辛さが欲しければ「辛ネギらーめん」を!

シャキシャキの白ネギに熱した香油(シャンユ)をかけて仕上げる

厨房から「ジャシャー!」という音が聞こえる。目をやると、時永さんはアツアツに熱した香油(シャンユ)を丼に盛られた白ネギにかけていた。これが、この店でファンの多い“辛い系ラーメン”の「辛ネギらーめん」なのである。

「辛ネギらーめん」(辛さ・中)750円 広島県民はとにかく赤い色が好き

鶏ガラと豚の頭の骨を煮込んだスープをベースにしつつ、自家製の辛みそで辛さを加えた辛ネギらーめん。香油(シャンユ)で仕上げてあるので香りがいいのだが、そこに気を取られていたら強い辛さが襲ってくる。

辛さレベルが中でもしっかり感じる唐辛子のボディーブロー

辛さは中、大、激の3段階。写真は中だが、麺に絡みつく唐辛子の様子からなかなかの辛さであることが伝わるのではないかと思う。個人的には、この辛さでじゅうぶん辛い。

辛いのにレンゲがノンストップ! ハァハァ言いながら何杯もスープを飲んでしまう

バリエーションの豊富さも魅力

こちらは太麺。ゆでた後に冷水でしっかり締めてプリプリさせる

さらに、あなごスープはつけ麺にも進化している。ゆでたばかりの太麺を冷水で締めて麺の歯ごたえを引き出したら、特製のつけダレと共にいただく。しかも、そのつけダレがあなごラーメンのスピンオフ的な存在なのだという。

「濃厚あなごつけめん」(並)850円 つけ麺好きにこのビジュアルはたまらない!

並盛で300g。しかも、この太麺は満足度が高い。つけ麺好きとしては、普段ならつけダレにつける前に麺のまま何口かいただくのであるが、今回ばかりはつけダレが気になって仕方ない。早くどっぷりとつけたいのだ。このメニューの個性はつけダレの中に凝縮されている。

これもまた見た目だけではあなご感がないのだが……

姿は無けれど、味はする!とでも言うのだろうか。先ほど食べたあなごラーメンをさらに力強く感じさせるアツアツのつけダレが、冷たい太麺に絡みついて馴染んでいる。店主の時永さんが言うには「あなごらーめん塩味のスープを濃くしたものがつけダレになっています」とのこと。聞けば納得、確かにラーメンよりもあなごの味が濃厚なのだ。スープの濃度が高いので、麺につけるのは半分くらいまでを推奨しているらしい。

「炊き込みあなご飯」(平日限定・1日10食)320円

「やっぱりあなごの身も食べたいという声がありまして……」とのことで、2022年になってから始めたあなごの炊き込みご飯。平日限定で1日10食のみというメニューだが、これも日々完売するほどの人気だという。格安設定なので、必ず麺類と一緒に注文するのがマナー。確かにあなごのラーメンと一緒にあなご飯をいただくというのは、贅沢極まりない広島のランチになるはずだ。

あなごをご飯と炊き込み、仕上げにあなごの切り身がのる

広島に向洋から風を吹かせる! 孤高の名店「麺や時風」

筆者の加藤ひさつぐと店主の時永真伍さん

「ラーメンには終わりがないですね。だから作っているぼくも探求心が止まらないし、その姿勢がお客さんにも伝わっていたらうれしいです。自分だけのラーメンを作っていきたいですね」

店主の時永さんは、長年この街で居酒屋を経営してきた今だからこそ、見える景色や感じる風があるのかもしれない。聞いたことのない新しいラーメンが突然広島に誕生して、多くのラーメンフリークは「なぜあなご?」「なぜ向洋?」と思ったかもしれないが、そのすべては必然なのだ。

あなごの揺れるのれんを一度くぐってみてほしい

向洋という街は、広島が世界に誇る自動車工場を有する海沿いの街。海風と山風と凪が、時間を追う中で目まぐるしく変わっていく。しかしいま、広島ラーメン界では向洋から未来に向けて風が吹き始めている。「麺や時風」……。いい店名を付けたものだと思う。

※価格はすべて税込です。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※撮影時のみマスクを外しています。

撮影:中野一行
文:加藤ひさつぐ