希少な“土佐あかうし”のおいしさを、最大限に引き出す技

希少な「土佐あかうしのロースト」。上質な肉のおいしさをそのまま堪能できるよう、味つけは塩・胡椒のみ。

メインの肉料理は「土佐あかうしのロースト」。土佐あかうしは、国内に流通する和牛のわずか0.1%という希少な品種だ。赤身のおいしさに定評があり、きめ細かい肉質で噛むほどにじんわりと旨みが広がっていく。同店ではイチボやランプを仕入れており、6,050円のコースでこのレベルの和牛を味わえるのはまさに破格といえる。

つけ合わせの野菜がたっぷりな点もうれしい。それぞれの野菜に合わせて火入れをしており、例えばニンジンは40分から1時間ほどオーブンでローストし、ジャガイモは30分から1時間ほどかけて、低い温度で茹でている。それを、ハーブなどを合わせた自家製の牛脂で炒め合わせ、さらにスキレットにのせてオーブンに入れて水分を飛ばすことで、野菜の旨みを最大限に引き出している。

自身で考案したという、独特の方法でローストしていく。

肉のロースト方法も独特だ。まず、表面を軽く焼いてから低温でじっくり火入れする。ここまでは他店と変わらないだろう。
違うのは、最後の仕上げ。赤身の旨みを邪魔することがないよう、フライパンに油は引かない。そして、焦げつかないよう、常に肉をぐるぐると動かしながら、表面にこんがりと焼き色をつけていくのだ。こうすることで、まるで炭火で焼いたかのような香ばしさが生まれ、中心部はしっとりピンク色のままに焼き上げることができる。一風変わったこの火入れのすばらしさを、ぜひ実食して確かめてほしい。

センスあふれるコースと、シェフセレクトのワインを楽しむ

京都の窯元から買いつけた、和の器を用いることが多いという。

今回は全8品のコースから4品を紹介したが、一品一品のクオリティの高さは目を見張るものがある。スペシャリテの「テットドコション」と、メインの「土佐あかうしロースト」は、基本的には固定メニューとなっており、自信を持って提供できる定番の2品があるからこそ、食材の組み合わせの妙で楽しませる“遊び”を取り入れた料理を織り込むことができる。そんな、コースを通したバランスのよさにもシェフのセンスが光っている。

ワインはフランスだけでなく、ニューワールドや日本ワインも揃えている。川﨑さんのおすすめは「レ・オー・ド・ラランド シテ カルカッソンヌ 2018」ボトル4,400円。

料理に合わせるワインもシェフの川﨑さん自身がセレクトしており、グラスは880円、ボトルは4,400円から揃う。ペアリングも用意されており、シャンパーニュ1杯、ワイン3杯、食後のコーヒーか紅茶がついて4,950円と、こちらも非常にお得な価格設定だ。

「皿のなかに忍ばせた、香りや食感でゲストに驚きを与えたい」

オーナーシェフの川﨑康志さん。シェフとの距離が近いのも「クロデグルメ」の魅力の一つ。

物心ついたころからシェフになるのが夢だったという川﨑さん。高校卒業後に辻調理師専門学校で学び、フランス校に留学して星つきレストランでの研修も経験した。「パーク ハイアット 東京」に就職後、23歳で再び渡仏。パリの人気店を食べ歩いた上で、最も心惹かれた「クロデグルメ」に履歴書を持って飛び込み、2年ほど腕を磨く。その後も一つ星の「マニョリア」、二つ星の「ラ・セーヌ」で経験を積み、2番手のシェフとして「アクラム」に入り、店をミシュランの一つ星店へと導いたのちに帰国した。
日本でもさまざまな店で研鑽を積み、36歳で自身の店「クロデグルメ」を白金台に開いた。

予約すればランチタイムの利用も可能で、お子様連れも歓迎。おむつの交換台も用意しているそう。

川﨑さんは「一皿のなかでも、香りや食感に変化をつけることで、ゲストに驚きを与えられるよう心がけています。またフランスで学んだのは、食事はあくまで楽しむ場だということ。記念日でも普段使いでも気軽に立ち寄ってほしいですね」と話す。

本場仕込みのフレンチを気負わずに堪能でき、お財布にもやさしいとあれば注目が集まるのも当然だ。まずは一度、足を運んでほしい。

【本日のお会計】
■食事
・本日のフレンチフルコース 6,050円
■ドリンク
・シャンパーニュ 1,210円
・白ワイン 880円
・赤ワイン 880円
合計 9,020円

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2021年5月7日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・文:梶野佐智子(grooo)
撮影:松本考平