誰でも気軽にフレンチをつまめる! 原宿「ラ コレール」

「タルトフランベ」って知っていますか? フランスのアルザス地方やドイツ南部で作られているピッツァに似た料理です。日本人にとってのそばくらいアルザスの人々には身近な存在ですが、日本ではまだまだ知られていないよう。

そのおいしさを伝えたいと、フランス料理店のシェフが原宿に「タルトフランベ」のお店をオープン! 早速チェックしてきました。

原宿で“アルザス気分”に浸れる店ができた!

原宿駅から徒歩3分の地に、食に特化した商業施設「JINGUMAE COMICHI」が誕生しました。建物をひとつの街に見立て、18軒もの飲食店が小径を挟んで連なっています。

その中で、日本にいながらにして“まるでアルザス”と、注目されているのが「La colère(ラ コレール)」です。

原宿駅竹下口から徒歩3分とは思えない眺望の良さ!

店内はアルザス旗の色である赤と白を基調にしており、シェフの加瀬史也さんがフランス修業時代に購入したアルザスのシンボルである2つのコウノトリの置物がお出迎えしてくれます。

繊細かつ完璧なバランスの「タルトフランベ」

「沖縄やんばるベーコンと玉葱のタルトフランベ」900円

加瀬さんは、「The Tabelog Award」でBronzeを獲得し、「ミシュランガイド東京」では一つ星に輝く外苑前「オルグイユ」のオーナーシェフ。その姉妹店として、2020年9月に「ラ コレール」をオープンしました。

メニューには加瀬さんがフランスでの修業時代にアルザスで食べたおいしいものが並べられており、その筆頭が「タルトフランベ」。見た目は薄焼きピッツァのようですが、似て非なるもので、薄いパン生地の上にフロマージュ・ブランのソースを敷き、ベーコンや玉葱などをのせてオーブンで焼いた料理です。

ビストロでは前菜として食べるものなので食感も味わいも本当に軽く、ひとりで1枚なんてあっという間に完食してしまいます。

仕上げはバーナーで軽く焦げ目をつけます

「アルザスでは生地を伸ばしてソースと具材をのせてパッと焼くだけの店が多いのですが、そうすると食べているうちに生地がソースと具材の水分を吸ってベチャッとしてしまいます。だから、うちでは生地だけで7割ほどしっかり焼いて、それから温めたソースと具材をのせて残り3割をオーブンで焼き、さらに最後にバーナーで軽く焦げ目をつけて仕上げています」と加瀬さん。

こうすることで生地はパリッと焼け、最後までできたての味のままおいしく食べられるのです。

加瀬さんにとってタルトフランベは、修業していた「カンテサンス」での初めての賄いで作った思い入れのある料理。それから、どうしたらもっとおいしくなるか自問自答しながらこの独自の焼き方を完成させ、とうとう自身の店「オルグイユ」でもひと品目に出す「そば粉のタルトフランベ」として常に存在するかけがえのない料理となりました。

見た目はシンプルですが調理法には手間暇を惜しまない!

気になる味はというと、まずは生地の食感がパリッとしてものすごく軽いことに驚きます。その後から、爽やかな酸味を持つフロマージュ・ブランとともにシャキシャキして甘みのある玉葱、ジューシーで塩気と旨みのあるベーコンがたたみかけるように喉を通っていきます。

こんなにシンプルな料理なのに、なんて繊細かつ完璧なバランスの味わいなのでしょうか!

「生地の焼き方は完成しているので、これから具材を進化させていきます」と加瀬さん。フロマージュ・ブランにギリシャヨーグルトを入れて濃度と酸味を立たせたオリジナルソースに、具材は岩手県八幡平のマッシュルームや佐賀県有明の青海苔を使ったりと、伝統的な味に新たな感性をまとわせます。

ワインに合う、お手軽な珠玉の料理も!

「仏産 フォアグラと栗のテリーヌ」1,000円

アルザスではワインを食中酒と捉えているので、サラリと飲めるものからゆっくりと味わえるものまでバラエティ豊かに揃えています。価格もグラス600円〜とリーズナブル。

そんなワインたちのために用意した料理は、加瀬さんのアイデアと技が冴え渡る逸品ばかり。おなじみのフォアグラのテリーヌも、グラッセのようにねっとりした栗と重ねて層にし、さらにペーストした栗を添えた“栗のW仕立て”。甘みと深みのある濃厚なコクと旨みは、ワイン好きにはたまらないはず!

「国産 豚頰肉と鹿児島 赤土ジャガイモと野菜のベッコフ」1,000円

こちらもアルザスの伝統的な蒸し煮料理「ベッコフ」を加瀬流にアレンジしています。

焼いた豚頬肉と酒を真空パックにして、鍋の湯の中で火入れしていくと肉から出る出汁だけでやわらかく煮あがり、味が肉自体に留まってくれます。さらに、そこから出た出汁を冷やし固めて、2層に分かれた脂と旨みの、旨みだけをスープにし、味を調えてから肉を戻して再び真空パックにします。

その肉をオーブンで焼いた野菜とココットに入れ、蓋をして周りをパン生地で密閉して温めれば出来上がり。小さな器の中に閉じ込めた香りと味は手間暇かけた分、喜びも大きいものです。

ランチからディナーまでいつでもサクッと立ち寄れる新しいファストフード

写真右の半個室風のテーブル席は、子供と一緒に食事ができるようにとローテーブルに!

この店の何がうれしいって、月・水・木・日は11:30からラストオーダー21:30まで、金・土は11:30から22:00までと、ずっと通しで営業していること。

お腹いっぱいになるまでのガッツリ飯も、ドリンク1杯とつまみでサク飲みするも良し! いつ来ても自由気ままに楽しめるのが魅力です。周りもそういった店が並んでいるので、メニューはギュッと品数を絞っています。

「どうしたらおいしくなるかという新しい調理法を常に考えてます!」と話す加瀬さん

「タルトフランベ」ってこんなにおいしいのに、日本ではあまり知られておらず残念に思っていたと言う加瀬さん。流行に敏感な若者から大人までがお気に入りを見つけて発信していく原宿でなら、絶対に「タルトフランベ」が合うはずだ!と出店を決めたそう。

ここで楽しめるのは“予約を取らずにいつでも来られる、予約困難店のシェフが作るリーズナブルで他にはないもの”。きっと新たなファストフードとして確立していくに違いありません!

※価格はすべて税抜
※予約はSNS(Facebook、Instagram)にてご連絡ください

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※本記事は取材日(2020年10月20日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・文:高橋綾子
撮影:大谷次郎