七里ヶ浜から丘を登った、地元の人のとっておきのお店

DRAQUIRE (ドラキア)外観
天気の良い日はオープンテラススタイルとなる。春は満開の桜の下で食事が楽しめる。

七里ヶ浜からまっすぐ丘へと続く坂を上っていくと、スーパーマーケットや店舗が並ぶ桜並木の遊歩道が現れる。その中に佇むのが「ドラキア」だ。

イタリア・ミラノで幼少期を過ごした山田尚立シェフが、フレンチやイタリアンで学んだ技術と世界各国を旅してきた経験を基に作り出す料理は、一皿の中に多彩な味わいが重なる。山田シェフは、イタリアンの「IL TEATRINO DA SALONE」で修行をスタートし、フレンチの「Michel Troisgros」、北欧の「noma」の遺伝子を継ぐ「INUA」を経て、白金高輪「OREXIS」のヘッドシェフを務めたのち独立。和食、イタリアン、フレンチ、その他これまで山田シェフが渡り歩いて、その記憶に刻んできた様々な国の味がシェフの料理からうかがえる。

桜並木の遊歩道沿いにあるオープンテラスで食事を

DRAQUIRE (ドラキア)内観
店内は22席。中央に6人テーブルがあり、遊歩道を眺めながら食事ができる。

同店はランチとディナーで営業しており、ランチで人気なのは5品のランチコース(3,630円)。前菜など3品とメイン、そしてデザートまで付くとあって満足度が高いコースとなっている。

ディナーコース(7,700円)は、前菜など4品と魚料理、メイン。そして、デザートとプチフールのフルコースだ。

料理の内容は季節ごとに変わっていくが、前菜はランチとディナーでは大きく変わらない。1皿目の前菜として初夏の時期に提供されたのは、ホワイトアスパラを使ったブランマンジェに塩麹のアイスを添えたかわいらしい見た目の一品だった。

DRAQUIRE (ドラキア)前菜
麹のやさしい甘みと魚介の塩味が重なった一皿。

まず、塩麹のアイスだけをすくうと、ほどよい甘じょっぱさが味覚を刺激する。次にすくったブランマンジェの中には、蟹のほかに小さくカットされたホワイトアスパラとエストラゴンやエシャロットなどの香味野菜が入っていて、シャキシャキとした食感が触覚と聴覚を楽しませてくれる。これにウニとキャビアも一緒に口に運べば、ウニの香りが鼻を抜け、先ほどのブランマンジェのみのひと匙とは違う装いへと変化した。

そして、再びアイスとともに頬張ると、今度は冷たさが加わり、先ほどまで感じていた味わいが幾重にも重なった深みのあるものへと変わっていく。一皿の中にギュッと楽しさが詰まった前菜となっている。

絵画のような美しさで視覚も満足

DRAQUIRE (ドラキア)前菜
つぶ貝にゴルゴンゾーラチーズのソースという組み合わせが絶妙な風味を生んでいる。

お皿をキャンバスに見立てているかのように美しく盛り付けされているのは、2皿目の前菜、つぶ貝とショートパスタの温菜だ。パスタは、ほうれん草とゴルゴンゾーラのピューレで和えているが、ゴルゴンゾーラの香りはふわりと香る程度。ブルギニヨンバターで炒めたつぶ貝の磯の香と、独特の香りを絶妙に抑えたチーズの風味が良く合っている。添えられたパッションフルーツのソースを和えれば、そこに爽やかさが加わり、初夏らしい風味を楽しむことができる。

オープンしてからの2ヶ月間は前菜のひとつとして生ショートパスタを提供することが多かったが、「今後は色々と考えています」とのことだ。

一口ずつ、お肉の異なる旨みが楽しめるソースとオリジナルスパイス

DRAQUIRE (ドラキア)ランチコースのメイン
ソースを変えることで、肉の味わいも変わる“味変”が楽しめる。

この日のランチのメインは、北海道のプレコフーズ指定牧場で育てられたオリジナルブランド豚「神威豚(かむいとん)」のローストに、地元・鎌倉や三浦で採れた野菜を添えたもの。

前菜2品もそうだったが、山田シェフの料理は一皿の中に複数の味わいが競演しているのが特徴だ。メインも同じく、神威豚の旨みと甘みを引き立てるために、ジャガイモのピューレやジュの他に、黒胡椒やロングペッパー、ジュニパーベリー、ナツメグなどを粗く砕いたオリジナルスパイスと岩塩が添えられている。

肉を一口サイズにカットし、最初はどれを付けようか、などと迷うのもまた一興。コクと品の良い苦みの詰まったジュで食べると肉のうまみが引き立ち、ピューレとジュの組み合わせならまろやかな味になる。極めつきはやはりオリジナルスパイスだろう。ナツメグの香りと胡椒のピリッとした刺激が、先に食べていたソースの味をリセットしてくれ、肉そのものを楽しませてくれる。一口ごとに違う味わい方が体験できる一皿となっている。