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〈2020 食通が惚れた店〉
新型コロナウイルスの流行により、飲食店にとっては大きな危機を迎えた2020年。でも、外食シーンの火は消えない! こんなときこそ、おいしいものを食べて元気になり、飲食店を応援したいものです。
そこで、グルメ情報を熟知した有識者にアンケートを実施。「最も印象に残った店」「2,000円以下のお手軽グルメ」「2021年にブレイクしそうな店」をうかがいました。
今回は、食べロググルメ著名人で、タベアルキストのマッキー牧元さんにお答えいただきました。
教えてくれる人
マッキー牧元
株式会社味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチ、エスニック、スイーツに居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ・テレビ出演。「味の手帖」「料理王国」「食楽」他、連載多数。日本鍋奉行協会会長。著書に「東京・食のお作法」文藝春秋刊、「出世酒場 ビジネスの極意は酒場で盗め」集英社刊ほか。
今年のベストレストラン
Q. 2020年、最も印象に残った飲食店を教えてください
A. 「片折」です
金沢「片折」の松茸のお粥と、松茸の炭火焼。今まで数多くの松茸料理を食べてきたがこれだけピュアな味わいは初めて。
お粥は、昼に取ったばかりの松茸を薄く薄く、手早く刻み、直ちに粥にして運ぶ。汚れなき、澄みきった、人間が触れてはいけない香りが揺らめいて、鼻腔の襞を撫でる。それは、舌と精神を引き締め、洗い、浄化し、ゆっくりと心を溶かしていった。
松茸の炭火焼は、とれたての松茸を縦に切り、包丁目を細かく入れる。然る後、断面を上にして、炭火の上に置く。松茸を凝視しながら、優しく触り、何度も何度も加減を確かめながら、慎重に慎重に焼いていく。最後に塩をほんの少しふって、皿に盛られた。
表面に透明な露がにじみ出て、キラキラと輝いている松茸をそっと手で持ち、傘の部分からかじりついた。松茸の純粋なエキスが、舌を流れていく。
これは朝露である。森羅万象、なににも汚されない、淡い淡い甘露が流れ、舌を清めていくのであった。