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〈サク呑み酒場〉
今夜どう? 軽〜く、一杯。もう一杯。
イマドキの酒場事情がオモシロイ。居酒屋を現代解釈したネオ居酒屋にはじまり、進化系カフェに日本酒バー。どこも気の利いたツマミに、こだわりのドリンクが揃うのが共通点だ。ふらっと寄れるアフター5のパラダイスを、食べログマガジン編集部が厳選してお届け!
エー・ピーホールディングス×八海醸造がコラボした「ヤオロズクラフト」
鴨とワインの「Na Camo guro(ナカモグロ)」、焼き鳥とワインの「希鳥(キチョウ)」や「焼鳥つかだ」。そして鮮魚と日本酒が楽しめる「なきざかな」など、様々なスタイルの飲食店を展開する株式会社エー・ピーホールディングス(以下AP)と、新潟の八海醸造がコラボした和バル「ヤオロズクラフト」が2020年7月10日にオープンした。
五反田駅から徒歩2分の立地にある「ヤオロズクラフト」、通称「ヤオクラ」。ここのウリはなんといっても、日本酒“八海山”で有名な八海醸造の“RYDEEN BEER”が、ビンではなく“樽”からグラスに注いで飲めること。もちろん提供されるツマミにもこだわりがある。この店のブランドプロデューサー・深山佳嗣さんがAP自慢の食材で、RYDEEN BEERと相性のいいメニューを構成し、料理長の漆原健亮さんが素材の魅力を活かすべく試行錯誤を繰り返した料理が並んでいるのだ。
定番プラス季節限定のRYDEENが全種類そろっている店
ここでRYDEEN BEERについてもう少し語りたい。新潟の八海醸造が20年造り続けた“八海山泉ビール”。そのノウハウをリブランディングし、さらに新潟の名水にも選ばれた硬度2.4程度の極軟水「雷電様の清水」を仕込み水に使ったのがRYDEEN BEERだ。クラフトビールは味の個性が強すぎて苦手という人もいるかも知れないが、このビールはコクがあってキレもあるのに、クセが少なくどんな料理ともぴったりあうのが特徴だ。
種類は定番のヴァイツェン(Weizen)、アルト(Alt)、ピルスナー(Pilsner)、インディアペールエール(IPA)の4種類にプラス、季節限定の商品が登場する。「ヤオクラ」では、全種類が味わえる。新潟にある八海酒造の直営店とここだけ!
柱のコックをひねるとビールが出てくる!
店内は1階と2階にわかれている。1階はゆったり配置されたテーブルと、カウンター席。天気のいい日はテーブルを外に出したり、時には立ち飲みスペースになったりと、その場に応じてレイアウトが変わる。一方、2階はオープンキッチンがあり、テーブル席だけでなくソファー席もあるので、少人数でゆっくり飲むシーンにおすすめだ。
1階のカウンターの奥に注目しよう。壁のように見える大きな柱から飛び出た7つのコック。「おや?」と思っていると、ビールのオーダーが入った。するとスタッフがそれをひねって、ビールを注ぐ。「サーバーがないのに、なぜビールが出てくるのか?」と疑問に思って聞いてみると、実は柱の中が冷蔵庫になっていて、そこにビールの樽が置いてあるそうだ。すっきりした空間で、ゆっくり寛いでもらうための工夫がここにもある。
まずはビールと「さばたくサンド」
前置きが長くなったが、ビールと料理をさっそく楽しもう。前菜がわりに手軽に食せる「ヤオクラ特製 さばたくサンド」と、酸味が少なくクセがあまりないRYDEEN BEERのヴァイツェンをチョイスしてみた。
さばたくサンドはこの店の定番メニューのひとつ。酢で軽くしめた鯖と、薄くスライスしたタクアンをパンで挟んだサンドウィッチだ。鯖、タクアン、パンの3つの食材を、大葉がうまくまとめている。バリバリと食感を楽しみながらビールをゴクリ。五感が刺激され、眠っていた胃袋が呼び起こされる。
72時間かけて熟成させた黒さつま鶏をじっくり焼き上げる逸品
この店にきたら、絶対に頼むべき料理のひとつ「黒さつま鶏のパリパリジューシーチキン」。契約農家で育てられた黒さつま鶏の雌を、鹿児島で72時間熟成させ、さらに仕込みに24時間かける。その肉を焼くと脂に火が入り、皮の表面が香ばしくパリパリに仕上がる。しかし肉には火がほどよく入っているので、ふっくらジューシー。皿にはモモとスネ 、両方が盛り付けられているのでぜひ弾力、脂の違いを食べ比べてほしい。
「黒さつま鶏のパリパリジューシーチキン」がきたところで、ビールもそろそろおかわりの頃。次はRYDEEN BEERのピルスナーで決まりだ。八海山の“泉ビール”の頃よりホップの量が3倍になって、さらにガツンとした飲みごたえのあるピルスナーは、鶏の肉汁とマッチする。
ピンク色のサーモンと軽い衣の相性がバッチリ
次は新鮮なサーモンのまわりに、軽い衣をつけてカラッと揚げた「サクサク! サーモンのレアかつ」。身は半生状態。でも衣はサクサク。「揚げ物はちょっとヘビーだからパス」と思っている人も、このレアかつはさっぱりしているので、一皿ペロリといけそうだ。
ビールもおかわりといきたいが、3杯目となるとちょっとお腹も苦しい。ここは小休止の意味もこめて、シルキーな泡を楽しむ「ゆきざる」を頼んでみよう。「ゆきざる」はビールの“泡”を楽しむためのビール。チェコでは「ムリーコ」と呼ばれていて、ビールを楽しみながら、その一方でチェーサーがわりに飲む人が多い。運ばれた直後のグラスは真っ白。でもすぐに飲まないと、どんどん泡が消えてしまうぐらい繊細な飲み物なので注意しよう。
白子の麻婆には、IPAで決まり!
最近「ヤオロズクラフト」に登場し、人気を博している料理が「季節の麻婆」。冬の時期は、麻婆の中に、真鱈の白子がたっぷり入っている。ピリッと山椒がきいて、少し舌がしびれるが、そこに白子をプラスするとクリーミーな食感とコクが口の中で広がる。
麻婆にあうビールとなれば、迷わずインディアペールエール(IPA)を選択したい。一般的なIPAは高いアルコール度と、ホップが強めなので“苦い”と思われがちだが、RYDEEN BEERのIPAは苦さもあるが柑橘系の香りが豊かでバランスがいい。パンチのある料理にあわせると、相乗効果でそれぞれの味を引きたたせ、ビールもさらにすすむ。
出汁醤油に48時間つけこんだ黄身が決め手のTKG!
そろそろシメに入ろう。「ちょっとだけTKG」は、信州八重原産のコシヒカリ「謙太郎米」をふっくら炊き上げ、その上に魚粉をかける。卵はAPブランドのオリジナルで、千葉県香取市の契約農家から取り寄せている。箸でもつかめる黄身を、出汁醤油につけること48時間。しっかりと味がしみこんだ、つやつやの卵をくずしながらご飯とからめて食せば、思わず笑顔になってしまうシメ飯だ。
作り手の心意気が感じられる、普段使いのできる店
店名の「ヤオロズクラフト」の“クラフト”は、“作り手”を表している。RYDEEN BEERを仕込む職人、鶏や野菜を手塩にかけて育てる生産者。そしてこの店のスタッフ、それぞれが「おいしいものを提供したい!」というクラフトマンシップを掲げていることに由来している。
たとえばこの店のビールのうまさは、ビールそのものの味の良さもあるが、それだけではない。まずグラスを念入りに洗浄し、冷蔵庫で冷やす。オーダーが入ると、大きなボウルに氷をいっぱい入れる。そしてその中に、グラスを横にして入れ、全体が冷えるように回転させていく。この工程をプラスすることで、泡がさらに細かくクリーミーになり、ビールののど越しがよくなる。このひと手間を惜しまない、少しでも上質なものを提供したいというこだわり。これがこの店の目指すクラフトマンシップだ。
作り手の心意気がいろいろなところに感じられる「ヤオロズクラフト」。 「おいしいビールが飲みたいな」と思ったときに、フラッと立ち寄れるような“普段使い”のできる店である。
【本日のお会計】
■食事
・ヤオクラ特製 さばたくサンド 490円
・黒さつま鶏のパリパリジューシーチキン 中 1,280円
・サクサク! サーモンのレアかつ 690円
・季節の麻婆 白子入り 980円
・ちょっとだけTKG 350円
■ドリンク
・RYDEEN BEERヴァイツェン 中グラス 600円
・RYDEEN BEERピルスナー 中グラス 600円
・ゆきざる 300円
・RYDEEN BEERインディアペールエール 中グラス 600円
合計 5,890円
※価格はすべて税抜