とんかつの人気店100店がわかる「食べログ とんかつ 百名店 2021」の中から、“タベアルキスト”として知られ、昨今のとんかつブームの火付け役でもある「東京とんかつ会議」のメンバー、マッキー牧元さんが注目店などを解説します。

教えてくれる人

マッキー牧元
株式会社味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチ、エスニック、スイーツに居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ・テレビ出演。とんかつブームの火付役とも言える「東京とんかつ会議」のメンバー。テレビ、雑誌などでもとんかつ関連の企画に多数出演。

移転後初選出の名店「とんかつ成蔵」

初選出の注目店として真っ先にマッキーさんの口から飛び出したのは、南阿佐ケ谷の「とんかつ成蔵」。グルメ業界を揺るがせるニュースとなった、高田馬場からの移転後、今回あらためて初選出となった一軒です。

「成蔵の代名詞といえば、白いとんかつ。これは、糖度の低いパン粉を使い、低温から徐々に温度を高めて揚げていく手法なのですが、高度な技術もさることながら時間がかかるため、ほかの店ではなかなかマネできない独自性があります」(マッキーさん/以下同)

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「とんかつ成蔵」のTOKYO-X 特ロースかつ   出典:bottanさん

唯一無二とも言える白いとんかつ。これが、移転に伴いさらに進化したとマッキーさんは言います。

「衣を付ける際に余分な細かい衣を振り落とすことで、中ぐらいの衣を多くまとうとんかつになりました。これにより、いっそうふわっとした軽やかな食感に。また、油の温度をさらに低くしたことで、より美しい白色のとんかつになったんです。また数ステップ高い次元のおいしさになった『とんかつ成蔵』、やはり外せませんね」

西荻窪のニューフェイス「とんかつ けい太」

次に挙げてくれたのは、2019年11月にオープンした西荻窪の「とんかつ けい太」。とんかつ店らしくない内装や雰囲気、白い衣のとんかつなどに「とんかつ成蔵」の面影を感じたそうです。

「衣も肉もおいしくて、新しめのとんかつ店の中では特にハイクオリティだと思いました」

むすぬ
出典:むすぬさん

味で特筆すべきは、肉と油の香りのよさだとか。

「肉質はきめ細かでほのかに甘く、ラードを使った揚げ油はゆるりと甘い香りを膨らませながら溶けていく。この、肉の脂と揚げ油の双方の香りが響き合う、素晴らしいとんかつでした。ご飯、豚汁、お新香も上等ですし、さらに言えば海老フライもおいしかったです」

四谷三丁目「車力門 ちゃわんぶ」

3軒目は、リニューアルとともに業態変更となった、四谷三丁目の「車力門 ちゃわんぶ」。もともとが割烹料理店というだけある繊細な仕事ぶりは健在で、計算し尽くされた美しいとんかつが提供されています。

「『車力門 ちゃわんぶ』のとんかつは衣が均一に揚げられて、なおかつ等間隔の細い幅でカットされているのが特徴。また、とんかつの名店はラードで揚げるのが一般的ですが、ここは米油なんです」

 食いだおれリーマン
細い幅でカットされた「車力門 ちゃわんぶ」のとんかつ   出典: 食いだおれリーマンさん

その理由は、同店のイチオシが300gと厚くて大きいサイズの豚肉を使ったとんかつだからではないか、とマッキーさん。

「分厚いとんかつを食べても重くならないよう油切れのよさを考えて、カットの幅は薄く、そして軽やかな米油を使っているのではないかと。カットの幅が狭いと、肉と衣のバランスが悪くなりがちですが、同店の場合はそれがなく、むしろ肉自体の味を濃く感じられてちょうどいい。ご飯、味噌汁、キャベツ、お新香などもさすがのおいしさですし、カレーで“味変”できるのもうれしいですね」