定食王が今日も行く!Vol.66
老若男女から愛され続ける新時代の老舗食堂
東京の数ある「ときわ食堂」の中で
巣鴨の顔ともいうべき名店
東京には「ときわ食堂」が数多く存在する。元来は明治・大正時代に上野近辺で人気だった「常盤花壇」という料亭が始めた食堂だ。その後、同じ名を持つ支店が東京各地に広がり、東京だけでも約20程度の「ときわ食堂」が存在するのだ。
その中でも海老フライを自信の一品として表看板に掲げるのが、巣鴨地蔵通りに本店を構える、「巣鴨ときわ食堂」だ。創業は平成元年で今年30周年を迎える平成生まれの老舗食堂なのだ。東京商工リサーチによると、創業30年以上を“老舗”と定義している。すでに巣鴨・駒込・大塚で5店舗を展開しており、地元では長く愛されて続けている食堂だ。
おじいちゃんも喜んで食べる
海老フライ&アジフライ!
店内に入ると、若者ももちろんたくさんいるのだが、おじいちゃん、おばあちゃん達も、夕ご飯を食べに来ている姿が見受けられる。メニューの種類も豊富で、その日仕入れた食材で変わるおかずもたくさんあるので、食堂代わりに通っている方も多いのだろう。高齢化が進む日本で、幅広い年代の人が気軽に集える様子は、現代の食堂のあるべき姿を体現している。
この店の名物は看板からもわかるように、そそり立つようなジャンボ海老フライなのだが、アジフライも旨いと評判なので、ここはミックスフライを推したい! ミックスフライはどの店に行っても、お店の得意技、個性、哲学が表れる一皿なので、一番おいしいところを全ていただける最強の一皿なのだ。
そして登場したのが、20cmはあるか思われる巨大な海老フライ。そして土台になっているのは、アジフライとメンチカツ。比較してみるとどれだけ大きいかがわかるだろうか。
海老は種類によって旬が夏だったり、晩秋だったり、冬だったりと様々ある。しかし、海老フライは断然冬が美味しい気がする。一見、剣山のような衣をザクザクっと口の中に入れると、プリップリの海老が中から跳ね出してくる。海老の甘みが弾力とともに口の中で踊り出す。70円で自家製のタルタルソースも頼めるが、シンプルに海老の味を感じられる中濃ソースとの相性もぜひ、試してみてほしい。海老フライ定食だけで1日、200食出ることもあるとか。
そしてもう一つの揚げ物名物でもあるアジフライ。こちらも肩幅が広く、肉厚で大きめサイズ。ザクザクの衣の中には、新鮮なのがわかるふっくらジューシーなアジが。辛子を聞かせると、あっという間に白飯を食べ終えてしまうほどの吸引力だ。
もちろん、ミックスフライ三銃士の最後を飾るのはメンチカツ。とびっきりジューシーなお肉は、弾ける肉汁で肉ならではの旨味を堪能できる。
毎日替わる鮮度の高い
お刺身やおつまみの数々
揚げ物ばかりが注目されがちだが、特筆すべきは店主が毎日、河岸で仕入れてくるという新鮮な魚介類。その証拠に店内奥にあるホワイトボードには、日替わりのお刺身の盛り合わせメニューと本日のおつまみメニューが手書きで張り出されている。
こちらが本日の刺し盛り、マグロ、アジにホタテ。旬の魚介を知れることも、日替わりメニュ−の醍醐味である。
また、味噌汁は味噌本来の風味を失わないよう、一人分ずつを小鍋で仕上げているのだとか。
毎日ぬかを300回かき混ぜて作った自家製のぬか漬けも漬かり具合が絶品だ。
他にも、米や肉は生産者から直接買い付けており、ポン酢、土佐酢などの調味料は全て自家製。その日仕入れた食材をその日の内に使い切るなど、食品ロスに関してもとても意識の高いお店だ。
終わりゆく平成とともに生まれた新時代の老舗食堂は、高齢化する日本の中で新時代の食堂として、愛され続けるのだろうと信じて止まない。