【映画のあの味が食べたい!】

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』恋する女のキノコ料理

聖女の園に渦巻く愛と嫉妬

子供の頃、父親と森へキノコ狩りにときどき行きました。キノコの中には毒があるものがあるので、安全なキノコを探すのですが、“これって、うっかりしたら死者が出るんだ”と思うと、のんきな遊びのハズが妙に張りつめた空気を感じたのを覚えています。

©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

 

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』は、冒頭きのこ狩りのシーンで始まります。

 

1864年、米国のバージニア州。南北戦争の戦火を逃れた森の中の白い館では、女子学園の教師と生徒が自給自足の共同生活を送っています。男性はみんな戦争に行ってしまったんですね。

 

その内のひとり、10代のエイミー(ウーナ・ローレンス)は、森の中でキノコ狩りをしています。この鬱蒼とした森がちょっと神秘的で美しく、これから始まる物語に期待感が募ります。

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このエイミーが森で出会うのが、足を負傷した北軍の兵士マクバニー(コリン・ファレル)です。最初は驚くものの、園長のマーサ(ニコール・キッドマン)なら彼を治せるハズと学園に連れて帰ります。

 

女だけの女子寮ですから、最初からちょっと違和感はあるのですが、“人助け”なのでみんなでせっせと介抱します。母性本能なのか、それとも男性に対する興味なのか、おそらくその両方もあってみんな彼が気になってしょうがない。

 

やがて彼の傷が癒えてくると、マーサは、女の子たちのざわざわした感情のゆらぎを感じとってか、彼に“もう出て行って欲しい”というのですが、外は敵だらけの戦地。まさに彼にとってこの館は、安らぎの場所なんですね。

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彼と囲む食卓は、象徴的です。

「結婚したければ、胃袋を掴め」とよくいわれますが、美味しい手作り料理でもてなすことは、女性の武器なのです。“私が作った”アピールもなかなかで、女の熱いバトルが繰り広げられます。結婚を夢見るアラサーの教師エドウィナ(キルスティン・ダンスト)は、マクバニーといい関係になりますが、周囲が黙っていません。特に小悪魔的なアリシア(エル・ファニング)がいたずらっぽく誘惑するところなどは、なんか“女子校あるある”です。

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そんなハーレム状態に浮かれていたイケメン、マクバニーにやがて悲劇が襲いかかります。

特に、欲望を抑えていた園長マーサの非情ぶりは怖いですね。やっぱり大人の女を怒らせちゃいけません。

 

実は、この映画。トーマス・カリナンの小説の映画化なのですが、1971年にも監督ドン・シーゲル、主演クリント・イーストウッドで『白い肌の異常な夜』というタイトルで映画化されています。ドン・シーゲルとイーストウッドのコンビといえば、西部劇ですが、マッチョな男性たちによるものと、ガーリー・ワールドの象徴のようなソフィア・コッポラ版はニュアンスがかなり違います。簡単にいうと“女目線”で描かれているワケです。

 

その物語のクライマックスともいえるシーンで登場するのが、またまたキノコです。

傷の癒えたマクバニーを迎えて食事会が開かれ、キノコ料理が供されます。

 

「キノコはお好き?」

なんとも、緊張感とエロティシズムを感じさせるセリフですね!

愛情の化身としてのキノコ

愛と欲望をめぐる映画のメインディッシュのキノコ料理にドキドキしていたら、またもやキノコ料理が主役ともいえる映画が登場しました!

 

今年のアカデミー賞で6部門にノミネートされているポール・トーマス・アンダーソン監督の『ファントム・スレッド』(原題)です。

©2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

 

こちらは50年代のロンドンが舞台。セレブに愛されるオートクチュールのデザイナー、ウッドコック(ダニエル・デイ・ルイス)と彼のミューズ、アルマ(ヴィッキー・クリープス)の愛憎溢れるラブ・ストーリーです。

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オートクチュールの世界が舞台なだけに、華やかな衣装にも目を奪われますが、それ以上にインパクトがあるのが、キノコの料理。

 

完璧主義なウッドコックは、コントロールフリークで愛する女性も支配下におきたいタイプ。柔な女性であれば、そういう冷たい関係に耐えきれず、泣いて逃げだすところですが、このアルマという女性はなかなかの強者で、泣き寝入りなどしません。

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森へ行って自ら毒キノコをとってきてなんとウッドコックに盛るのです。いえ、殺しはしません。体調を悪くさせて、自分の介抱なしでは生きられないように仕向けるのです。

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果たして、このふたりは最後にはどうなるのか?

それは観てのお楽しみですが、それにしても、2作品ともキノコ料理が、女の欲望、嫉妬、愛情の化身として使われているのが興味深いですね。

出典:コネリーさん

 

ということで、そんなキノコ料理が美味しいお店としてまず頭に浮かぶのが、気取らないフレンチ・レストラン「シャントレル」。

 

名前の由来は、中田雄介シェフがフランスの修行時代に出会ったキノコの名前というだけあって、キノコをつかったさまざまな料理に出会えます。気取らない雰囲気のお店ですが、味はエレガントで抜群。そんなところもキノコとよく似ていますね。

 

こちらのお料理には、キノコへの愛情はたっぷりと込められていますが、毒は入っていませんので、ご安心を!

出典:じゅあんさん

 

作品紹介

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『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』

2月23日(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開

 

舞台は1864年のバージニア州。南北戦争から隔離された女子寄宿学園に暮らす美しき7人の女性たちは、森の中で負傷した北軍兵士のマクバニーを見つけ、手当をしてかくまうことに。突如、男子禁制の園に野性的な男性が加わったことで戸惑う女たち。ところがハンサムなマクバニーの紳士的かつ社交的な人間性が次第に明らかになるにつれ、誰もが浮き足立ち、心をときめかせるように。そしてそのささやかなときめきは、次第に互いを牽制しあう危険な嫉妬と野心に変化。純真な聖女たちの抑圧されていた欲望があらわになったとき、秩序を保ってきた女の園は思わぬ事態に見舞われる……。

 

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『ファントム・スレッド』

5/26(土)より、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

 

1950年代のロンドン。英国ファッションの中心的存在として社交界から脚光を浴びる、オートクチュールの 仕立て屋 レイノルズ・ウッドコック。ある日、レイノルズは若きウェイトレス アルマと出会う。互いに惹かれ合い、 レイノルズはアルマをミューズとして迎え入れ、魅惑的な美の世界に誘い込む。しかしアルマの出現により、完璧で規律的だったレイノルズの日常に変化が訪れ……。やがてふたりがたどり着く、究極の愛のかたちとは。