【肉、最前線!】

数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!

 

連載6回目に登場するのはパリに本店を構える肉ビストロ。そこで供されるフランス産の銘柄牛は一体どのような味わいなのか? 日本、アメリカ、オーストラリア、そしてフランスと、産地によって変わる牛肉の味わいについて迫ってきた。

vol.6 個性で肉を選ぶ時代!肉とフランス編

『サクレ フルール』

日本で“赤身肉”という言葉をよく聞くようになったのはここ数年のことだが、フランスで牛肉といえば、赤身。現地のシェフや食通のあいだでは美しいサシが入った日本の銘柄牛に注目が集まっているというが、日常的に食べられているのは、赤身の肉だ。

 

2001年に牛海綿状脳症(BSE)問題が起きたことにより、長らく輸入が禁止されていた欧州牛肉が解禁になったのが2013年。フランス牛の輸入に関しては月齢30か月以下という規制が設けられているもののリムーザンやシャロレー、オーブラックといった、さまざまな銘柄を提供するレストランが徐々に増えてきた。

 

アメリカ産やオージービーフとはまた違った肉質と風味が楽しめると人気も高まっているが、気軽にその味を堪能できると評判なのが、2017年4月に神楽坂にオープンした『サクレ フルール』だ。

パリのモンマルトルに本店を構えるこちらの店のイチオシは、フランス産のシャロレー牛の肩ロース。フランス最古の食肉牛を150グラム1,900円、300グラム3,600円で提供している。300グラム以上だと本場と同じく、レア状に焼かれた肉がホットストーンと呼ばれる天然石のプレートで供されるため、好みの焼き加減で食べられるというのも魅力。

シャロレー牛はほかの銘柄牛に比べて肉質が柔らかいと言われており、しっかりと焼いても肉がパサつくことなく赤身本来の豊かな旨みを楽しむことができる。上品な脂や繊細な旨みを湛え、深い余韻が残る和牛もよいけれど、あっさりとした後味で量が食べられるフランスの赤身肉も大歓迎。ソースはオニオン、ブラックペッパー、ブルーチーズの3種を用意しており味の変化を楽しめるのも嬉しい。

フランス産シャロレー牛 肩ロース(300g)3,600円

 

そして、もうひとつの『サクレ フルール』名物が馬肉や国産牛など7種のメニューを揃えるタルタル。ビストロの定番としておなじみのタルタルだが、これだけの種類を置くレストランはかなりレア。低温調理で仕上げる国産牛のクラシックタルタルは、レア風の食感がヤミツキになるとリピーターが続出中だ。

国産牛のクラシックタルタル980円

 

心までとろけるような和牛に、エネルギーがみなぎる米国や豪州産ビーフ、ヘルシーな旨みが凝縮したフランス牛と、肉も個性で選ぶ時代。新たな食肉としてフランス牛を扱うレストランが増えることで、日本の肉食文化がさらに豊かに発展することを期待したい。

撮影:石渡 朋
取材・文:小寺慶子