お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第19回は、外出を控える方も多いであろう今だからこそ楽しみたい、オンライン注文できる絶品スイーツを紹介する特別編です。

 

いつもの当連載「スイーツ探訪」では、猫井先生と編集者が一緒に街のスイーツ店を巡るため、エリアは東京近郊に限定されがち。ネット購入ができればお店の選択肢は増える一方、生菓子や出来立てのものを購入しにくくなるという制約も出てきます。しかし、こんな時節柄だからこそ、家に居ながらパティスリーの味を楽しみたいという方も多いのでは? というわけで早速、猫井先生にとっておきのオンライン注文できるスイーツを教えてもらいました!

【猫井登のスイーツ探訪19・特別編】スイーツ専門家が推薦! オンライン注文できる絶品スイーツ

パティスリーの店内を思い浮かべると、お菓子は大きく3つに分類されることが分かります。一つ目は、冷蔵のショーケースの中に並べられたショートケーキ、モンブラン、ムース系のケーキなどの「生菓子」。二つ目は、マドレーヌ、フィナンシェ、クッキーなどに代表される「焼き菓子」。そして、三つ目がイートイン限定で供される「アシェットデセール(皿盛りのデザート)」です。またパンを扱っているお店では、いわゆる「ヴィエノワズリー(クロワッサンや菓子パンなど)」があります。

【焼き菓子なら】「ラ・ピエール・ブランシュ」のガトー・ブルトン

オンライン購入で一番手軽に取り寄せができるのは「焼き菓子」です。お気に入りのお店をネットで検索して、通販サイトがあれば問題なく購入が可能です。というわけでまずご紹介するのは、昨年私(猫井)が食べた焼き菓子で最も印象に残った「ラ・ピエール・ブランシュ」さんの焼き菓子「ガトー・ブルトン」です!

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ラ・ピエール・ブランシュ 元町店の外観   出典:natsu-kingさん

こちらは、白井忠志さんが、本物のチョコレート文化を日本にも広めたいとの思いから2003年に創業されたお店です。チョコレート店ですから、夏場でも30種程度、そのほかの季節には60種程度のチョコレートが店頭に並び、1粒から購入できます。

「ガトー・ブルトン」

もちろん、チョコレートも素晴らしいのですが、こちらのお店で注目したいのは「フランスの郷土菓子」! なかでもオススメは「ガトー・ブルトン」。見た目は、よくパティスリーで見かける厚焼きクッキー「ガレット・ブルトンヌ」を大きくしただけのようにも見えますが、ガレット・ブルトンヌの食感が“サク、ホロ”でクッキー的なのに対して、ガトー・ブルトンは“ややふんわり、しっとり、ホロ”としており、ガレット・ブルトンヌのケーキ版といった感じです。

どちらも、フランスの中では「有塩」バターを使うことで有名なブルターニュ地方の郷土菓子で、塩味が利いています。特にこちらのお店のものは、箱を開けた途端にバターが豊かに香り、外側は香ばしくザックリ、中は程よい塩味が感じられるしっとりとした生地となっています。

 

こちらのお店では、ウェブショップも開設されており、「ガトー・ブルトン」も購入可能です!

 

【生菓子なら】「ジャック」のトランシュ ジャック

「ネット専業のお店では生菓子の販売を行っているところもあるけれど、有名パティスリーで自店の生菓子を販売しているところなんてないんじゃないの……」そんな声が聞こえてきそうですが、心配無用! 今回は、私が実際に取り寄せをする超一流パティスリーの絶品生菓子を紹介します。

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ジャック 大濠店の外観   出典:phili204さん

こちらは、大塚良成シェフが1995年に福岡に開店されたお店。大塚シェフは、福岡や東京での修行を経て渡仏され、フランスでも指折りの名店といわれるアルザスの「パティスリー ジャック」で修行。その実力が認められ、暖簾分けの形で同じ名前のお店をオープンされたのです。大塚シェフは、世界でも一流のフランス菓子職人のみが入会を許される「ルレ・デセール」の数少ない日本人会員の一人でもあります。

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店内ショーケース   出典:ウェイクさん

「トランシュ ジャック」は、店名を冠したお店を代表するケーキで、アーモンドパウダーとバターのリッチな生地と、バニラビーンズが豊かに香るキャラメルのムース、蜂蜜で煮た果肉入りの洋ナシのババロアを合わせたケーキ。

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店舗で販売されているタイプの「ジャック」   出典:ミトミえもんさん

洋ナシの煮汁にブランデーを加えたシロップが上掛けされています。洋ナシのみずみずしさと香りが印象的で、ほろ苦く、優しいキャラメルの味わいとよく調和しています。

ちなみにこちらの「トランシュ ジャック」、日本経済新聞土曜版の「NIKKEIプラス1」(2018年5月19日号)のお取り寄せ可能なムース系ケーキで第1位に輝いた逸品でもあります。実は、この審査会には私も参加していたのですが、食感、味わいともにダントツに素晴らしく、圧倒的に印象が強かったことを今でも記憶しています。

冷凍の状態

オンラインショップでのお取り寄せでは、冷凍便で届きます。食べたい分だけを切り分け、小分けして冷蔵解凍すれば、分量にもよりますが1時間ほどで食べられます。

小分け&解凍後の状態

「トランシュ ジャック」は数量限定販売かつ人気商品のため、オンラインショップで売り切れ表示となっている場合も少なくありません。そんなときは、なるべく早めの時間にアクセスしてみたり、工夫してみてくださいね!

 

【アシェットデセール(皿盛りのデザート)なら】「ピカール」

オンライン注文で一番ハードルが高いのが、皿盛りのデザートであるアシェットデセールです。ウーバーイーツなどの宅配サービスの発達により、近い将来、ピザみたいに出来立てのデザートを持ってきてくれるようになる可能性は考えられますが、なかなか難しいのが現状です。しかし、オーブンでひと手間かければ、なんとかなります!

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ピカール 青山骨董通り店の外観   出典:サロンちゃんさん

「ピカール」は、フランスで人気の冷凍食品メーカーです。同社の歴史は1906年にフォンテーヌブロー製氷社を創業したことに始まります。1962年には冷凍食品の販売を開始。1973年には企業買収を行い、1974年にはパリにフリーザー・センターをオープンします。1999年にはイタリアにも進出。フランス国内だけで400を超える店舗に。

 

2010年から2016年まで、ピカールは「フランス人が選ぶ好きな食べものブランド調査」で7年連続1位を獲得し、2016年11月、遂に日本にも進出を果たし、青山骨董通りに1号店をオープン。今や日本国内だけでも14店舗あります。

ピカール 青山骨董通り店の店内 出典:サロンちゃんさん

もちろんオンラインでも購入可能。野菜、肉、魚……など、様々なラインアップの中に「デザート」もあります! マカロン、エクレア、チーズケーキなど、つい目移りしてしまう見た目にも煌びやかなスイーツが並びますが、ここでは「モアローショコラ」をチョイスしてほしい!

「モアローショコラ」って何? という方が多いかと思いますが、日本でいう「フォンダンショコラ」のこと。アシェットデセールの定番のひとつで、チョコレートケーキにナイフを入れると、中からトロリとチョコレートが溶け出してくるスイーツです。実はこのスイーツ、人により呼び方がまちまちで、フランスでも「フォンダンショコラ」「モアローショコラ」「ミ キュイ」など、さまざまな名で呼ばれています。

モアローショコラをオーブンに入れて、待つことしばし。お皿に移して市販のミックスフルーツなどを散りばめれば、立派なアシェットデセールの出来上がり! サックリとした外皮にナイフを入れると、中からはチョコレートが溶け出し、しっかりとパティスリーのデザート気分を味わうことができます!

ピカールの説明書には「210℃に予熱したオーブンの中段で17分焼き、約10分冷ましてからお召し上がり下さい」と書かれていますが、お持ちのオーブンの特性により、また好みにより若干の調整をするとさらに良い状態に。

 

ちなみに上記写真は、210℃で15分焼き、3分程度冷まして切ったもの。中のチョコレートはかなり熱いので、火傷にはくれぐれもご注意ください! 味わいは、外皮の生地、中のチョコレートともにかなり濃厚で、しっかりとした甘さがあり、ひとつで充分な満足感があります。

蛇足ですが……ピカールのオススメをもうひとつ! それは「クロワッサン」です。
冷凍生地を天板に並べてオーブンに放り込むだけで、焼き立てのクロワッサンを楽しむことができます。

ヨーロッパの小麦粉、バターを使用しているので、本場の味わいを自宅で楽しむことができます。パティスリーのクロワッサンが好きな方は、こちらも是非お試しあれ!

 

 

さあ、オンライン注文を活用して、自宅でもおいしいスイーツ生活を満喫しましょう!

 

文・写真:猫井登