独自のドリンクも魅力がいっぱい

“鶏焼売”同様、せっかくならドリンクも同店独自のものを味わいたい。そんな客におすすめなのが、カクテルの「ドラゴンハイボール」。メニュー表に「うちのはヒト味違います!」と記され、わくわく感も高まっていく。一般にドラゴンハイボールといえば、紹興酒を炭酸水で割ったものだが、同店は炭酸水の代わりにジンジャーエールを使用。紹興酒の甘みとジンジャーエールの辛みが巧みに溶け合い、絶妙なおいしさを作り上げている。

さらに「虎ノ門ジンソーダ」も、ぜひとも体験したい1杯だ。これは店内に蒸留所があることで人気の居酒屋「虎ノ門蒸留所」のこだわりのジンを用いたジンソーダ。スッキリした飲み口で、“鶏焼売”との相性もバッチリだ。

「ドラゴンハイボール」550円(左)と、「虎ノ門ジンソーダ」825円(右)。

サク呑みにぴったりなお手軽サイズ

「鶏焼売」だけでなく、脇を固めるメニューも充実しているのが同店の魅力である。台湾夜市の名物料理として、昨今、日本でも知名度が上がっている“鶏排(ジーパイ)”。 顔のサイズよりも大きな鶏の唐揚げとして知られるが、同店では1人1個ずつ食べてもらおうとポーションを小さくし、紙袋に入れて屋台感覚の料理として提供する。

台湾では鶏ムネ肉の使用が一般的だが、同店では弾力のあるモモ肉を採用。ミックススパイスをまぶしてキャッサバ粉の衣をつけ、サクサク香ばしく揚げている。スパイスの辛みが口の中にほどよい余韻を残し、食べ終わってもついもう1個食べたくなる。そんな誘惑にかられる一品だ。

「ヤン!チキ!」1個198円。小ポーションで食べやすいのもうれしい。

麻婆豆腐は“赤”と“白”の2種から選ぶ

台湾料理と中華料理がともに楽しめる同店だが、やはり誰もが慣れ親しんだメニューは人気が高い。その代表格が麻婆豆腐で、“赤”と“白”の2種から選ぶことができる。“白”は小米辣(青唐辛子の酢漬け)や山椒で辛みをきかせた、「白い麻婆豆腐」。

一方、“赤”は「真っ赤な麻婆豆腐」で、明らかに辛そうな見ばえである。だが、意外や意外。レンゲを口に運ぶと、思ったほど辛くはない。ただ、油断していると山椒とラー油の辛さが、じわじわ後から追っかけてくる。この辛さの“タイムラグ”こそが、同商品の真骨頂である。また、茶碗からこぼれる盛りつけも、ちょっと得した気分になれてうれしい。

「真っ赤な麻婆豆腐」792円。辛さの中に旨さがあり、旨さの中に辛さがある。

酒のすすむスパイシーなポテサラ

大衆酒場といえば“ポテサラ”が欠かせないが、同店ももちろん魅力あるポテサラを揃えている。それが「半熟卵のポテトサラダ」で、酒がグビグビすすむスパイシーな味つけが特徴。間違いなくこれは、呑兵衛を納得させる“大人”のポテサラなのである。

黄色味を帯びた見ばえはマスタードを強くきかせた証で、山椒のピリリとした主張も分かりやすい。ごつごつしたジャガイモの食感も心地よく、カリカリしたフライドオニオンのアクセントも楽しい。さらに、てっぺんには半熟卵がドンとのり、箸を入れるや濃厚な黄身がトロ~ッと流れだし、ポテサラにマイルドな味わいを加えてくれる。反面、半熟卵にもしっかり山椒がふられ、強く記憶に残るスパイシーなおいしさに呑兵衛も満足する。

酒のつまみにぴったり。スパイシーな「半熟卵のポテトサラダ」528円。

“ランチ”という名の“つまみセット”

最近、酒場機能を備えた“呑める大衆食堂”が人気だが、同店はその逆を行く、ごはんも食べられる“進化系”大衆酒場で、自店のことを「酒食堂(しゅしょくどう)」と位置づけている。昼はランチ営業も行っており、中でも人気が「台北ルーロー定食」。これは単品で提供する、「台湾夜市のルーロー飯」「鶏焼売」「きゅうりと葱のさっぱりザーサイ」に中華スープをつけ、定食仕立てにしたもの。

「台湾夜市のルーロー飯」は甘辛い味つけで、ごはんメニューだが酒のつまみに最適。また、「鶏焼売」「きゅうりと葱のさっぱりザーサイ」は、そもそも酒のつまみである。ゆえに、アルコールも一緒に頼めば、“ランチ”という名の“つまみセット”が誕生。これは、呑兵衛にはたまらないものがある。

「台北ルーロー定食」1,100円。アルコールも一緒に頼めば、“つまみセット”に早変わり。

サク呑みしちゃえば、ええヤン

店頭の看板には、「愛し合えば、ええヤン」「飲んじゃえば、ええヤン」と書かれているが、「酒食堂」の同店は、まさに呑んでよし、食べてよし、サク呑みしてよしの“オールラウンド酒場”である。昼も、夜も、「飲んじゃえば、ええヤン」「食べちゃえば、ええヤン」「サク呑みしちゃえば、ええヤン」と客を温かく迎えてくれる。「ヤンヤン飯店」とは、そんな懐の深い店なのである。

店頭看板の誘い文句に、通行人も思わず足を止める。
スタッフの菅 和真さん(左)と、榎本尚也さん(右)。

【本日のお会計】
■食事
・鶏焼売 2個374円
・ヤン!チキ! 1個198円
・真っ赤な麻婆豆腐 792円
・半熟卵のポテトサラダ 528円
・台北ルーロー定食 1,100円
■ドリンク
・ドラゴンハイボール 550円
・虎ノ門ジンソーダ 825円
合計 4,367円

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年4月15日)時点の情報をもとに作成しています。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

取材・文:印束義則(grooo)
撮影:玉川博之