総理大臣も変わり、様々な物事が動き出した9月。仕事で京都へ行ったときに出会った新進気鋭のビリヤニ専門店、シックな雰囲気のスパイス料理バーが二毛作でランチにカレーライス専門店をオープン、涼しくなってくると食べたくなるカレーうどんのなかで僕が最も足繁く通うお気に入りのお店、伝説のカレーシェフが引退宣言を撤回して居酒屋で振る舞うカレーに再会。以上4カレーのご紹介でした。

まだまだ続くコロナ禍ですが、だからこそ始まったお店、復活したカレーもあります。カレーで元気を出していきましょう!

【第1週のカレー】カレーや副菜でアレンジも楽しめる! ビリヤニ専門店が京都に誕生 インディアゲート」

インド周辺諸国の料理に「ビリヤニ」というものがあります。スパイス炊き込みご飯と言えば分かりやすいでしょうか。インド料理店やパキスタン料理店ではビリヤニを看板メニューにするお店も増えてきました。そして、日本人による個性派ビリヤニ専門店も、少しずつですが全国的に登場しはじめています。今回ご紹介するのは、京都・烏丸で2020年7月31日にオープンしたばかりの新進気鋭の日本人シェフによるビリヤニ専門店「インディアゲート」です。

こちらのマスターはミュージシャンで、音楽で全国行脚の際に楽しみにしているのが食べ歩き。中でもカレーは特に多くのお店を食べ歩き、いつしか自分でも作るようになり、それが好評だったことから間借りカレー「GATA’s キッチン」をオープン。こちらも人気となり、遂に独立店舗として「インディアゲート」をオープンさせたのです。

メニュー構成はビリヤニが3種。「チキンビリヤニ」「マトンビリヤニ」ときて、「鯛出汁チキンビリヤニ」という創作系もあります。時折、限定メニューとして沖縄そば風ビリヤニなど様々なビリヤニを味わうことができる、まさにビリヤニ専門店。ハーフサイズでも注文でき、ビリヤニのあいがけならぬあい盛りも可能。さらにはカレーもあってカレーの一口トッピングも可能。副菜のトッピングもあり、組み合わせ次第で様々な楽しみ方ができるのが良いですね。

「鯛出汁チキンビリヤニ(ハーフ)」800円と「マトンビリヤニ(ハーフ)」900円(この日はマトンキーマビリヤニでした)のあい盛りに、「麻婆豆腐」200円をトッピング。さらに日替わりカレーから、一口サイズの「鯖キーマとミョウガの冷やし出汁カレー」400円という贅沢なオーダーとなりました。

「鯛出汁チキンビリヤニ(ハーフ)」と「マトンビリヤニ(ハーフ)」のあい盛りに「麻婆豆腐」をトッピングし、「鯖キーマとミョウガの冷やし出汁カレー」をプラス

まず鯛出汁チキンビリヤニ。鯛の上品な旨味とチキンのしっかりとした旨味が喧嘩せずに調和した状態でバスマティライス(インドの長粒種のお米)にしっかりと染み込み、ビリヤニでありながら日本の炊き込みご飯的でもあるという面白さ。これはほかでは食べられないおいしさです。

マトンキーマビリヤニはオーセンティックなスタイル。マトンビリヤニは数あれど、マトンのキーマのビリヤニとなると出しているお店は途端に少なくなるのですが、このマトンキーマのビリヤニを出しているお店は僕の知りうる限り当たりと思えるお店ばかり。こちらのお店も大当たりです。これに麻婆豆腐をつけるのはどうなるか見当がつかなかったのですが、確かにこれは合います。かなりドライな麻婆豆腐なのでパンチのあるマトンにも負けず、鯛出汁チキンと合わせればともすると上品すぎるビリヤニに重厚感を与えてくれるような存在感。素晴らしい!

鯖キーマとミョウガの冷やし出汁カレーは名前の通り冷たいのですが、だからこそサッパリとして爽やかな旨味で、このパンチ力ありすぎるビリヤニあい盛りのお供として完璧なカレーとなりました。

写真左の小皿から時計回りに、「ムラサキニンジンとダルのパチャディ」「ナスのマスタードシード炒め」「激辛サルサチャトニ」、一口カレー「チキンカレー」「角煮ビンダルー」、「チキンビリヤニ(ハーフ)」

また、ビリヤニとカレーと副菜という頼み方もできます。例えば「チキンビリヤニ(ハーフ)」800円に、一口カレーの「角煮ビンダルー」300円と「チキンカレー」200円、さらに副菜から「ナスのマスタードシード炒め」100円、「激辛サルサチャトニ」100円、ヨーグルトやココナッツやスパイスで野菜を和えた南インド料理である「ムラサキニンジンとダルのパチャディ」100円を合わせて、ミールス(南インドの定食)のようにいただくこともできます。

ビリヤニ専門店というとシンプルなものになりがちなのですが、選び方、合わせ方次第で豪華にも華やかにもできるというメニュー構成。色々あってそれが全ておいしいという素晴らしさ。

マスターに何故ビリヤニ専門店にしたのか聞いてみると、「食べ歩きしている中でおいしいカレーのお店は全国にたくさんあり、京都でも好きなお店はいくつかあるんですが、ビリヤニのお店となると京都ではまだほとんどなくて。だったら自分で作ってみようと思ってビリヤニ専門店にしたんです。でもカレーも食べたいから、カレーもつけて。あと、食べ歩きするときってはしごしたくなっちゃうじゃないですか。そんなときにビリヤニだと食感が軽いので意外と空腹じゃなくても入っちゃうんですよね。フワっとした食感を大事にしたくて、お米も厳選してインディアゲートという銘柄にしているんです。このお米が好きすぎて、店名にしちゃいました」とのこと。

確かにビリヤニは米料理です。だからこそ米にもこだわる。そしてそれを店名にしてしまう。自ら食べ歩いてきたからこそ、普通のカレーのお店ではなく、このスタイルにしたと。そのサイドストーリーも実に興味深いですね。お店は基本的に16:00までの営業ですが、16:00からは売切次第終了のビリヤニ弁当のテイクアウト販売となるそうです。

全国でおいしいものを食べ歩いてきたからこそ辿り着いた個性派ビリヤニ。まだ新しいお店ですが、関西のビリヤニ界を牽引していく存在になりそうな、全国的に見ても期待大のルーキーです!

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2020年8月30日)時点の情報をもとに作成しています。

【第2週のカレー】昼はカレー、夜はスパイス料理に舌鼓。神楽坂の人気バーが手がけるカレー店が始動!「クラフト カレー ガンデン」ナオライ」

東京・神楽坂にある落ち着いた雰囲気のバー「ナオライ」。あまりお酒を飲まない僕ですが、こちらのお店にはちょくちょく足を運んでいます。何故なら、バーでありながら本格的なカレーやスパイスを使ったおつまみ、お酒があるからです。

カレーはライスと一緒にも食べられますし、ハーフサイズのおつまみスタイルでもいただくことができます。深夜まで営業しているということもあり重宝していたのですが、コロナ禍で営業時間を短縮せざるを得なくなってしまったのはこちらのお店も同様。そんな中だからこそ、こちらのお店は元々力を入れていたカレーにさらなる力を注ぎ出しました。

ランチタイムに二毛作的に「クラフト カレー ガンデン」というお店をスタートさせたのです。バータイムはあくまでお酒がメインということでシンプルなのですが、ランチタイムはカレーのお店ということでその見た目もパワーアップ! 「贅沢ポークのクラフトカレー」1,050円に「キーマカレー」250円をトッピングしてあいがけスタイルでオーダーしました。

「贅沢ポークのクラフトカレー」に「キーマカレー」をトッピング

カレーとご飯にサラダと副菜が一緒に盛り付けられてゴージャスな見た目。僕、ここのサラダのドレッシングがとても好きで、バータイムに行ってもよく頼むんです。それが一皿になっているというのは実にお得ですよ。

副菜も凝っていて内容は月替わり。今月はココナッツで仕上げたカボチャのポリヤル(スパイス炒め)、玉ねぎのアグロドルチェ(フェンネルの香りのピクルス)、オクラとゴーヤのマスタードアチャール(スパイス漬け)という組み合わせ。

メインのカレーは、欧風カレーとスパイスカレーの間くらいの着地点でオリジナリティあるおいしさ。しっとりとした舌ざわりとトマトの酸味がフルーティーです。これにチャーシューのようなポークがのるのですが、豚肉好きにはたまらないおいしさですね。

キーマは牛と豚の合挽肉を使用。ココナッツミルクが利いていて、また違う角度の味付けになっているので変化があって楽しいです。どちらのカレーにも言えるのは、スパイスのみならずハーブ感も大切にしているということ。よくあるスパイスカレーともまた違う味にまとまっているのは、このあたりがポイントなのでしょう。

副菜もそれぞれシンプルなスパイス使いで素材のおいしさを引き立てる仕上がり。そしてどちらかというと濃い目なカレーに対して、さっぱりとした副菜なのでトータルバランスが良いです。

女性に人気が出そうなカレーだなと思っていたら、「お昼は女性のお客様も増えたんです」と店主さん。そうでしょうそうでしょう。シックな雰囲気のバーで、落ち着いて美しくてヘルシーなカレーが食べられるのですから。カレーはテイクアウトも可能とのことですが、テイクアウトだと多少内容が変わる可能性があるので予めご了承くださいとのこと。

「デミグラス風味のドライカレー」

ランチタイムのパワーアップも素晴らしいですが、バータイムも相変わらずの楽しさです。バータイム限定の「デミグラス風味のドライカレー」1,320円も濃厚で個性あるおいしさですし、「ミルクのジン」990円という変わり種のお酒も楽しめます。

「ミルクのジン」

そして、リキュールをかけた「ジェラート」880円がまた最高! お酒は自分で選べるのですが、マスターおまかせでも頼めます。

「ジェラート」

今回はおまかせで頼んでみたら、ラムレーズンにさらにスパイスラムという、バーならではのジェラートを出してくれました。ミルクベースですがさっぱりとしたジェラートに角度の違うおいしさのラムとラム。バーだからこその楽しみ方です。

昼のガンデン、夜のナオライ。どちらも違った楽しみ方ができます。僕のとっておきのお店のひとつです。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2020年9月4日)時点の情報をもとに作成しています。

【第3週のカレー】カレーの達人が通いつめる、カレーうどんのおいしいうどん屋さんとは?「大地のうどん」

涼しくなってくると、そしてさらにこの先に寒くなってくると食べたくなるのがカレーうどんです。カレーうどんもおいしいお店が多いのですが、中でも僕が一番通っているお店をご紹介しましょう。高田馬場にある「大地のうどん」です。

大地のうどんは福岡県に本店を構えるお店。諸説ありますが、福岡県はうどんそば発祥の地だともいわれています。一般的に博多うどんは柔らかいのが特徴で、もちもち感があり、ふわっと、ふにゃっとした麺が主流です。しかし、大地のうどんはそれとも違う、柔らかいのにコシがあると言いますか、もちもち感が極限まで高められた結果強い弾力があると言いますか、一度食べたらやみつきになる魅力があります。

個人的にうどんはコシがあるものが好きなのですが、このお店のうどんはコシとはまた違う魅力に溢れています。見た目も黄色味がかった半透明。写真を見ているとその食感を思い出して食べたくなってきてしまう、代替のきかないおいしさなのです。

「カレーうどん」

「カレーうどん」730円がまた素晴らしいんですよ。うどんに合う甘味とコクと奥深い旨味に溢れたカレーに、揚げたての野菜の天ぷらがたっぷり。温玉ものってボリューム満点なのですが、僕はこれに「肉トッピング」230円を加えるのがいつものスタイル。

天ぷらの下に隠れた肉トッピング

甘辛く煮た牛肉は上にどーんと盛り付けられることもあれば、天ぷらの下に隠れていることもあります。この肉を温玉と一緒に食べるとすき焼きのような味になり、すき焼きとカレーうどんと天ぷらを一緒に食べているような贅沢な気分が味わえるのが良いです。

「ごぼうトッピング」

さらにお腹が空いているときは「ごぼうトッピング」170円も加えます。このごぼうの迫力が凄い! 170円でここまで出てくるの? と思うくらいに大量のごぼう天が別皿で出てくるのです。これだけでお腹いっぱいになりそうなごぼう天ですが、塩をつけて食べて良し、カレーうどんのカレー汁につけて食べて良し。サクサクした歯応えとごぼうの香りも楽しくて、ペロっといけてしまいます。

接客も素晴らしく、マスターの元気な声を聞いて満面の笑顔を見ると、こちらも元気になってくるような気持ちになります。店内はしっかりとパーテーションで仕切りもあって感染対策も入念。券売機での注文となるので、行く前にメニューを吟味しておくのが良いでしょう。

高田馬場店ができて以来、何十回食べたかわからない程に通っていますが、何度食べても飽きない、僕にとって定番のおいしさのカレーうどんです。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2020年9月14日)時点の情報をもとに作成しています。

【第4週のカレー】伝説のポークカレーが居酒屋で復活! カレー好きの胃袋を掴んで離さない名シェフの味に感動の再会「酒晴 おまっとさん 絆

人気店であっても、惜しまれながら閉店してしまうことがあります。経営は順調だとしても、それ以外に様々な理由が起こりうるのが人生。体調的な問題だったり、気持ちの問題だったり、人間関係だったり、とにかく色々です。僕が大好きだった「ワカフェエイム」というお店も、昨年、シェフの引退宣言と共に閉店してしまいました。知る人ぞ知る人気店だったのですが、文字通り惜しまれつつの閉店で、閉店間際にはシェフのファンが多数お店に足を運びました。

元々シェフは西葛西の「ランブル」で、当時まだ間借りカレーという言葉も浸透していなかった頃から間借りカレー営業で人気となり、押上の「華麗なるカレー」を開店しこちらも人気店に。しかし体調を崩して惜しまれつつ閉店。その後しばらくして「ワカフェエイム」の料理長を頼まれてそこに落ち着いたという流れもあり、古くからのファンが多いのです。そんなシェフが居酒屋でお手伝いをしているという話を聞き、気になってご本人に連絡してみるとカレーもまた出し始めたとのこと。「待ってました!」とばかりに行ってきました。

場所は東京・銀座八丁目にある「酒晴 おまっとさん 絆」という居酒屋。雑居ビルの8階にあり、テラス席も使用可能です。和食を中心とした居酒屋といえばわかりやすいでしょうか。

「本日のなめろう」

まずは、レギュラーメニューから「本日のなめろう」980円を。魚は日替わりなのですが、この日は鯛を使ったもので上品なおいしさ。味噌の強さに負けないくらい鯛の味わいが深く、お酒も進みます。

「石焼だし玉子」

「石焼だし玉子」(ハーフサイズ)520円は、普通のだし玉子とは違って石焼の器にだし玉子が入り、だしあんかけがかかります。これに200円で生海苔をトッピングして注文したのですが、海苔がまた合うんですよ。ふわっとした卵、石焼で焼かれておこげができて底の風味が変化を出し、海苔とだしのうま味がそれを包む。個性ある逸品です。

居酒屋としてもレベルが高いのですが、メニューには載っていないカレーがあるんです。カレーの内容はその日によって違うそうですが、僕が行った日のカレーは「ポーク&キーマ」1,300円でした。ワカフェエイムでも看板メニューだった伝説のポークカレーと、同店で同じく人気メニューだったキーマカレーのあいがけです。

「ポーク&キーマ」

ポークカレーはインドの南西部にあるゴア地方の郷土料理としてカレーマニアの間では人気の高いポークビンダルー。酸味と辛味が立ち、だからこそ豚肉の甘味とうま味を存分に堪能できる絶品カレーです。一口食べて「これだよ!」と思わず声を出してしまいました。ポークビンダルーのおいしいお店はかなり増えてきており、以前も、酸味×辛さがたまらない! いま注目すべきカレーは「ポークビンダルー」の記事で、ポークビンダルーのおすすめ店をまとめてご紹介したことがあります。

写真手前が「ポーク」

このときにもワカフェエイムのポークカレーをご紹介したかったのですが、ちょうどこの頃に閉店してしまったのでご紹介できなかったといういきさつがありました。それくらいに僕の中でもトップクラスに大好きなポークビンダルーなのです。

写真手前が「キーマ」

キーマも負けていません。しっとりとジューシーなキーマに見事な半熟状態のゆで卵がのり、卵を割ればマイルドなコクがカレーと混ざり合い充実感が増します。あいがけで食べてみるとこの二つが実に相性が良いんです。鋭いスパイス感が魅力のポークと柔らかい奥深さが魅力のキーマ。どちらも日本のお米との相性が抜群に良く、シェフの「自分のカレーは米をうまく食うために作ったカレーなんです」という言葉に心底共感します。

シェフにこちらのお店でカレーを作るようになった経緯を聞いてみると、「元々繋がりのあったお店なのですがコロナ禍で売上がガタ落ちしてしまったそうで、そんな中でお店の再建のためにも何か手伝ってくれないかと声をかけられ、そういうことならと腰を上げたんです」とのこと。

色々と手伝う中で、昔のお客さんにも来てもらえればと思ってカレーを作り始めたのがつい最近。カレーの内容はその時々で変わっていき、価格もカレーの内容によって変動するそうですが、できる限り何かしらのカレーがあるように準備していきたいとおっしゃっていました。カレーが無くても十分満足できるお店ですが、カレー目当ての方は是非電話でご確認ください。テラス席も日によって準備ができていない場合もあるのでやはり電話での確認がベターですね。

かつてのお店のファンの方はもちろん、その味をまだ知らないという方も是非食べてもらいたいカレーです。ポークやキーマ以外のカレーもすべておいしいですし、ほかのおつまみも満足度の高いものなので、お酒を飲み、好みのつまみを食べ、〆にカレーという流れで、存分に楽しんでいただければと思います。

※価格はすべて税抜

※本記事は取材日(2020年9月21日)時点の情報をもとに作成しています。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/