目次
お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第21回は、3密対策も兼ねて、夏へと移り変わる気持ちの良い季節の風を感じながら、オープンエア(テラスや屋上など)でスイーツを楽しめるお店を紹介してもらいました。
【猫井登のスイーツ探訪21】夏の風を感じながらスイーツを味わえる3つのおすすめカフェ
「テラス席や屋上でスイーツを楽しめるお店」と聞いて、真っ先に頭に浮かぶのは、“表参道・青山エリア”! 有名ブランドのブティックや高級レストランが立ち並ぶイメージがありますが、実は、気軽に利用できるテラス席や屋上テラスを併設するお店が多い地域でもあります。今日は、その中でも特徴的な3店を紹介しましょう!
表参道で有名なオープンテラスカフェといえばここ!「アニヴェルセル カフェ」

こちらのカフェは、結婚式場を運営するアニヴェルセル(株)が、1988年に東京・表参道にオープンしたお店。白を基調に、ベージュやグリーンを取り入れた店舗はテラス席が半分近くを占め、パリのカフェの雰囲気をそのままに、粋なオープンエアカフェとなっています。

テラス席は表通りから直角に奥に入るように配置されているので、開放感がありながらも落ち着いた雰囲気です。


食事メニューのほか、ケーキ類も充実しており、フルーツのロールケーキ、ショートケーキ系、チョコレートケーキ系、タルト系など、好みに合わせてチョイスが可能です。

今回選んだ「フルーツロールケーキ」は、イチゴ、キウイ、黄桃、バナナなどを生クリームで包んで巻いたものでしたが、生地の内側にカスタードクリームの層があり、味わいに深みとコクを与えるという丁寧な仕事がなされていました。表参道散策で疲れたら、エスプレッソでひと休み。夏の日差しの中で、テラスで、道行く人を眺めながら、生ビールをちょっと一杯なんて使い方も粋ですね!
※価格は税抜
美しい花々に囲まれた空間で癒やしのカフェタイムを過ごせる「Nicolai Bergmann NOMU」

「NOMU」は、北欧のテイストと日本の感性を融合した独自のスタイルを確立したニコライ・バーグマン氏のフラワーショップに併設されているカフェ。表通りよりも奥まったエリアにあるので、都会の中にありながらも喧騒を離れて、美しい花々に囲まれながらスイーツを楽しむことができます。
こちらで注目したいのは、新鮮なフルーツを搾って作られたフレッシュジュースやスムージー! その中でも今回は店員さんオススメの「KAZE KILLER」と「AOYAMA AFFAIR」をチョイス。



表のテラス席も開放感があって良いのですが、平常時のオススメはお店の中に入ってすぐ右手にあるローテーブル席。体を包み込んでくれるような背もたれの大きな椅子に深々と座りながらテーブルの上に飾られた美しい花を眺めれば、ゆったりとした気分に浸ることができます。

また、軽食を楽しむ場合はテーブル席もおすすめ。テーブル上部は、壁のディスプレイに合わせたお花のボックスになっています!
※価格はすべて税抜
爽快感溢れるテラス席でウィーン伝統菓子に舌鼓「カフェラントマン 青山店」

こちらは1873年創業、147年の歴史を誇るウィーンの老舗カフェの海外第1号店。正統派のウィーン菓子を、バリエーション豊かなコーヒーと共にいただくことができます。お店は表参道駅B2出口を出てすぐのAOビルの4階。路面店ではないのであまり知られていませんが、実はお店の奥には、広い屋上テラス席が設けられています(通常時は12テーブル。現在は間隔を広く取り6テーブルで営業中です)。

今回いただいたのは、「アイス アインシュペンナー」というコーヒーと、デザートは「マーモアクーゲルフプフ」と「アプフェル ストゥルーデル」。

アインシュペンナーは、19世紀中頃から飲まれている伝統のあるコーヒー。日本で知られる「ウィンナーコーヒー」の原型ともいわれるもので、深煎りで淹れたコーヒーの苦みとホイップクリームのコクが調和したまろやかな味わいです。元々は「一頭立ての馬車の御者」という意味で、寒い冬に馬車で主人を待つ御者が体を温めるため飲んでいたともいわれます。

マーモアクーゲルフプフは、マーモアが「マーブル」、クーゲルフプフは「クグロフ」のこと。クグロフ型という王冠形の型で焼かれた、チョコレート生地とバニラ生地のマーブル模様の焼き菓子です。カスタードソースが添えられています。

アプフェル ストゥルーデルのアプフェルは「りんご」、ストゥルーデルは「渦巻き」の意味で、紙のように薄く伸ばした生地でりんごを包んで焼いたものです。ウィーンの銘菓として知られますが、発祥はトルコだともいわれ、アラブ菓子に通じるものがあります。
ウィーン菓子は、しっとり系生地を好む人が多い日本人にとっては、少し乾燥していてホロホロした感じに思えますが、添えてあるソースや生クリームと合わせて食べると絶妙な味わいと食感になります。
スイーツの記事なのでお菓子を中心にお伝えしていますが、こちらのお店ではウィーン料理をリーズナブルな価格で楽しむこともできます。



週末の昼下がり、開放感溢れるテラス席で、ビールやワインとともにランチを堪能した後、ウィーン菓子をコーヒーとともにゆっくり楽しんでみてください。
※価格はすべて税抜
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
文・写真:猫井登