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【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレー】2020年6月を振り返る
今月のカレーは、コロナ禍の中でオープンせざるを得なかったお店、あるいはコロナ禍だからこそオープンしたとも言えるお店など5店舗のご紹介となります。第二波の懸念もありますが、前を向いて進んで行かねばなりませんし、飲食店の皆さんも最大限の予防につとめて営業しています。僕達も最大限の予防につとめつつ、おいしいカレーを食べていきたいですね。
全店舗もちろんテイクアウト対応。中にはデリバリーだったり外で食べられるお店もあります。どうぞご覧ください!
【第1週のカレー】カシミールカレーもテイクアウトOK! 神田カレーグランプリ常連店が新店をオープン
先月には緊急事態宣言も解除され、少しずつ人出も増えてきました。普段の生活に近づいたという喜びがある一方で、コロナウィルス感染症はまだ終息したわけではないので気を付けなければいけないという緊張感も引き続きあります。三密を避けることが可能であれば外食も、難しそうであればテイクアウトやデリバリーという形で好きなお店の料理を食べるという楽しさも味わっていきたいものです。
今週のカレーは僕の大好きなお店のひとつ。「食べログ カレー 百名店 TOKYO 2019」にも選ばれた神保町エリアにある「ビストロべっぴん舎」なのですが、今回紹介するのは新しいべっぴん舎の方です。どういうことかというと、このコロナ禍の中で何と、同じ神保町エリアにもう一店舗開店したのです!

何故この時期にもう一店舗開店したのかというとコロナ禍ならではの理由がありました。というのも元々のお店があるエリア、実は東京オリンピック後に再開発予定の地域だったそうです。そうなるとこの場所での営業を続けられないということで、近くに移転するつもりで新たな店舗を探していたのだそうです。それが見つかったところでコロナ禍。東京オリンピックも延期となり、再開発もそれに伴って延期となりました。
しかし新しいお店はもう押さえてしまっている。さらに、このご時世ですからなかなか告知も思うようにしにくい。ならばもういっそどちらの店舗もやってしまおうと。元々ある店舗を動かしながら、新しい店舗ができたことをお客さんへ直接お知らせしていこうと、そのような理由で同じ神保町に二店舗目を開店したそうです。

新店舗は欧風カレーの名店「ペルソナ」がかつて存在したビルの斜め前。大通りから少し横入りした場所ですが駅近でアクセスも良く、一階なので入りやすい雰囲気です。店内も本店より広く、明るい雰囲気。

メニュー構成は本店と同様。どれを食べてもおいしいのですが、僕の一番のお気に入りは「牛すじカシミールカリー」1,100円。

カシミールカレーといえば老舗「デリー」の看板メニューですが、こちらのマスターもデリーから派生した「ボンベイ」出身。しっかりと歴史を受け継ぐお店なのです。それでいてべっぴん舎ならではの個性もある所が素晴らしい。
カシミールの辛さに、赤ワインに煮込んだ牛スジが加わることで甘みと深みが追加され、食べやすくなっています。野菜もトマト、レンコン、ブロッコリーなどが入ってバランスも良く、食べておいしく、健康にも良いカレー。相変わらずの絶品です!

自宅でもこの味を楽しみたくて、今回は「黒のべっぴんカシミールカリー」1,000円をテイクアウト。牛すじカシミールよりも辛さが前面に出ているスパイシーなカレーなのですが、テイクアウトに伴う時間が経過したことによってその辛さが少し落ち着いて丸みを帯びたような印象を受けました。
やはりカレーはできたてとそうでないのとではかなり味が変わってきます。この変化もなかなか楽しく、できたてにはできたての魅力があり、少し時間を置いたものにはその魅力があるのですね。 ※カレーに限らず、テイクアウトしたものは食中毒を防ぐためにできるだけ早く食べるように心がけてください。すぐに食べられない場合でもできるだけ早く冷蔵庫に入れ、その日のうちに電子レンジでしっかりと再加熱してから食べることをおすすめします。
こちらのお店は毎年数万人が集まる「神田カレーグランプリ」において、神田カレーマイスター賞を2度も受賞しています。マイスター賞とは、神田カレースタンプラリーを制覇した神田カレーマイスター達の投票によって選ばれるお店で、参加者全員の投票で決まるグランプリに比べると、神田カレーに詳しい人の投票によるものですから、グランプリ以上に価値があるとも一部でいわれている賞です。つまりは神田カレーファンが認める実力店。
混乱の中での開店ということでスタッフの人員不足だそうですが、そこは優しい気持ちで食べに行きたいものです。まだまだ神保町エリアはひと気が少ないです。新店舗も本店も、行きやすい方へ是非!
※価格はすべて税込
【第2週のカレー】人気肉バルがカレー専門店として再誕! テイクアウト&宅配対応の新星をチェック
スパイスカレーの普及により、様々なカレーのレシピが広まったり、動画でわかりやすく紹介されたり。今まではハードルが高かったルウを使わずスパイスを調合してカレーを作る人も増えてきました。飲食店でもスパイスカレーをメニューに加えるところが増えています。しかし、どうしても同じようなカレーになってしまっている所が多いとも感じています。どこかのお店と似た感じになってしまいがちなんですよね。
そんな中、ここにしかない確固たる個性のあるカレーを提供し、しかも食べる度に味が進化するというポテンシャルを秘めた期待のお店が誕生しました。上板橋の「スパイスフォース」です。

こちらのお店は元々「最高おにくセンター」という名前で肉バルを営んでいたのですが、コロナ禍の中で夜のバル営業が難しくなり、ランチ営業をスタート。そのメインとしてカレーを出し始めたのです。シェフはカレーを作っていくうちにどんどんハマっていき、その結果お店もカレー専門店「スパイスフォース」に生まれ変わったという、コロナ禍のピンチを逆に楽しむようにして新しいものを生み出した精神性と行動力がまずカッコイイじゃないですか!

最高おにくセンターの頃からメニューにはシメのカレーうどんがあったり、肉串をカレーソースで食べることができたりと、カレー自体はありました。系列店である「ハングリーヘブン」のカレーバーガーはどれも最高においしいですし、そもそもがカレーに対して力を入れている会社なのです。メニュー開発に携わったシェフは洋食系を中心に様々なお店で修業された方。確かなセンスと調理技術や知識があります。
カレーはビーフ、ポーク、チキンの3種類。そこに、最近では本日のカレーという限定カレーまで登場しました。ノリに乗っています。

ビーフは元肉バルならではのおいしい牛肉がゴロゴロと入った食べ応えあるカレー。洋食系カレーとスパイスカレーの中間くらいのイメージです。
ポークはトマトベースで、タルカ(油で熱したスパイスをカレーにかけるというインド料理の手法)したスパイスの香りが立つパンチあるカレー。豚肉のスパイス焼きものるところがうれしいです。
チキンはバターチキンベース。甘味と旨味のバランスが良く、嫌いな人はほとんどいないであろうカレー。辛い物が苦手な方にはこれがおすすめです。カレーは「自由に作る」ことを心がけているそうで、だからこその型にとらわれない個性あるおいしさになっているのでしょう。

どのカレーにもキムチが副菜としてトッピングされているのですが、これが最高の相性! スパイスカレーの副菜にアチャール(インドの漬物)が付くのはよくあることですが、このキムチはコリアンアチャールとでも言えるような形であり、楽しいです。ビーフにはライム、ポークにはレモンと、合わせる柑橘系にもこだわりを感じ、そのこだわりが正しいことは食べればわかるでしょう。
さらにはご飯も進化しました。今までは日本米だったのですが、今週食べたものはインディカ米と日本米、さらにもち麦のブレンド。インド料理のプラオのようでもあり、カレーのおいしさをさらに一段階引き上げる役割も果たしていました。素晴らしい!

気に入って何度か食べているんですが、食べる度に進化しているんですよ。元々センスの良い人が“カレー作りとは何か”ということを作っていくうちにどんどんわかってきて、新たな気づきと工夫が加わり、それが味に反映しているという。通い甲斐のあるお店です。これだけしっかりとおいしくて副菜も華やかにのったワンプレートが、どのカレーも単品1,000円(限定カレーのみ内容により価格変動)、あいがけでも1,200円という価格はめちゃめちゃお得ですよ!

テイクアウトも対応していますし、近隣の地域にはデリバリーも可能です。テイクアウトでもそのおいしさと華やかさは変わりありません。ちなみにデリバリーは系列店のものも一緒に頼めます。ということはつまり、スパイスフォースのカレーと、ハングリーヘブンのカレーバーガーが一度に頼めるということ。近所の方が羨ましい!

対応地域は板橋区から練馬区にかけての、地名で表すと若木、中台、前野町、宮本町、常盤台、南常盤台、上板橋、桜川、平和台、氷川台、東新町、北町。合計1,500円からデリバリー可能とのこと。
※価格はすべて税込
【第3週のカレー】おいしさ進化中。活気を見せる間借りカレー聖地のおすすめテイクアウト
東京における間借りカレー(バー等の飲食店の通常営業時間外にその場所を借りて営業するカレー専門店)の聖地といえば新宿ゴールデン街ということで異論はないでしょう。かつて徒歩一分圏内に「エピタフカレー」「東新宿 サンラサー」「銀河系カレー」(現在は「PQ's」)という3店舗が立ち並び、 全てが人気店となって現在は独立移転して営業しています。

ほかにも人気が出て独立したお店、あるいは今もゴールデン街で頑張っているお店、色々とあるのですが、ここのところゴールデン街の間借りカレー事情がまたさらに盛り上がってきています。今週は、その盛り上がりの中心にいる2店舗をご紹介したいと思います。

まずは2020年4月8日に開店したものの、コロナ禍の影響で一時移転、その後6月にまたゴールデン街に戻って来たという「マリーダ カレー」。「bar sono&PHO」のランチタイム間借り営業です。
マスターは、バー・そば専門店・イタリアン等、様々な業種の飲食店での調理経験がある方。特にパブやバーの業態で働いていた期間が長く、かつて働いていたバーの賄いとしてカレーを作ってみたところ、これが好評となり実際にメニューに加わったことがカレー作りを本格的に始めるきっかけとなったそうです。

メニューは「エキゾチックキーマ」1,000円と「コロンボ」1,000円の二本立て。コロンボとはカリブ海の地方料理で肉や野菜をスパイスで煮込んだもの。これのカレーアレンジです。
こちらのコロンボは塩漬け豚と野菜が、シャバっとして爽やかなスパイス感のグレイビーと合わさった夏にぴったりのカレーです。

卓上の調味料にも注目です。レモンコショウヨーグルト、スパイスふりかけ、ハバネロソース、そしてうま辛オニオン(ルヌミリス) まで。ルヌミリスとはスリランカの辛い調味料。これのアレンジ版です。
そのまま食べても十分おいしいカレーなのですが、爽やかさとまろやかさを引き上げる「レモンコショウヨーグルト」、食感と香りを追加する「スパイスふりかけ」、辛さをブーストする「ハバネロソース」、旨味と辛味を同時に混ぜ込んでいく「うま辛オニオン」(ルヌミリス)。この組み合わせ次第で自分好みに味変できる楽しさがあるのが良いですね。

エキゾチックキーマをテイクアウトしてみると、カレーとご飯のみならずこの卓上調味料も一緒に入れてくれるという手の込みよう。 家でもその楽しさを味わえるのが素晴らしい!

キーマはほくほくのひよこ豆と挽肉の旨味が印象的なカレーであり、一般向けにキーマ、マニア向けにコロンボというあたりもよく考えられています。どちらもよくあるタイプのカレーではなく、様々な業種の飲食店経験のあるマスターだからこそのオンリーワンなカレーとなっていて、 今後にも期待大なお店です。

続いてもう一店舗。カレーマニアなら誰もが知る埼玉を代表する名店「ネゴンボ33」がゴールデン街にもお店を出しました!
こちらは「ネゴンボ33高円寺店」系列のお店であり、「The Everybody's」の間借り。店員さんに伺うと、「実は店舗の運営企業が同じなのですが、 企業内間借りです」とのこと。

メニューは「ラムキーマ」と「ポークビンダルー」の二本立て。1種盛りなら1,000円、2種盛りなら1,500円です。せっかくなので2種盛りに。

塩味強めで、だからこそ羊肉の旨味が立体的に感じられるラムキーマ。程良い酸味で豚肉の甘味と旨味を存分に味わえるポークビンダルー。ピンクペッパーは見た目にも味にも効果的なアクセントとなっていて、これぞネゴンボという印象。
カレーはレシピが同じでも作る人が変わると味が大きく変わる食べ物です。高円寺店ができたばかりの頃、埼玉本店の味と大きく違うという声が聞こえたこともありましたが、様々なオペレーションも改善され、ゴールデン街店は埼玉本店の味とかなり近い仕上がりになっていました。

ゴールデン街というと無名ながらセンスと実力を秘めた店主による新しいカレーが生まれる場所というイメージだったのですが、既に有名であり人気のあるお店がここにやってきたのもコロナ禍だからこそ。何故なら、実はほかの場所で新宿近辺にお店を探していたところにコロナ禍が来てしまい、外国人客が多かったゴールデン街は大打撃を受け、バー営業の売上も落ちてしまっているから。この状況でほかにお店を出すよりは元々ある場所の空き時間を有効利用した方が良いということになり、こちらに開店となったそうです。
そしてこちら、バー営業が20時からということもあり、間借りでありながら19時までの営業というのが実にうれしいポイント。早目の晩御飯にも対応しているというわけです。もちろんテイクアウトも対応していますよ。
外国人客激減で寂しさを感じさせているゴールデン街ですが、期待の間借りカレー店の登場により、楽しさや希望も見えてきました。おいしいカレーが街自体の元気を取り戻すきっかけとなりますように!
※価格はすべて税込
【第4週のカレー】大阪の名店がコラボ出店! 下北沢のネオ商店街にカレー専門店がニューオープン
東京・下北沢といえば、毎年恒例の「下北沢カレーフェスティバル」も大きな盛り上がりを見せ、すっかりカレーの街としても認知されています。再開発が進むエリアでもあるのですが、コロナ禍真っ只中の2020年4月1日に「BONUS TRACK」という新しい形の商店街が下北線路街に開業したのをご存じでしょうか?

公園の中に飲食店や書店、雑貨店などが立ち並ぶような、ちょっとしたテーマパークのような雰囲気も感じさせるエリアです。共有スペースもあってそこでテイクアウトしたものを食べることができるのも良いですね。

そのBONUS TRACK内にオープンした注目の新店が今回ご紹介する「ADDA」です。

ADDAは大阪の人気店「ボタ」と「デッカオ」が手を組み、コラボ出店という形で東京進出したお店。4月1日開店予定だったのが、コロナ禍の影響で6月1日からテイクアウト営業を開始。6月半ばになってようやくイートインも開始し、7月から夜のバー営業もスタートする予定とのことです。

ボタといえばインド系のカレー、デッカオといえばスリランカ系のカレーですが、どちらも大阪ということもあり、現地の味というよりは大阪らしさのあるインドカレーでありスリランカカレーだと言えるでしょう。

ランチメニューの「カレー2種がけセット」1,000円をいただきました。チキンカレーは固定、もう1種のカレーを日替わりから選ぶというスタイル。今回は牛すじのカレーでオーダー。副菜も色々とついてくるので、この価格はかなりお得です。

チキンカレーは大振りで存在感あるチキンを中心に、濃い目でしっかり味のグレイビーの海が広がります。そこに浮かぶ島のようなターメリックライスには爽やかな赤玉ねぎのアチャールがのり、水菜の和え物とナスのモージュ(スリランカ料理で揚げナスをスパイスで和えたもの)が添えられていて実にカラフル。
牛すじカレーはカトゥーリに盛り付けられ、これだけで味わうこともできますし、チキンカレーや副菜と混ぜていくのも楽しい食べ方です。スリランカでは混ぜながら食べて行くのが主流なので、様々な副菜と少しずつ混ぜながら食べるのが良いでしょう。

どれを食べてもおいしく、混ぜると新たなおいしさが生まれるのですが、特にナスのモージュが僕のお気に入り。そもそも僕はスリランカ料理の中でもナスのモージュが大好きでして、スリランカ料理店へ行ってメニューにナスのモージュを見つけるとほぼ必ず食べているのですが、ナスのモージュランキングをつけるとしたら大阪心斎橋デッカオのナスのモージュは日本でもトップ3に入るくらいに好きなのです。その味が下北沢でも食べられるなんてうれしすぎる!
インド料理なのかスリランカ料理なのか、現地料理を愛する人からしたらどっちつかずと思えるかもしれません。しかし大阪では「うまけりゃ何でもええやん」の精神が主流。そしてそのマインドはスパイスカレー流行の波に乗って全国へ広がっています。実際こちらのカレー、間違いなく「うまい」ので問題無く「ええ」のです。

マスターはバックパッカー時代にスリランカへ行ったときにカレーに衝撃を受けたと語ってくれました。サラリーマン時代に大阪へ転勤となり、大阪スパイスカレーに触れ、脱サラし、ボタとデッカオ、さらにはボタ系列のアララギでも働いていたそうです。どちらのお店の味もしっかりと受け継いでいる方だからこそ、この味が出せるわけですね。
インドでもありスリランカでもあり大阪でもあるこのカレー、東京におけるカレーの街下北沢でも愛されること間違いなしの個性ある逸品です。
混ぜて食べるカレーはかなり増えてきましたが、お店ごとミックスというのは新しい形。ボタ、デッカオの両店の仲が良いからこそ、そして両店のカレーの相性が良かったからこそ可能だったというコラボ出店。期待の新店舗の開店で、カレーの街がますます盛り上がっていくことでしょう!
※価格はすべて税込
※時節柄、メニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、各店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
文・写真:カレーおじさん\(^o^)/