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丁寧な仕事ぶりが活かされた串カツのオンパレード!
いよいよここからが串カツの登場だ。通常の串カツ店なら、小麦粉、卵、水などでとろみのあるバッター液を作り、そこに素材を浸けたのちに、パン粉をまぶして揚げるスタイルが主流。しかしこちらでは、それぞれ別々のままで、順番に具材へ付けていく。
「こうすることで軽い食感と味わいになるのです」と狙いを語る名倉さん。その作業は串カツというより天ぷらを揚げるような流れだ。さらに具材によって油の温度をまめに調整することも怠らない。
山本憲資
実に軽い揚げ具合とぷりぷりの食感がたまりません! ミソを抱えた頭の部分も絶品ですよ。
味わい方は自分好みで。キャベツの千切りも侮れない!
串カツのパートナーとも言えるのがつけダレ。ご覧のように塩をはじめ5種類ほど用意されていて、具材によって名倉さんがお薦めのタレを提供してくれる。とはいえ、自分の好みでチョイスすることもできる。
隠れ人気メニューなのがキャベツの千切り。名倉さんが包丁で丁寧に切り刻んだキャベツは、非常に細い。それでいてシャキシャキ感が保たれ、さっぱりとした自家製オニオンドレッシングと好相性だ。しかもお代わり自由。「3杯ほどお代わりする方もいて、実は仕込みが大変です」と頭をかく名倉さん。
まさに和食の一品料理とも言える串カツ
野菜は名倉さん自らが市場に足を運び、目利きする。魚介は長年付き合いがあり信頼の置ける魚屋から仕入れるものの、「土地柄、舌の肥えたお客様が多いですから気を抜けません」と表情を引き締める名倉さん。
続いて出てきた三つ葉キス巻は、出汁が香る天つゆで。ふんわりしたキスの食感と淡泊な味わいが広がり、三つ葉の爽やかな香り、そしてしゃきっとした歯応えも絶妙な一品だ。
ウロコが花びらのようにも見えるアマダイの串カツが登場。ウロコの部分を一旦高温で揚げ、その後に低温で身の部分を揚げるという手の込んだ一品。
山本憲資
見た目であっと驚くのがアマダイの串カツです。サクサクのウロコの食感と上品な味わいの身のハーモニーがお見事です。
チーズと海苔の意外な組み合わせにハマる一品!
山本さんが最も魅せられた串カツのひとつがカチョカバロ。カチョカバロはイタリア発祥の袋状の形にして熟成させたチーズのことで、これをカットして衣を付けて揚げ、海苔でくるんで手渡すのが名倉流カチョカバロの串カツ。
カチョカバロは多くの料理人から高い評価を受けている岡山の「吉田牧場」のものを使用。海苔もアオサノリが加わった香り高いものにこだわる。
山本憲資
磯の香りが芳しい海苔、そしてサックリした衣の中から、旨みの濃いチーズがとろ〜りと溢れ出て来ます! 受け取ったらそのままガブリとかじりついてください!
コースに是非とも追加すべき締めの麺料理
最後のデザートの前に、追加注文することで締めの麺料理を楽しむことができる。「串揚げ屋さんで麺料理といえば意外かもしれませんが、これが良く合うんです!」と山本さんも推す。時には醤油ラーメンなども登場する。
この日はカラスミをたっぷりトッピングした麺料理で、兵庫県福崎町の特産もち麦から作られたもち麦麺の「カラスミそうめん」。もち麦麺は「そばにあらず、うどんにあらず」というキャッチコピーだけに、かすかな褐色と独特の食感が特徴。
山本憲資
出汁を絡めた麺に大量のカラスミがインパクト大! もち麦麺特有のモチッとした食感、ほのかな出汁の味わいとカラスミのしょっぱさがヤミツキになります!
そして最後は名倉さん手作りのデザート。イチゴ大福は餡と求肥も非常に薄く果実感たっぷり。大福は、ほかにシャインマスカットやイチジクなども登場する。
これにてコースは終了。味はもちろん、見た目にも美しい串カツとの出合いが存分に楽しめた。お腹いっぱいになったといえども、胃もたれはなく、噂通りの軽快な満腹感はさすがだ。また名倉さんの丁寧な仕事ぶりや、気の利いた接客などに接すれば、接待や記念日など、大切な人と共に利用するお客さんも多いというのも、大いにうなずけるお店だ。