〈おいしいテイクアウト・特別編〉

新型コロナウイルスの影響で外食も自粛ムード。こんな時だからこそ「お家でおいしい食事をして元気になってほしい」と、テイクアウトを始める飲食店が続々と登場している。小さな子供がいて諦めていたあのお店の味も、いつもは予約でいっぱいのあのお店の味も、テイクアウトならお家でゆっくり味わえる。在宅勤務で自炊も飽きてきた、そろそろプロの味が恋しい……。さあ、もっとテイクアウトを活用して、日本の素晴らしい飲食店を応援しよう。

 

今回は特別編として、連載「僕はこんな店で食べてきた」でお馴染みの食べログ グルメ著名人・柏原光太郎さんに、東京・荒木町の人気割烹が開店したおばんざい屋さんを教えてもらいました。是非参考にして、充実したお家時間をお過ごしください。

 

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〈目利きのテイクアウト〉出版界きっての食通がおすすめするのは、今しか食べられないおばんざい!

ShyBoar
出典:ShyBoarさん

昔の花街の色合いを残す荒木町にある小体な割烹「御料理ほりうち」が突然、看板を「おばんざい堀内」に変えたのは4月14日のことでした。

 

「4月7日に緊急事態宣言が出てお客様がめっきりと減ったため、私ができることはなにかと、12日に店を閉めてから2日間考えていたんです。ほかの店と同じようなテイクアウトはやりたくない。うちだからできることを考えた末に、常連客のリクエストをお聞きして、お好きなものを作るおばんざいにしようと決めたんです。だから屋号も変えました(笑)」と話す堀内さやかさんは日本料理一筋で修業し、一年半前に独立しました。

まっとうな割烹料理に山梨出身の彼女らしく鶏のもつ煮をスペシャリテにするなど、遊び心も散りばめたメニューですぐに人気店になりましたが、この1カ月は店を閉めて、おばんざいをひたすら作りました。

「トマトと海月のマリネ」600円、「肉じゃが」2,000円や「河豚のから揚げ」小 1,500円など、日々変わる20種類ほどのアラカルトから選んでもいいですが、常連はほとんど、堀内さんにおまかせ。

 

「アラカルトの中からお客様の好みに合わせてみつくろいますが、こんな料理が食べたいという要望に合わせて作ることもしばしばです。その結果、マカロニサラダやミートソース、フルーツサンドなど、ふだんお店では出さない料理が増えちゃいました」

 

なかでもイチゴやメロン、マンゴーなどを使ったフルーツサンドは大人気で、常にあるわけではないですが、告知をするとたちまち注文が殺到したそうです。

鴨肉の筑前煮

おまかせは1人前6,000円からですが、この日リクエストしたのは2人で10,000円。事務所で食べるので生物や汁物はなしで、食べやすいものをお願いしたところ、堀内さんが用意してくれたのは「胡麻豆腐」「マカロニサラダ」「鱧の南蛮漬けと夏野菜の揚げ浸し」「野菜コロッケ」「鴨肉の筑前煮」「キンキの煮付け」「鱧寿司」の7品でした。アラカルトで頼んだら倍くらいはしますから、まさにお値打ち価格です。

キンキの煮付け

胡麻豆腐は季節を先取りしたジュンサイとウニがたっぷりとのって柔らかな味わい。マカロニサラダは亡き父の大好物で、歯ごたえのあるマカロニを探して10種類以上試食して今のものに決めたそうです。

 

 

野菜コロッケは2年以上雪室で熟成させた十勝のメークインを使用しているから野菜の甘みがしっかりと出ていますし、魚の煮付けはキンキ。ひとり1尾を甘辛く煮付け、冷めてもおいしい味になっています。

鱧寿司

鱧寿司まで食べたらおなかはぱんぱん。堀内さんはひとり分ずつ小分けにしてくれましたが、ひとり分をシェアしただけでも十分な量かもしれません。

 

料理はお渡しする直前に仕上げるものがほとんどですから普段のコース料理よりも手間がかかるし、リピーターが多いだけに料理の種類が増えていくのもうれしいやら、悩ましいやら。 仕込みで深夜になることも珍しくありません。

「『おばんざい堀内』にしたことで食材をいつもより多く発注できるので、生産者の方とつながりができ、深夜にメールでやりとりをするようになると、おいしい食材を送ってくれます。日曜くらいは休みたいと思っても『結婚記念日に堀内の料理を食べたいんだよ』と言われると休めないですからね。ゴールデンウィークも1日も休みはありませんでした。でも、今やっていることは無駄ではないって思ってます。お客様がわざわざいらしてお料理を持ってかえっていただくときはほんとにうれしいですから」

 

堀内さんとタッグを組むサービス担当の秋山さんは日本酒通だけに、期限付酒類小売業免許を使ったお酒のテイクアウトも可能。酒販店ではめったに手に入らない銘酒も一緒に持って帰れば、自宅ですぐに「おばんざい堀内」が楽しめます。

 

※価格はすべて税抜
※おばんざい堀内は5月末まで。6月より御料理ほりうちの営業を再開予定です

 

 

教えてくれた人

柏原光太郎

日本ガストロノミー協会会長。大学卒業後、出版社に勤務し、グルメ本を手がけたことで食の奥深さに目覚める。料理は作ることも食べることも大好きで、中学生の娘の毎日の弁当と朝ごはん、週末の家ごはんを作っている。料理好きのための食の発信基地としての役割を担うべく2017年12月、一般社団法人「日本ガストロノミー協会」を設立。

 

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※時節柄、営業時間やテイクアウトメニューの内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

 

写真・文:柏原光太郎