日本茶、フォアグラ、トムヤムクン……。これらがカクテルになるとどうなるのか!?

ここ数年で一気に浸透したミクソロジーカクテル。「ミクソロジーって、果物とか使って、見た目がきれいなアレね」と思った方は、半分正解で半分不正解。世界的な流行と相まって、ミクソロジーカクテルの世界は加速度的に進化する一方なのだ。

定番のハイボールや最近人気のジントニックもいいけれど、ミクソロジーカクテルの奥深さを知ればお酒の面白さがさらに深まるはず。そこで日本のミクソロジーカクテルを牽引する南雲主于三さんに、最新事情を聞いた。

 

 

透明なフィルムで覆われた中ではモクモクと煙が立ちこめる。テーブルにはこの状態でサーブされる。

 

 

そしてフィルムを取りさると、ふわっとスモーキーな香りが漂い、登場するのがカクテルグラス。フォアグラを使った特製のウォッカ、チョコレート、ナツメグ、カシスで構成された南雲さんのオリジナルカクテルだ。煙は、燻製の香りをつけるときに料理などに使われるスモークガンで生成されたもので、フォアグラのコクとチョコレートの甘さを引き立てる。最初からミクソロジーのダイナミックさに圧倒される。

日本茶をカクテルにするという挑戦

 

南雲さんといえば、先頃話題になったのがギンザシックスにオープンした「ミクソロジーサロン」。日本茶を使った新しいアプローチのカクテルを味わえるとあって、連日にぎわっている。「お茶は父親が趣味でお茶事をやっていて、昔から興味はあったんです。けど、カクテルにしようとするとものすごく難しくて。通常のやり方で作ろうとすると、どうしても酒の味が支配的になってしまう。なので日本茶をベースにして徐々にお酒を加えていくというやり方をしました」

玉露をはじめ、ありとあらゆる日本茶を試したという南雲さん。それぞれのお茶の特徴を楽しめるよう、茶葉を使ったオリジナルのスピリッツまで開発してしまったというから徹底している。

 

 

今回紹介していただいたのは玄米茶のカクテル。玄米茶をつけ込んだオリジナルウォッカを使用することで、雑味のないキレイな味になるという。さらにゆず、レモン、卵白でスムースなカクテルに仕上げた。「外国からのお客様にすごく喜ばれますね。フォーシームス、つまり4つの縁で4種類の味を楽しんでいただく趣向です。1つはゆかりで塩味を、もう1つの味噌は旨味、3つめはカシスで酸味を感じていただき、何もない縁でそのままの味を楽しんでいただくように」。一口ごとに違う味を楽しむことで、カクテルの面白さと奥深さを体験できる心憎い演出だ。

仮説と妄想からカクテルは生まれる

 

南雲さんの店のひとつ「Mixology Experience」のメニューには、ブレックファーストやタンドリーチキン、トムヤムクーラーなど謎のワードが並ぶ。これがカクテルの名前というから驚きだ。こんな奇想天外なカクテル、どうやって思いつくのだろうか。

「仮定と仮説を立てるんです。想像というか妄想というか。こういうカクテルを作ってみたいと思ったときに既に味のイメージはできているんです。それをどうやって具現化するかが重要なんですが、そこには経験や勘みたいな要素が絡み合ってきます。ロジックみたいなのは後からですね。コレだっていう公式みたいなのはないですし、だからこそ面白い」

「例えばトムヤムクーラーはゴクゴク飲めるカクテルを作りたいなと思ったのがきっかけ。パクチー、バルサミコ、ライム、タマリンドシロップなどで作っています。なかなか味が決まらなかったときに、地域性のある食材をつかうことが大事で、この場合はタマリンドやレモングラスを使うことで完成しました。食べるものをカクテルにするとき“トムヤムクン”なんていうと面白い、Funnyなものを想像するじゃないですか。でもそうじゃなくて、食中酒として美味しく飲めるものにしたかったんです」と南雲さん。その言葉どおり、甘、辛、酸がほどよくミックスされた爽快感のある味わいは一気に飲み干したくなる。

まさに五感をフル稼働させて楽しめる最新のミクソロジーカクテル。カクテルの可能性を無限大に広げる、クリエイティビティの結晶を楽しんでみてはいかがだろう。