【第3週のカレーとスパイス】スパイスおばんざいをあてに一杯どう? 神田にカレー&スパイス料理が並ぶ小料理屋が誕生「小料理 よしこ」

今回ご紹介するのは1月24日(月)、神田にオープンした小料理屋「小料理 よしこ」です。カウンターに並べられたおばんざいに着物姿の女将さん。一見普通の小料理屋なのですが、この連載で取り上げるということは、カレーとスパイス料理があるのです。場所は神田多町。神田駅からも小川町駅や岩本町駅からもアクセスの良いエリアです。

まずはおばんざい。日によって内容は変わっていくのですが、豚の角煮があったり、女将さん自ら釣ってきたというワカサギの南蛮漬けがあったりと、小料理屋らしいものの中に、時折スパイス料理などカレーマニア心をくすぐる料理が隠れています。

「ワカサギの南蛮漬け」

大根の煮物に見えて実は大根のスリランカ風カレーだったり、普通の漬物に見えてアチャール(インド亜大陸の料理でスパイス使用のピクルス)だったり、何かの和え物かなと思ったらライタ(ビリヤニなどに合わせることが多いヨーグルトサラダ)だったり。

「和風ライタ」

なぜこのような料理が並ぶのかというと、女将のよしこさんはアレルギーの悪化で食べられるものが限られるようになってしまい、そこから働き方を変えて薬膳やスパイスを勉強し始め、カレーやスパイス料理のおいしさにどっぷりとハマり、色々なお店を食べ歩いたり自作を続ける中でカレー・スパイス料理研究家の一条もんこさんの教室などにも通ってスパイス料理の世界に没頭し、いつしかカレーを仕事にしたいと思うようになったそうです。

「豚の角煮」

最初はキッチンカーでのカレー店を準備し、車まで買ったそうですが様々な事情で一度断念。その後間借りなどの話もあったのですが一念発起し、やるなら最初からリスクを背負ってやってみようということで神田にお店を構えたという方。

話してみると物腰柔らかくフワッとした印象なのですが、その芯には気合いと根性が感じられる方です。料理にしろ女将さんの人柄にしろ、この意外性を楽しみつつ、〆のカレーは欠かせません。

あいがけカレーとおばんざい

プレオープン中で様々なスタイルに挑戦していたのですが、初めに行ったときはチキンカレーとポークビンダルーのあいがけ、次に行ったときは最初とはまた違うチキンカレーでした。このチキンカレーがなかなか面白いのです。

「チキンカレー」

スリランカのチキンカレーと鶏ガラの出汁カレーをそれぞれ作って合わせたものということでかなり手間がかかっているのですが、スリランカカレーのスパイスのパンチと出汁カレーの奥深いうま味が、調和という以上にある意味止揚したとも言えるカレーになっていました。

面白い。そしておいしい。取材時はまだプレオープン中だったので今後内容や価格が変動する可能性はあるものの、基本的には「おばんざいとカレー+飲み放題」が8,800円、「カレー(副菜付き)+ドリンク1杯」が2,200円とのこと。小料理屋にも色々ありますが、こちらは看板女将が切り盛りするタイプのお店ですから、そう考えると納得がいくでしょう。

カレーの街である神田で、今後どのように発展していくのか楽しみなお店です。きっと神田のカレー好きサラリーマンの心と胃袋を掴んでいくことでしょう。

※本記事は取材日(2021年1月18日)時点の情報をもとに作成しています。

【第4週のカレーとスパイス】名物はダルバート! スパイス料理好きなら知っておきたい、ネパール料理の名店の味 「サンサール」

僕がカレーにハマって日常的に食べるようになってから25年以上が経ちますが、ここ数年でカレーファンの数は急増したように感じています。最近カレーを好きになった方は新しい名店によく通っているようですが、老舗には行ったことがないという人も少なくありません。そんな人に出会うと僕はいつも思います。なんともったいないことか!

老舗には流行や時代にとらわれないおいしさがあり、長年続いているからこそホスピタリティの素晴らしいお店が少なくありません。今回ご紹介する小岩の「サンサール」もまさにそんなお店。

小岩の本店は駅から徒歩10分以上と、決してアクセスが良いわけではないのですが多くの常連が通い、東新宿や本八幡にある姉妹店も安定感あるおいしさです。

「ネパールランチセット」

名物はダルバート。ランチでは「ネパールランチセット」1,050円という形でメニューにあります。日替わりのタルカリ(カレー味のおかず)にダル(豆のスープ)、サーグ(青菜炒め)やアツァール(ネパールのトマトチャツネ)がつくネパールの定食です。

この日のタルカリはチキンとゴーヤのセミドライタイプのカレーでした。素材の味がスパイスによって融合し、見事にまとまったおいしさは流石老舗。ダルもこの日はいつもと違う豆で里芋も入ったスペシャル版。自然な甘みが深く、染み入るおいしさでした。

ディナーの「ダルバート」(新宿店にて撮影)

夜のダルバートは内容と値段(1,650円)が変わります。おかずの数も増えて豪華になったものなので、昼と夜を食べ比べるのも楽しいでしょう。

「モモ」

またディナータイムは本格的なネパール料理が色々と味わえます。定番の「モモ」750円は羊と鶏の合挽き肉を使用した本格派。

「ツォエラ」

「ツォエラ」800円は香ばしく焼いたチキンをスパイスでマリネした料理。野菜も入るのがサンサール流。個性あるおいしさです。

「チャタモリ」

「チャタモリ」800円は米粉で作ったネパール風ピザ的な料理。辛さはほとんどないので子供にも喜ばれそうです。

「マグロのカチラ」

日によってはメニューに載っていないスペシャルメニューがあることも。「マグロのカチラ」750円は本格的なネパール料理店でもなかなかお目にかかれないレアな料理。ネパールでは水牛で作ることが多いカチラをマグロでアレンジしたもの。葉にんにくがしっかりと利いていて、お酒を飲みたくなってしまうようなおいしさでした。

どの料理もオーセンティックなネパール料理というよりは、店主ウルミラさんのオリジナリティが感じられるサンサールならではのおいしさで、大久保界隈のネパール料理店ともまた違う魅力を持っています。

今でこそ大久保界隈はネパール料理激戦区であり、多くのお店が集まっていますが、15年も前となると本格的なネパール料理を出すお店はほとんどありませんでした。サンサールはそんな頃からネパール料理を出し続けている名店なのです。

今どきの流行を追いかけるのも楽しいでしょうが、古くから続く老舗の味を知ってからまた流行を追いかけ直してみると、より深い部分まで気付くことができるようになると思います。

東新宿や本八幡のお店に行ったことがあるという方も、小岩の本店で是非ウルミラさんの人柄に触れてみてください。さらにサンサールが好きになること請け合いですから。

※本記事は取材日(2022年1月25日)時点の情報をもとに作成しています。

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/