〈今夜の自腹飯〉
予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?
恵比寿の古民家でイタリア料理!?
Mangiare、Cantare、Amore! これはイタリア人の人生観によく使われる言葉です。「食べて、歌って、愛して一生を終える」という意味だそうですが、イタリア人にとって食べることはそれほど大切なこと。食事の場は陽気で明るく、おいしい料理とワインと楽しい会話で満ちています。そんな風景を日本で再現できたらとオープンしたのが「Archan(アーチャン)」です。
恵比寿駅から徒歩7〜8分、店は路地裏にある古民家をリノベーションした完全に和のテイストで、まさかここがイタリア料理店だとはまったく予想がつかない佇まい。ところが格子戸を開けた先の坪庭に植えられたハーブを見ながら中へ入ると、1階のキッチンを囲むオールフラットの大きな石のカウンターも、個室とテーブル席のある2階も、しっとりと落ち着いた雰囲気ながら、漂う“おいしい香り”に自然と会話が弾み、陽気で明るいイタリアの趣を感じるのです。
さて、メニューを見るとお馴染みのイタリア料理の他に「4種のチーズパテ」「ふわふわオムレツ キノコクリームソース」「明太子スパゲティー」などの変化球もありワクワクしてきます。
はじめて訪れたなら評判の肉料理がパスタとメインに入り、本日の冷菜と温菜、デザート、そしてパンとカフェが付く「シェフのおまかせコース」(5,500円)がおすすめです。
まずはイタリア産の厚切りにした「サラミ」からスタート。やわらかくて弾力があって程よく脂ものっていて、一度食べると薄切りには戻れなくなりそうなほど。これをイタリアの飲料ブランド「マカリオ」のリモナータ(レモンソーダ)を飲みながら次の料理を待っていると「自家製のパンと自家製バター」が運ばれてきます。メニューにはバターとなっていますが実は生クリームを燻製しホイップしたもの。気がつくとパンがなくなってしまうので要注意です。
クライマックスの肉料理に向かって味を重ねる!
最初の皿はアンティパストの「本日の冷菜4種盛り合わせ」です。アラカルトメニューの中からシェフが選んでくれるのですが、リクエストにも応えてくれるので、気になった「呑めるベイクドチーズケーキ」を入れて組み合わせてもらいました。よく炒めた玉葱で甘みをつけ、粉糖代わりにミモレットを削りかけ、赤ワインで煮込んだ超絶品の「自家製赤マスタード」を添えています。見た目も食感も完璧なチーズケーキですが砂糖を一切入れない完全塩味のチーズケーキ、間違いなく呑めます!
他には茨城のとうもろこしを芯とよく炒めた玉葱と一緒に煮込み、甘みたっぷりでとろっとするくらい濃厚な別名“食べるスープ”の「とうもろこしのスープ」に、ふわっとしたイタリア産生ハムにメロンとシャインマスカットを添えた甘塩テイストな「生ハム」。そして泉州の水茄子をレモンドレッシングでさっぱりとした味わいにした「水茄子のサラダ レモンドレッシング」と、どれもイタリア料理でありながら違ったアプローチに仕上げています。
続いて「本日の温菜」の「トリッパのトマト煮込み」です。なんて繊細な味わいなのでしょうか。トマトの風味はほんのわずか、それよりも野菜の甘みが際立っているのはトリッパが無臭だからできること。聞けば臭みをとる茹でこぼしを3回行い、さらに塩茹でをしっかりしているそう。これはいくらでも食べられそうです。
コースのパスタは「お肉たっぷりのミートソースパスタ」。メインの肉料理で余った端肉を手動でミンチにしたものを使用しており、ゴツゴツとした食感は“肉”ですが、不思議とクドさがなくもたれません。その秘密は肉を氷と炒めて、固まった脂をすべて捨てているから。最後に入れるバターのまろやかさと香りをまとった“肉を感じる”ミートソース、シグネチャーディッシュなのも納得です。