〈サク呑み酒場〉

今夜どう? 軽〜く、一杯。もう一杯。

イマドキの酒場事情がオモシロイ。居酒屋を現代解釈したネオ居酒屋にはじまり、進化系カフェに日本酒バー。どこも気の利いたツマミに、こだわりのドリンクが揃うのが共通点だ。ふらっと寄れるアフター5のパラダイスを、食べログマガジン編集部が厳選してお届け!

痺れる辛味と刺激的な香りに酔いしれる

唐辛子や花椒などの香辛料をたっぷり使った小皿料理をつまみに、多彩な酒をいただくネオ酒場。

神保町の裏通りにある「四川大衆 ハオワール」に、“麻辣”を愛する人々がこぞって訪れている。大衆酒場×四川料理をコンセプトにしている同店は、料理ひと皿300円~、お酒一杯380円~ という気軽に立ち寄れる価格設定が魅力。花椒(麻)や唐辛子(辣)などの香辛料をたっぷり使った刺激的な味わいを、懐具合を気にせずに楽しむことができる。

価格は大衆的でも、味は高級店に勝るとも劣らない本格派

朱色をキーカラーにした店内。手書きのメニュー札が貼られ、丸テーブルとパイプ椅子が並ぶ。全40席。

手書きのメニュー札が壁に貼られ、丸テーブルとパイプ椅子が並ぶ店内は、大衆酒場的でもありアジアの屋台のようでもある。ガラス越しに厨房の様子が見える設計になっておりライブ感も抜群だ。

店名の“ハオワール”とは、中国語で“楽しい、おもしろい”という意味。四川料理をつまみながら、ワイワイと呑める大衆酒場をイメージした。接客もフレンドリーで、丁寧なサービスというよりはスピード感を重視する。とはいえ、昭和的な大衆酒場にありがちな相席の文化はなく、女性ひとりでも安心して呑める。

鉄鍋を豪快にふる店主の菊池正寛さん。本格中華料理店と変わらぬ火力で、一気に料理を仕上げる。

店主の菊池正寛さんは「うちは大衆酒場ですが、味は本格的というのが軸になっています」と話す。香辛料には強いこだわりをもっており、花椒の粒を鍋で炒ってから粉にした香り高い「花椒粉」、唐辛子3~4種を炒って粉にして花椒粉と合わせた刺激的な「麻辣粉」、そして麻辣粉と油を合わせた「麻辣醤」と、すべて店で作っている。当然のことながら、市販のものとは風味がひと味もふた味も違う。

まずはコレからスタート! 名物の「麻辣おでん」

名物の「麻辣おでん」。大根90円、小松菜150円、牛ハチノス130円、白モツ120円、ウインナー120円、チビ太(こんにゃく・海老と鶏の団子・ちくわ)150円。

まず注文したいのは店の名物「麻辣おでん」。2種類の豆板醤、自家製の麻辣醤、四川唐辛子、花椒の粒、ニンニクなどを入れた出汁で、具材をじっくり煮込んでいる。具に出汁が染み込んでいるため辛味は強い。小松菜、もやし、キャベツなどの野菜は、注文が入ってから煮汁に入れさっと茹で、火鍋の要領で提供する。

生ビールやホッピーとの相性は間違いなし。注文してすぐにテーブルに運ばれるところもうれしい。

クミンの香りが食欲をそそる「蒙古烤肉」

肉の上に麻辣粉とクミンの粉をたっぷりかけた「蒙古烤肉(羊肉)」680円。

クミンを中心としたカレー風味のスパイスで下味をつけた肉を焼き、さらに麻辣粉とクミンの粉をばさっとふりかけたひと皿が「蒙古烤肉(モウコカオロウ)」だ。肉の種類は「豚肉」580円、「羊肉」680円、「牛ハラミ」780円から選べるが、オススメは断然「羊肉」。

羊肉とクミンを合わせて焼いたり炒めたりする料理は、中国東北地方やウイグル自治区などで食べられる庶民の味。そこに麻辣粉を合わせることでパンチのある味に仕上げている。

羊肉の野趣に富んだ味と噛み応え、クミンのエスニックな香り、そして麻辣粉の刺激……。やみつきになる人が続出中の逸品だ。ちなみに、添えられているのはシシトウではなく素揚げした青唐辛子。辛さレベルは超ド級なのでご注意を。

これぞ本格四川の味!「麻婆豆腐」の痺れるうまさ

花椒と唐辛子のバランスが絶妙な「麻婆豆腐」500円。さらに刺激が欲しい人は、「花椒粉」や「麻辣粉」を各50円で追加できる。

菊池さんの腕が光るのが「麻婆豆腐」。専門店さながらのクオリティの味が500円で食べられるのかと驚く人が多い。

花椒、唐辛子、豆板醤など10種の香辛料をブレンドしたスープに、豆腐、ひき肉、さらにニラを加えて炒め煮にする。すごい勢いの炎を上げながら、中華鍋をあおり一瞬で仕上げるのがおいしさの秘訣。皿に盛ったら、さらに花椒粉をふりかけて完成だ。

甘味はほとんどなく、脳天を刺激する痺れる辛さが特徴。その辛さを中和させるように、酒がグイグイと進んでしまう魅惑の一品である。

ひと捻りある、酒のラインアップも魅力

キンミヤ焼酎を凍らせたシャーベットにバイスを注ぐ「バクダンサワー(バイス)」380円。

一杯目に生ビールやホッピーもいいが、「バクダンサワー」もオススメ。キンミヤ焼酎を凍らせたシャーベットをグラスに入れ、そこに瓶に入ったサワーを自分で注ぐスタイル。「レモン」「バイス」「青りんご」「お疲れさんにクエン酸」の4種から味を選べる。女性にも人気で、花椒や唐辛子の辛さを爽やかにリセットしてくれる。

「ドラゴンハイボール」(380円)は、紹興酒を炭酸で割ったもの。

中華料理特有の油分をさっと流してくれるのが、紹興酒を炭酸水で割った「ドラゴンハイボール」。焼酎はアルコール度数が25度ほどだが、紹興酒は15度ほどなので気軽に飲めるのが特徴だ。紹興酒は甘味があるため、料理の辛さを引き立て、舌の痺れを癒やしてくれる。

 

「四川トマトサワー」は〆の一杯か、それとも罰ゲームか?

勇気のある人は挑戦してほしい「四川トマトサワー」450円。

そして最後に紹介する一杯が「四川トマトサワー」だ。その名前からお店のオススメかと思って注文する人もいるが、それほど生やさしいモノではない。トマトサワーにあの「麻辣粉」をティースプーンで山盛りにふりかけたオリジナルドリンクなのだ。

最初のひと口は、それほど辛さは感じない。「これなら飲めるかも?」と一瞬だけ思うが、遅れて辛さが襲ってきて、徐々に舌も喉も痺れてくる。

 

「メニューには、あえて“激辛”などの表示はしていません。知らずに飲んで驚く人がいれば、それはそれでおもしろいかなと思っています(笑)。もちろん、どんなお酒か尋ねられたらきちんと説明しますよ」と菊池さん。

その刺激の強さに笑いだす人もいれば、やみつきになって再びオーダーする人もいる。

看板や暖簾、店内にあるメニュー札はすべて店主の菊池さんが書いたもの。書道六段の腕前。

今回紹介した品を筆頭に「四川大衆 ハオワール」には刺激的なメニューが多いことは間違いない。その一方で「エビ春巻き」(120円)、「焼売」(90円)、「餃子」(90円)などの点心や、「エビマヨ」(500円)、「油淋鶏」(500円)といった、辛味のない料理も置いているため、辛いものが苦手という人がいても一緒に楽しむこともできる。

 

大衆酒場好きも激辛好きも共に杯を傾けて盛り上がれる、新しいスタイルの酒場である。

 

【本日のお会計】
■食事
・麻辣おでん 750円
(大根90円、小松菜150円、牛ハチノス130円、白モツ120円、ウインナー120円、チビ太150円)
・蒙古烤肉(羊肉) 680円
・麻婆豆腐 500円

■ドリンク
・バクダンサワー(バイス) 380円
・ドラゴンハイボール 380円
・四川トマトサワー 450円

合計 3,150円

※価格はすべて税抜

 

取材・文:梶野佐智子(grooo)

撮影:松村宇洋