定食王が今日も行く!

800円代にこだわるお袋の味!西早稲田「ひまわり」の肉じゃが

 

とにかくお客の声に応える!

中華料理を定食屋にし、朝6時から営業

 

早稲田大学理工学部のある西早稲田。新宿三丁目から池袋をつなぐ副都心線の一駅、朝6時からは夜勤明けのタクシー運転手たちや、昼は早稲田大学の学生で、夜22時まで賑わう。40年以上前、開店当初は「JUN」という中華料理屋だった。しかし、このあたりは飲食店が乏しく、お客さんから中華料理ではなく、家庭料理が食べたいと言われていたため、1992年の改装を機に、店名を「ひまわり」に改名、大衆食堂に生まれ変わった。ひまわりモチーフがついた、一見何料理のお店なのかわからない外観や、今の大将の母親の故郷である信州や雑誌の切り抜きが飾られた内装は、女将がプロデュースしたそうだ。

 

 

 

この店の凄さは、その営業時間の長さ。朝6時の開店時は、夜勤明けのタクシーの運転手さんたちで賑わう。朝でも仕込みができたものから提供可能で、20種類ほどのメニューを取り揃えるという。ランチは早稲田大学の学生が、夜は近隣の団地やサラリーマンが宴を楽しんでいる。貸切も可能らしく、女将の友人などで宴会を楽しめるスペースを作りたかったそうだ。

 

中華料理を定食屋にしたところからはじまり、貸切で宴会ができる小上がりを作ったり、その長い営業時間も、とにかく地域の人やお客さんの声に応える空間を提供したいという思いを感じる。こちらも胸が熱くなる名店だ。

 

 

 

 

ひまわりの代名詞「肉じゃが」!

ホクホク、しっとり、ジャガイモに感動!

 

そんなひまわりの代名詞「肉じゃが」。イチオシ定食は「肉じゃがとメンチカツの定食」で820円。メニューは毎日変わるので、季節を感じられる食材が食べられるのもうれしい。特別な食材も、特別なこともしていないという肉じゃがだが、注文後運ばれてきた姿は、なんとも神々しい。煮崩れすることなく鎮座するメークインは、神々しい高貴なジャガイモの女神のようにも見える。

 

 

威風堂々とした肉じゃが、肉を味わうというより、ぜひジャガイモのうまさを味わってほしい。表面はほどよく硬さを残しさっくり。ジャガイモの中心部へ食べ進むと、さっくりがしっとりに変化していく。箸で割ると味が中にまで染みているのがわかる。煮込みすぎていないから、実現できる職人技だ。おつゆが染みたジャガイモを舌に乗せ、ご飯を頬張る。甘すぎないつゆが、ご飯の旨味と甘さにぴったり合って箸が進む! 幸せのハーモニーが口の中で生まれる瞬間だ。

 

 

ちなみに、肉じゃがは家庭料理の代名詞になっているが、明治時代に英国帰りだった東郷平八郎が、英国のシチューを再現しろと海軍のシェフに命じできたものだという説がある。いつでもどこでも安定的に作れるため艦上食にはぴったりだったのだろう。

 

 

女将さんの故郷、信州南アルプス米と

おかずの雄の連続で、おかわりが止まらない

 

店内には女将さんの故郷、長野県伊那市の水田風景の写真があちこち貼ってある。実家の隣の農家さんが作った米を、毎週親戚に精米して送ってもらっているそう。艶やかに炊き上がった米は、噛めば噛むほど上品で甘い。

 

 

先日訪れた時は、女将さんがたまたまこの青唐辛子と刻んだ茄子が入った味噌を出してくれた。これは刺激的な辛さを味噌の甘さが包み込む、信州らしいおかずだ。そのほかにも、揚げたてのメンチカツや、アジフライなど、おかずの雄が勢揃いだ。味噌汁にも豆腐、わかめに、ちゃんと玉ねぎが入っており(これがポイントで、玉ねぎの食感があるだけで、味噌汁の満足度がぐっと上がる)、ご飯のおかわりが止まらない。もちろん無料だ。

 

 

 

中華屋時代からの手作り餃子!

800円代にこだわる女将の愛がたっぷり

 

この店で肉じゃがと並ぶ看板メニューがこの手作り餃子だ。もともと中華料理店だったこともあって、ひとつずつ手包みで作られた餃子はニラ、野菜と肉のバランスが絶妙で、ペロリと食べてしまう。女子学生でもダブルで餃子を頼む人が多いそう。しかもこれが400円で食べられる。

 

「最近美味しいもの食べた?」と聞く女将さんと話をしていると、「1000円超える定食はダメよ。800円代でなきゃ!」という頑なポリシーがあるようだ。朝6時から夜22時まで営業し、休憩時間は午後2時から5時までの3時間のみ。しかもほぼ年中無休。これだけコストパフォーマンスが良く、とにかくうまい店はなかなか貴重だ。とことん顧客ファーストで多くの人を笑顔にする姿は、まさに空を見て堂々と咲き誇る「ひまわり」のようだ。これからも西早稲田の地で、長く咲き続けてほしい。