おしゃれフードトレンドを追え! Vol.44

ブランドのレストランは世界観を体感できるのか?

ホリデーシーズンは、憧れのラグジュアリーブランドが気になる時期。高級ブランドによるコンセプトレストランが話題になってしばらく経ったが、現在はどんな状況なのだろう。それぞれのブランドレストランやカフェを久しぶりに食べ歩いてみることにした。

エンポリオ アルマーニ カフェ(出典:ベッキオさん)

私が初めてラグジュアリー系ブランドのカフェに行ったのはミラノコレクションに通い始めた2000年代初めの頃。次のショーまで時間が空いたときには、仲間との待ち合わせに便利なブランド系カフェでお茶するのが楽しみだった。モンテナポレオーネ通り近くの「エンポリオ アルマーニ カフェ」や、ガレリアにある「グッチカフェ」は定番で、スイーツ&コーヒーのときもあればシャンパンと軽食を楽しむことも。ミラノにブルガリ ホテルができた時には、部屋での撮影を兼ねてロビーのレストランで食事しながら打ち合わせをすることも、流行っていた。このようにファッション業界の皆にとっては、ブランドというステイタスがあり、馴染みがあって安心できる場所として認識されている。「〇〇のカフェでお茶してきた」が業界人的なお約束のキーワードになっていた。

ベージュ アラン・デュカス 東京(写真:お店から)

東京では2004年にオープンした「シャネル」と「アラン・デュカス・エンタープライズ」のコラボによるレストラン「ベージュ アラン・デュカス 東京」を皮切りに、2007年にはアルマーニのリストランテ、「グッチカフェ」(現在は閉店)、「ブルガリ イルカフェ」(明治神宮前店は閉店)と続いた。都内のカフェも、業界人の打ち合わせには便利な立地と雰囲気のため重宝がられていた。我先に!とこぞって行くわけではないが、行ったことがあって当然だという立ち位置だ。

ピュイフォルカ シャンパンバー HERMES 銀座店(出典:マダム・チェチーリアさん)

そして現在、映えるビジュアルを探す人たちにとってラグジュアリーブランドのお店は格好の空間になっているようだ。銀座のエルメスタワー2階の「ピュイフォルカ シャンパンバー」でシャンパンを飲み、非売品のケリー形チョコレートを投稿すれば羨望の眼差し。GINZA SIXの「カフェ ディオール バイ ピエール エルメ」では連日女性たちで賑わっているという。世界観こそが命のラグジュアリーブランド 。それぞれの表現する食とは?

エレガントな店内、コスパ最高の本格イタリアン:アルマーニ / リストランテ(銀座)

銀座のアルマーニタワーがオープンして今年で12年、1年の改装期間を経てリニューアルオープンした。タワー10階と11階にある「アルマーニ / リストランテ」は、ジョルジオ・アルマーニ自身がデザインを監修しており、アルマーニを象徴するカラーのネイビーブルーのチェアが配され、ゆったりとした席配置で居心地のよい空間だ。入り口にはバーエリアが新設され、ウエルカムカクテルが振る舞われるという贅沢な雰囲気だ。

秋のランチコース「ASSAGGI」(4,500円)は前菜、メイン、パスタ、デザートの4品。茄子とホクホクのじゃがいも、パルミジャーノチーズを使ったグラタンは温かくほっこりとする味わい。

大きな管状のパスタ、パッケリにイカラグーソース。イタリアのパスタ職人が日本では数少ないパスタマシンを使って作り上げるパスタは、もちもち食感が特徴で、なかなかこのような珍しいパスタを食べられる店はないので貴重だ。

メインは淡白ながら脂が乗ったハタをオーブンで焼き、レモンの爽やかな香りとボッタルガでアクセントを利かせた一品。

デザートは柿とキャラメリゼしたバナナ、マスカルポーネのミルフィーユ。その後はコーヒー・紅茶とともに焼き菓子もあるので、ゆったりチェアで延々とおしゃべりを楽しめそうだ。この価格でこのボリュームとクオリティは、正直驚き。伝統的なイタリア料理をゆったりラグジュアリーな空間で堪能できる、イタリア的懐の深さとおもてなしの心を感じる店だった。

開放感あるモダン空間で味わう、新感覚メニュー:ブルガリ イル バー(銀座)

出典:マダム・チェチーリアさん

銀座の中央通りにそびえ立つブルガリのビル、脇道の小さな入り口から入ると受付の女性の案内で専用エレベーターに乗り10階のバーへと向かう。入口から漂うブルガリの品のある香水の香り、暗めの照明でシックな雰囲気はミラノのブルガリホテルと同じだ。店内は都会的な空間で、グランドピアノが奥に配され、ゴールドに煌めく壁、5人がけのソファセットが2つ、テーブル同士の間隔も広く、吹き抜け天井からは煌めくライト。迫力ある9メーター高の窓から入る太陽光が、チーク材の壁や床に反射している。

カジュアルなパスタランチは10階の「ブルガリ イルバー」でいただけるが、料理を担当しているのは同ビル9階の「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」の総料理長ルカ・ファンティン。「Asia’s 50 Best Restaurants 2019(アジアのベストレストラン50)」に2年連続で選出されており、イタリア料理にコンテンポラリーな解釈を加えた料理が特徴だ。4,800円のパスタランチは、前菜、パスタ、飲み物&デザートのコース。プロシュートと旬のフルーツ、スパゲティ イカスミとズッキーニ、ティラミスを選んだ。どれも素材が新鮮でシンプルな味わい。創造性ある盛り付けがファッションを感じさせる。アーバンな雰囲気はランチよりも夜に似合うのだろう、ジュエリーブランドならではの都会的ラグジュアリーを楽しむ店だ。

映え度ナンバーワン、女子憧れのスイーツ:カフェ ディオール バイ ピエール エルメ(銀座)

出典:ぐるめのいちごちゃんさん

ディオールが、スイーツ界のピカソと称されるピエール・エルメとコラボレーションしたカフェ「カフェ ディオール バイ ピエール エルメ」がラグジュアリーかつ可愛いビジュアルで女性たちを虜にしている。ディオールがプロデュースするフェミニンな空間は、淡い色味で統一されたテーブル&椅子で、ゆったりソファ席もある。もちろんティーウェアはすべてディオールだ。

提供するメニューには、厳選した日本食材を採用。また旬の食材を使用するため、シーズンごとに異なる味わいが楽しめるのも魅力だ。デフィレドゥサヴール(オープンサンドイッチのようなもの)2,700円、ケーキ類は2,900円など価格がラグジュアリー。これにカフェラテ(1,300円)、アールグレイティー(2,400円)などをつけたら立派なディナーを食べられるプライスだ。味はもちろんピエール・エルメなので繊細かつ美味だが、ケーキのサイズが驚くほど大きいので女子同士でシェアをオススメしたい。

メニューをiPadで選ぶところはハイテク感があり、キッチンカウンターもやや未来的なデザイン。ポップで甘いフェミニンな世界観は、ディオールが描く女性像そのものなのだろう。今回リサーチした店の中で満席だったのはここだけで、待っているお客も2〜3組いたので、平日昼間でこの人気ぶりはすごい。

誰もが知る憧れのラグジュアリーブランド は、その世界観こそがブランド 。提供される食べ物の味も大切だが、空間デザイン、店でのおもてなし、椅子の座り心地や香りに到るまで、そのブランドらしさが貫かれているかどうか。レストランやカフェを体験することでファンが増えたり、さらに好きになったり、再発見があったりする。

 

さすが高級ブランド 、その味のクオリティは保証済み。あとは自分の好みのテイストを探してトライしてみていただきたい。

 

※価格は税・サービス料別

撮影・文/小泉恵里