオリジナルカレーまで、そのスタイルも実にさまざま。神田カレーの特徴とは?

 

「まさにいろいろなカレーがあるというのが特徴だと思います。全国各地のご当地カレーは素材や製法などそれぞれ定義がありますが、神田のカレーは雑多であり、だからこそ飽きないという魅力があります。カレーのエリアとして神田の街を楽しんでもらえたらいいですね」

 

カレーの街・神田で昭和から愛される二大名店

昭和56年の創業時から安い価格とボリュームで勝負!『まんてん』

出典:サプレマシーさん

 

出典:This?さん

 

昭和56年創業のまんてんは、神田錦町生まれの江澤昭夫氏が、サラリーマンや大学生におなかいっぱいになってもらいたいとリーズナブルな値段のカレー屋ととんかつ店を同時にオープン。並カレーが450円、カツカレーでも600円という価格でボリュームたっぷりのカレーを堪能できます。常にほぼ満席状態の店内なので、書店で買ったばかりの本を片手に食べるというスタイルは、こちらでは遠慮したほうがよさそうです。

 

 

欧風カレーの源流!昭和48年創業、神田カレーといえばまずここ!『ボンディ』

出典:ミヤマヤさん

 

出典:ほせ・かるぱっちょさん

 

創業は昭和48年(1973年)。創業者がアートを学びにフランスに留学した際、おいしいブラウンソースに出会ったことで料理に目覚め、帰国してからレストランで働き、フランスで出会ったソースと日本で学んだカレースパイスを組み合わせて、「欧風カレー」が誕生したそう。いわゆる“ごちそうカレー”として創業以来多くの人に愛され続けている老舗です。

 

 

後編では神田カレーグランプリに出店している今年の注目店をご紹介します。お見逃しなく!

 

取材・文:小野寺悦子