魅力的なマリアージュと珠玉の料理

店主との距離の近さも魅力

食前酒はシャンパーニュからスタート。ブランドブランの酸味で食欲を刺激され期待が高まったところに先附の「もろこし豆ふ」が登場する。

鮮やかな黄色が目を引く

北海道産のとうもろこし「ゴールドラッシュ」を使用し豆腐仕立てにした一品は、一口サイズながらインパクト十分。ゴールドラッシュの甘みにキャビアの塩味が良いアクセントに。あわせたお酒はこの日特別に用意された日本酒。古酒のキャラメルのような味わいがみたらし餡とマッチして、まるで第二のソースのよう。1品目から稲葉氏の料理の世界に引き込まれ、マリアージュをうっとりと堪能。

伊勢志摩時代へのオマージュ的な一品

お椀は「いちご煮」。青森県の伝統的な料理で、雲丹と鮑のお吸物のこと。アマネム時代にも鮑をよく扱ったことからお椀に取り入れたという。主役の鮑は4時間炊いて柔らかくしたものと、さっと湯がいたものの、2通りの調理法で食感と味わいの違いを楽しませる。雲丹は調味料のイメージで甘みや磯の香りを引き立て、蓴菜(ジュンサイ)が夏らしさを演出する。

トリュフの香りがふわっと広がる

お凌ぎの「トリュフ蕎麦」は名物的な一品。日本そばとポーチドエッグにしたうずらの卵、細かく削られたトリュフをよく混ぜていただく。日本酒の純米大吟醸の豊潤な香りとトリュフの香りがベストマッチ。

サラダ仕立てでさっぱりと (撮影:食べログマガジン編集部)

お造りは「鱧のたたきサラダ仕立て」。鍋や湯引きなど火を通して食べることの多い鱧だが、こちらでは皮目を炭火でさっと炙り、お造りとして提供する。しかも醤油や塩ではなく、煎り酒を泡状にしたソースと、鱧の骨から取った出汁のジュレで食べさせる。鱧の全く新しい食べ方に、虜になるゲストが続出しそうな逸品だ。日本酒ではなく白ワインと食べさせるのもおもしろい。