〈サク呑み酒場〉

今夜どう? 軽〜く、一杯。もう一杯。

イマドキの酒場事情がオモシロイ。居酒屋を現代解釈したネオ居酒屋にはじまり、進化系カフェに日本酒バー。どこも気の利いたツマミに、こだわりのドリンクが揃うのが共通点だ。ふらっと寄れるアフター5のパラダイスを、食べログマガジン編集部が厳選してお届け!

角打ち“だから”リーズナブル、角打ち“だけど”料理が本格的

すぐに提供できる小皿料理から、手の込んだ前菜やメインディッシュまで。酒と相性のよい料理が揃う。

茅場町駅から徒歩30秒の場所にある「かめじま商店」は、酒屋が経営する“角打ちビストロ”。角打ちとは酒屋で購入した酒を店先で立ち呑みをすることで、古くから親しまれてきた。近年は、女性も入りやすいおしゃれな空間で楽しむスタイルに進化している。同店では、自然派ワイン(ヴァンナチュール)、クラフトビール、ハイボール、サワーなど、多種多様なお酒を、フランス料理のシェフが作るビストロ料理と合わせて堪能できる。

 

系列店である東銀座の焼き鳥店「ヨシモリ」は、ミシュランガイドで3年連続ビブグルマンを獲得している。新たな展開として「大人がお酒を楽しめる場を作りたい」と考え、店舗出店時に酒販免許を取得。リーズナブルで良質な酒を、ハレの日だけではなく日常的に楽しんでもらえるよう角打ちというスタイルを取り入れた。

ふらっと寄れる立ち呑みと、ゆっくり食事ができるテーブル席を用意

仕事帰りなどに、ふらりと立ち寄れるスタンディングスペース。

店内に入ってすぐにあるのがスタンディングエリア。オープンキッチンを目前に、角打ちの醍醐味である立ち呑みを楽しめる。女性も男性も気兼ねなく立ち寄れるよう、木を基調にシンプルかつ機能的なデザインを取り入れた。

カウンターとテーブルは、合わせて22席。イス席の場合は、コペルト代300円が必要。

オープンキッチンを挟んだ奥側には、カウンター席とテーブル席もある。立ち呑みだけでなく、席に座って料理を楽しめるのは“角打ちビストロ”ならでは。ひとり呑みはもちろん、気の置けない仲間たちで集まるときにもぴったり。ただし、満席の場合もあるのでご注意を。

シェフの竜田朗弘さん。高校卒業後に調理師専門学校に入り料理人の道を歩み続けている。

シェフの竜田朗弘さんは、フランス料理を学び東京のビストロで腕を振るってきた。「かめじま商店」で働くようになったのは2019年10月から。竜田さんがシェフに就任したことで、酒に合うツマミだけでなく、フランス伝統のカスレやジビエ料理などもメニューに並びメインディッシュの幅が広がった。店を訪れる客からは「これほど本格的な料理が食べられるとは思わなかった」と驚きの声が上がっている。

女性に人気の「雲丹プリン」は、自然な甘さが魅力のツマミ

オープン当初からの名物「雲丹プリン」690円。ムースのような感覚でいただける酒のお供。

瓶詰された小皿料理はあらかじめ作られており、注文するとすぐに提供されるので最初のオーダーにオススメ。なかでも「雲丹プリン」はウニ、卵、生クリーム、そしてトウモロコシのピュレを混ぜ合わせ、蒸し焼きにしたツマミだ。ウニの風味と、トウモロコシの自然な甘さが絶妙で、舌ざわりはなめらか。スパークリングワイン、クラフトビール、ハイボールなどとの相性がよい。

小皿料理はこのほかに、「オリーブのマリネ」「ピリ辛ドライトマト」「ポテトサラダ」「キャロットラペ」「レンズ豆のマスタード和え」「うずらの玉子醤油漬け」などがある。

新鮮な白レバーを、シナモン醤油でいただく「鶏の白レバー刺し」

「鶏の白レバー刺し」790円。新鮮なレバーを使っているため臭みはまったくない。

「鶏の白レバー刺し」も外せないメニュー。系列の焼き鳥店「ヨシモリ」で提供されるレバーとまったく同じものを使っているため、鮮度は折り紙つき。脂ののった希少な白レバーを真空低温調理で仕上げることで、独特のねっとりとした食感が生まれる。これを、醤油にシナモンスティックを漬けて作った“シナモン醤油”につけていただくのが「かめじま商店」流。一見、和風に見えるが、甘くエキゾチックな香りが広がるため、白ワインやハイボールともよく馴染む。

身近な魚をフレンチの技法で仕上げた「イワシのコンフィ」

天然イワシは脂ののりが素晴らしく、豊かなうまみをそのまま味わえる「イワシのコンフィ」880円。

竜田さんの腕が光るのが「イワシのコンフィ」。コンフィとはオイルに素材を浸し、じっくりと火を入れる調理法のこと。フレンチの技法を使い、日本ではごく身近なイワシに火入れした。レモングラス、タイム、ローズマリーなどを入れて香りをつけ、最後に少量のナンプラーをかけて仕上げている。イワシと共に火入れしたミニトマトとオイルを混ぜ、そこにライムを搾ると最高のソースになる。

ビストロ料理に負けない、個性豊かな自然派ワインをセレクト

本日のグラスワインからオレンジワイン「クレタパッリャ シック ビアンコ」750円。ボトルは3,000円。

自然派ワイン(ヴァンナチュール)の数々は、「かめじま商店」の強み。ぶどう栽培から醸造にいたるまで可能な限り自然な製法で造られているため、従来のワインのイメージを覆す味わいを持つものも多い。同店のセレクトの基準は、料理に寄り添えて、翌日に辛くならないワイン。「大人の方々に楽しく飲んでいただいて、次の日の仕事も朝から気持ちよく頑張っていただきたい」という思いからだそう。自然派ワイン(ヴァンナチュール)初心者から上級者まで楽しめるよう、偏りなく取り揃えている。

 

酒屋のため、店内のショーケースやセラーに並ぶボトルワイン(2,220円~)は購入でき、抜栓料(ひとり250円)を支払えば料理と共に店内で楽しめる。グラス(650円~)での用意もあり、スパークリングワイン1種、白ワイン(オレンジワインを含む)と赤ワインは各3~4種ほど揃う。気に入った銘柄を帰りに購入して、自宅で楽しむことも可能だ。

ワインだけじゃない! ひと捻り利かせたドリンクも見逃せない

カメの甲羅に見立て6角形に切ったレモンを添えた「かめじまハイボール」580円。

「かめじまハイボール」は、店名を冠しているだけあり、随所にこだわりを感じる一杯。グラスは、職人がひとつひとつ手作りしている松徳硝子のもの。佇まいが美しいだけでなく、ガラスが薄いため飲み口はとても繊細だ。

使用しているのはサントリーの「角」だが、ひと口いただくと少し違う味わいに気づくはず。隠し味にごく少量の梅酒を加えているからだ。甘さを足すというよりも、少量の糖分が加わることでウィスキーの香りが引き立つのだとか。レモンに差したクローブがほのかに香るのも心地よい。

「レモンサワー」550円。レモンを皮ごと搾っているため、ビタミンCが豊富で美肌ケアにも◎。

女性人気が高いのがコールドプレスの「レモンサワー」。無農薬&ワックスフリーの島レモンを皮や種までまるごと搾っている。レモンの爽やかな酸味のなかに、ほのかな苦味も感じられる大人の味。自家製シロップを少し入れているため飲みやすく、どんな料理にもよく合う万能ドリンクだ。

サク呑みにも満腹ディナーにも使える、懐の深さがうれしい

「かめじま商店」の近くには亀島川が流れる。地域の人々に愛されるように、店名に土地の名を冠した。

同店の魅力は、多様なシーンに応えてくれるところ。1人で訪れて小皿料理1品とグラスワイン1杯で帰ってもよし。2人で訪れ、今回紹介した料理にメインディッシュをプラスしボトルワインを頼んでシェアするもよし。仲間4人で集まり、コース料理(3,600円~)を堪能するのもよいだろう。

「かめじま商店」はいつでもあなたを、おいしい料理と酒で出迎えてくれる。

 

【本日のお会計】
■食事
・雲丹プリン 690円
・鶏の白レバー刺し 790円
・イワシのコンフィ 880円
 
■ドリンク
・オレンジワイン クレタパッリャ シック ビアンコ 750円
・かめじまハイボール 580円
・レモンサワー 550円
 
■コペルト 300円
 
合計 4,540円

※価格はすべて税抜

 

取材・文:梶野佐智子
撮影:松村宇洋