【食を制す者、ビジネスを制す】

 

なぜエグゼクティブはステーキが好きなのか?

 

先日、ニューヨークに行ってきた。

今回で2回目だが、仕事ではなく、あくまで観光客なので、お上りさん気分は抜けず、街では相変わらず緊張もした。

それでも知らない街を歩くのは、目に見えるものすべてを情報収集しようと脳みそがフル回転するようで、刺激が多いし、発見もあって、面白い。

実際、偶然にもトランプ大統領がニューヨークに帰っており、デモやテロ対策のため、自宅のある五番街のトランプタワー付近は道路封鎖され、タワーの入口も大きなトラックが何台も並べられ、厳戒態勢がとられていた。

著者撮影

 

ニューヨークの街を歩いていると、何もかもが日本とスケールが違うように見える。そんなニューヨークで、私のような観光客の日本人と違って、実際に働いている日本人、とくにビジネス界で活躍するエグゼクティブは、どんな生活をしているのか。ふと興味がわいた。

 

エグゼクティブほど朝を大事にする

かつて野村證券副社長から国際機関の多数国間投資保証機関(MIGA)の初代長官に就任し、その後、参議院議員、経済企画庁長官などを務めた寺澤芳男氏は、70~80年代にかけて、米国野村證券のトップとしてウォール街での日本の地位を高めた人物として知られる。

事実、日本人として初めてニューヨーク証券取引所の会員になったほか、社長公邸用に五番街のメトロポリタン美術館前に高級アパートメントを購入するなど、アメリカのエグゼクティブと伍して戦うことに努めた日本人ビジネスマンの1人だった。

著者撮影

 

そんな寺澤氏の朝の時間の過ごし方もまたエグゼクティブなものだった。朝は6時過ぎに起床。顔や歯も洗わず、ズボンにワイシャツと上着だけを羽織って、迎えに来た専属ドクターの車に乗って、会員制アスレチッククラブに直行する。

シャワーを浴びてから裸のままプールでひと泳ぎし(女人禁制のメンズ・クラブ。水泳パンツはつけないのが決まりで、そのほうが清潔らしい)、クラブのブレックファーストをたっぷり食べて、ドクターの診察を受けた後、出勤していたという。

実は、寺澤氏のようなエグゼクティブほど、朝を大事にしている。なぜなら精力的に働くエグゼクティブたちほど、朝から自分のエンジンをフル活動させるためのウォーミングアップを大事にしているからである。

責任ある仕事を完遂するには、プレッシャーもあるし、その分、体力も使う。よくエグゼクティブには何らかのオーラがあるというが、その正体は「緊張感」だ。緊張感を持続させているからこそ、一日中、パワフルに動きまわることができるのだ。

そうしたリズムを毎日保つためには、朝の時間が最も大事なのである。踊るようなリズムのまま、朝早くから精力的に動けば、腹が減るのは当然だ。昨夜酒を飲み過ぎて今日は二日酔い、ランチ時の食事はちょっと軽めで、というわけにはいかないのだ。

 

モーニングステーキorディナーステーキ?

そんな健全なエグゼクティブたちほど、朝食で肉を欲するようだ。そのせいか、海外だけでなく、日本でも高級ホテルには「モーニングステーキ」がある。エグゼクティブは宿泊や朝の会合でよく使う高級ホテルのレストランやルームサービスでステーキを食べるのである。

かつて若手ビジネスマンの間で、朝から身体を活性化させるために、モーニングカレーが流行ったことがあったが、エグゼクティブは朝からステーキを食べるほど身体の活性化を必要としているのである。

日本で「モーニングステーキ」を食べるには、やはりホテルがいい。「シャングリ・ラ ホテル東京」を始めとした外資系ホテルでは、出張で来た海外のエグゼクティブも多く、メニューにモーニングステーキが用意されていることが少なくない。ただ、価格も1万円くらいするので、ちょっとハードルが高いかもしれない。

一方、国内系のホテルでは、例えば、京王プラザホテル本館2階の「オールデイダイニング樹林」で「ステーキブレックファスト」を早朝5時から食べることができる。価格も4000円と手が届くレベルだ。

もちろん、ステーキを食べるのは朝でなくてもいい。一日一所懸命働いたあとのディナーステーキは格別だろう。

とくにニューヨークのエグゼクティブたちはステーキが大好き。名店ならディナー時はいつも満席状態だ。そんなニューヨーク仕込みのステーキを日本でも食べることができる。

例えば、ブルックリンの名店「ピーター・ルーガー・ステーキハウス」で活躍したウルフギャング・ズウィナー氏の店である「ウルフギャング・ステーキハウス六本木店」。

ウルフギャング・ステーキハウス/出典:お店

 

さらに、「ベンジャミン・ステーキハウス」が今年6月、六本木に店をオープンさせている。

ベンジャミン・ステーキハウス/出典:お店

ちなみにベンジャミンの本店には、2014年に国連総会で訪米した際、安倍晋三首相も訪れている。いずれも世界のエグゼクティブが利用する店であり、ステーキ好きなら一度は行ってみる価値がある。