〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!

食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

「焼肉BEAST」の姉妹店は、肉と酒にこだわる酒場

カラフルなEL蛍光チューブの外観が目印「ジャストミート」

2021年9月16日、浅草にオープンした「ジャストミート」。店の外にはEL蛍光チューブで描かれた店名や、イラスト、文字がポップに飾りつけられている。これはタレントのユージさんがデザインしたもので、遊び心満載だ。その横に揺れている提灯には「肉と酒」という文字が見える。そう、ここは肉と酒が自慢の酒場なのだ。

店名の「ジャストミート」は、野球の「バットの芯でとらえた打球」のほか、「出会う」のmeet、そしてもちろん「肉」のmeatも掛けられている。名づけたのはオーナーの奥さん。オープン当初はスタンディングスタイルの店だったが、「席があれば、ゆっくり飲めるのに」という客の要望で、現在のカウンターとテーブル席になった。

こだわりの一つである肉(ミート)。酒場でありながら、出てくる肉のクオリティが高いと評判になっているが、それもそのはず。この店は浅草にある人気店「焼肉BEAST」の姉妹店で、同じ肉を使っている。厨房には炭火台を置き、「焼肉BEAST」で修行した熟練のスタッフが部位ごとに、ジャストミートなタイミングで焼き上げてくれるのだ。

ポテトサラダの主役は、2日間漬け込んだタンのコンビーフ

タンのコンビーフがたっぷり入った「ポテトサラダ」

早速、肉を注文したいところだが、酒に合わせてとりあえず一品頼むなら「ポテトサラダ」で決まりだ。なんと、ポテサラなのに、じゃがいもが存在感を主張していない。じゃがいもよりタンのコンビーフの味が際立っている。主役のタンは店で下処理するときに出た端肉を、特製のタレに丸2日間かけて仕込む。素材を無駄にせず使いきることで、質の良い肉がリーズナブルに提供できるのだ。

このコンビーフがうますぎて、最近では客から「コンビーフだけ出して欲しい」というリクエストも入るが、これはポテトサラダに合うように作ったもの。コンビーフ単品で酒に合う味をただいま開発中だとか。メニューに並ぶ日もそう遠くはなさそうだ。

生の肉にこだわった「太田牛ユッケ」

希少な太田牛のユッケ。肉の甘さが特徴。

「焼肉BEAST」と言えば、関東ではなかなか出回らない兵庫県の太田牧場が飼育する太田牛を提供する店としても有名だ。「ジャストミート」でも、肉刺などいくつかの料理に太田牛を使っている。その中の一つが「太田牛ユッケ」。

「ジャストミート」のユッケは太田牛の生肉のみを使用。低温調理もしていない。そのため、口の中で肉本来の甘さがジュワーと広がり、後味はあっさり。ごま油やタレが強すぎて、肉本来の味がわからないなんてこともなく、脂っぽさや、肉の嫌なにおいがない。ユッケが苦手な人でも食べやすい一品だ。

この店に来たら「厚切り上タン塩」を食すべし!

見よ、この美しさ! 熟練した技が光るジャストミートな焼き加減。

「厚切り上タン塩」はこの店でも人気の炭火焼。肉の塊を巧みに焼き上げるのは店長の藤西政斗さんだ。大手居酒屋チェーンの店長などを歴任し、去年「焼肉BEAST」に入社。その後、早くも「ジャストミート」で店長をしているというから驚きだ。

肉を知り尽くしたスタッフだからわかる、絶妙な焼き加減。

「厚切りのタンは遠火でゆっくり火が入るように焼きます。だから時間がかかりますが、この焼き方が一番おいしいのです」と言いながら焼き具合を見極めている。ちょっと油断をして、お酒を一口飲もうと目を離した隙に「これで完成です」と、火から素早く下ろして肉をカットしだした。皿に並んだタンは、外側はしっかり火が通っていて、中はほんのりピンク色。この焼き加減、素人では到底真似できない。プロが焼いてくれるからこその、絶妙な焼き加減。これは店の人にお任せするのが賢明と言える。

焼き上がった「厚切り上タン塩」はレモンを搾り、お好みでわさびをつけて食す。外側に少しだけコリッとした食感があるものの、肉は柔らかくてジューシーだ。焼き方一つで、こうも全く違うものになるとは。この店に来て、タンの概念が変わるほどのクオリティだった。

シメは「にんにくハラミ」のタレ味とご飯

ご飯の上で肉をバウンド。タレと肉汁の染み込んだ白米が御馳走になる。

タレと塩が選べる「にんにくハラミ」。お腹もちょうどいいぐらいに膨れたら、タレを選んで白米をオーダーし、〆の態勢に入りたい。もう少し飲みたいと思ったときは、塩を選んでお気に入りのドリンクをおかわりするのもありだ。

柔らかいハラミは高温で一気に焼き上げるのがコツ。のんびりしていると、せっかくの肉が硬くなってしまう。ここにも肉を焼く、職人の技が光る。このタレはサラッとしていて味にキレがあり、さっぱりしている。だから〆は肉を米の上でワンバウンド、ツーバウンドさせて口の中へ放り込む。その後、肉汁とタレが染み込んだ白飯をパクリといくのがおすすめだ。

まだ少しお腹に余裕のある人は、浅草の「開化楼」の麺を使ったホルモン焼きそばや、冷麺を追加オーダーするのもいいだろう。