小松さん絶賛! 虜になったこの4品

お造り

すみいか

今回紹介してもらった料理は、おまかせでもお好みでもOKの4品だ。まず、お造りは、季節のすみいかだ。それを、わさびではなく、北海道から取り寄せた山わさび(レフォール)と塩で食べさせる。わさびに比べてミネラル感の強い、ほのかに苦味のある辛味と塩の取り合わせが斬新で、ありきたりでない単品に格上げされている。「醤油ばかりが続くとどうしても単調になり、飽きられてしまうので、そのあたりに工夫を凝らすようにしています」と 長野さん。全体の流れやバランスを大切にしていることがよくわかる。

 

小松宏子さん

いかのお造りという、珍しくはない品が、一口いただくと、ん? 実に斬新。それは、山わさびの辛味のおかげ。わさびと醤油で食べるのとはずいぶん違うな、こんな、小さな発見が、食事の中にあるのはすごく楽しくて、印象に残ります。

金目鯛の蒸しもの

柑橘の香りが爽やか

次は、塩ベースのポン酢で食べさせる、金目鯛の蒸しもの。実は、酒ではなく、コアントロー(オレンジのリキュール)をふって蒸し上げている。だから、柑橘つながりで、最後には柚子ではなくて、レモンをすりおろしてふりかけて仕上げる。

コアントローで仕上げる

「金目鯛というとおいしくて当たり前、というか、美味しすぎて、印象が似てしまうというところがあるんです。そこをなんとか個性を出したいなと思い、コアントローとレモンで仕上げることを考えました」とは、長野さんの説明だ。

 

小松宏子さん

金目はもちろん大好きな魚ですが、レモンの皮をふることで、やわらかな金目の甘みがぴりっと引き締まり、とても気持ちのいい余韻が残るのに驚きました。異国の食材を使うのも理にかなった使い方が実に効果的で感心します。自家製の塩ベースのポン酢も爽やかで、いいお料理ですね。

ひと口ビフカツサンド

分厚い肉のビジュアルが食欲を刺激する

SHIGEteiの刻印も愛らしいひと口ビフカツサンドは、開店以来の名物で、人気のあまり、レギュラーアイテムからはずせなくなったほどだ。牛フィレ肉を衣はからりと、中はしっとりレアに揚げ、特製ソースで仕上げたそれは、和食の品々が並ぶ中で、ボリューム感も変化球感もほどよく、全体の流れにアクセントをつけるのに格好の品だ。

 

小松宏子さん

このカツサンドも大好きな一品です。肩肘張らずに本格派の和食が食べられるのはもちろん、随所に小気味のいい、ジャンルを超えたアレンジをきかせた、気の利いた品々が楽しめるのが、なんといってもSHIGEteiの魅力ですね

土鍋炊きの白ご飯

炊き立ての湯気もご馳走

最後は土鍋炊きの白ご飯で締めくくり。炊き込みご飯を炊く場合もあるが、最近はもっぱら、白ご飯に凝っている。やはり、和食の神髄という気持ちが強くなっているのだそう。そして、手作りご飯の友4点と赤出しがついてくる。

何から食べるか迷うのも楽しみ

自家製のちりめんじゃこ、自家製の糠漬け、明太子は定番。それに、日によって、鯖の塩焼きか鯛の胡麻和えが加わる。味噌汁は小葱だ。

ふっくらつやつやな炊き上がり
 

小松宏子さん

熱々の味噌汁とともに炊き立てご飯をいただけば、あー日本人に生まれてよかったと、誰しもが思うに違いありません。ある意味、炊き込みご飯より手がかかる、白ご飯セット。これを一人でやられているのはさすがです。自分が好きだからと長野さんは言いますが、頭が下がります。ワンオペならではの、愛にあふれた料理というのも、SHIGEteiの個性になっていると感じます。

ちなみに、ある日のコースの構成は、温かいおひたし、のれそれの酢の物、白魚の大葉巻き揚げ、蒸し金目鯛、うにとだいだいのジュレ、てっさ、ふぐ白子のフライ、きんきのたれ焼き、白ごはん。デザートにいちごのクレームダンジュと、確かに盛りだくさんで、コスパ抜群だ。

カウンターで寛ぎたい

飲み物はワイン、日本酒、焼酎とオールラウンドに力をいれており、酒好きには嬉しい限り。なかでも、日本酒は、こだわりの酒屋と相談し、その季節にしか手に入らない希少な品を中心に入れている。今の時期なら、搾りたての新酒や薄にごりなどが旬の料理を引き立ててくれる。

このお値段でこのクオリティ。しかも神楽坂。覚えておいて絶対に損はない、友達を連れていくときに自慢できる、そんな一軒であることは間違いなしだ。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

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撮影:松園多聞
文:小松宏子・食べログマガジン編集部