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〈今夜の自腹飯〉
予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?
ソバヤノニカイ|東京・田町
JR田町駅は、居酒屋から高級レストランまで東西南北に飲食店が軒を連ねるエリア。その中でもひときわ賑わいをみせるのが、慶応仲通り商店街です。その商店街を入ってすぐの角に、何やらおもしろいネーミングのお店を発見。
「ソバヤノニカイ」、気になりますよね。たしかに1階には、そば屋さんがあります。
近寄って看板を見ると、どうやら焼鳥店のようです。
看板には「ソースで楽しむ新感覚焼き鳥!!」と書いてあります。一般的なタレや塩でなく、ソースで焼鳥を食べるということ? しかもそのソースは約100種類もあると。ますます気になるじゃないですか!
ソバヤノニカイの正体は、フレンチ風焼鳥とワインの店だった!
店名のとおり、そば屋さんの2階に行ってみると、そこには思いもよらない世界が!
入ってみて、まず気づくのが壁に「シャトー・マルゴー」「シャトー・ラトゥール」といった、5大シャトーなどのワインボトルが並んでいること。
ドリンクメニューにはスパークリングワイン、シャンパーニュ、スティルワイン、グラッパ、デザートワイン、徳島のクラフトビール、コーラ、ジンジャーエール、ウーロン茶のみ。ハイボールやサワー、生ビールもありません。
「うちは焼鳥とワインのお店なので、ワイン以外はクラフトビールしかおいてありません」と、こだわりをみせるのが店主の茂木克也さん。
元々、鉄板焼き店、イタリア料理店やスペイン料理店などで研鑽を積み、前職のフレンチ風焼鳥とワインの店でこちらのベースとなる料理を学びました。
もう一つ特徴的なのが、蓋を使った独自の焼き方。鉄板焼きの技法を取り入れた茂木さんオリジナルです。セラミック加工した蓋によって、下からの遠赤外線が上からも伝わるので、短時間でもふっくらと弾力があって、ジューシーに仕上がるそう。
では、いったいどんなメニューが並んでいるのでしょうか?
飲んでいるワインに合わせて変化する「ソバヤノニカイコース」
こちらはワインに合うおつまみ、焼鳥、炭火焼、〆のご飯もの、そして季節のおすすめというメニュー構成。さらに、名物「トリュフの炊き込みごはん」を含む12品から成る「ソバヤノニカイコース」4,800円(2名〜)もあります。
注目したいのは、茂木さんはアラカルトでもコースでも、飲んでいるワインに合わせて焼鳥を決めていること。だからお隣と内容が変わったり、同じ部位の焼鳥でもソースが違っていたりして、直前までどんなものになるのかわからないのも楽しみのひとつです。
本日は、白ワインに合わせた「ソバヤノニカイコース」にしました。
前菜は3品提供されます。取材日は「濃厚とろとろブラータチーズのカプレーゼ」(※)をいただきました。
※現在、提供は終了しています
イタリアンで最高の組み合わせと言えばチーズ、トマト、バジルでしょう。ブラータチーズはイタリア産が有名ですが、イタリア産に勝るとも劣らないと言われているのがカリフォルニア産。この「ディ・ステファノ」は濃厚でとろっとろ。甘みの強いフルーツトマトにピッタリです!
次は“ソースで楽しむ焼鳥”の登場です。こんなに見目麗しい焼鳥に出合ったことありますか?
写真の右から「ささみ 紅芯大根と桜のソース」「つくね ジャスミンの花で香りづけした焼き葱のマリネ」「もも シブレットソースとアブルーガ」「ふりそで しいたけとごぼうのソースにごぼうのフリット」「さえずり 白魚の唐辛子マリネとパルミジャーノチーズ」です。様々な料理を作ってきた茂木さんの経験を生かし、ひと串ひと串にアレンジを加えています。
その自慢のソースのレパートリーはすでに100種類以上あり、新しいソースは毎月追加されます。鶏はソースに合わせて毎日12種類ほどの部位を選び、ソースはそれぞれの部位と飲んでいるワインに合わせることを考えて、15種類以上を常に準備します。これで鶏×ソース×ワインの最高のマリアージュが完成するのです。
食材は形より味を重視。鶏は茨城の「古白鶏」を使用。朝締めした鶏は身質がやわらかく、水分が多いので茂木さんが目指すふっくらとした食感に仕上げるにはちょうど良いそう。
野菜は徳島の生産者に、形は気にしないので味がいちばんおいしいものを送ってほしいとお願いしているそう。だから、大きさがばらばらだったり、曲がっていたりしていても、味はとびっきりおいしい!
その野菜の持ち味を活かし、シンプルに炭火焼きして豪快に盛り付けた「本日の炭火焼き(徳島野菜の炭火焼き盛り合わせ)」は、フランス・アルザス地方の白ワイン「リーフレ」に合わせてカラスミをたっぷり振りかけています。
高糖度の「珊瑚樹トマト」は桃と間違えてしまいそうな味わいで、アスパラガスは穂先がやわらかいのに茎は歯ごたえがしっかりとあります。レンコンはシャキシャキ、そら豆はホクホク。でも、いちばん驚いたのはしいたけが甘いと感じたこと。ゲランド塩を振って炭火で焼いただけとは、とても思えません。
〆の「トリュフの炊き込みご飯」に付く、フワッフワな卵がすごい!
〆は名物の「トリュフの炊き込みご飯」です。小さい土鍋でひとつひとつ炊き、最後に弱火で蒸らすので、蓋を開けたときの香りがすごい!
底からさっくりと混ぜ、茶碗に取っていただくと、さらに香りが高くなって何杯でもいけそうです。
トリュフの風味を堪能した後は、ホイップした卵をかけて味変してみましょう。
茂木さんが食べ進める頃合いをみて手仕事で泡立てた卵は、スフレのようなフワッフワの食感。トリュフの塩気をまろやかにするだけでなく、卵独特の味や香りを強調せずに、米に優しくまとわせ、“おいしい”を倍増させます。
これは“TKGの革命”と言えるでしょう。手間暇かけただけ、口にしたときの喜びも大きいのです。
食材に対する徹底ぶりが、焼鳥の新しい扉を開いた
マリアージュをいちばん大切にしていると話す茂木さんは、ソースだけでなく食材も白ワイン用と赤ワイン用を作っています。
例えば、つくね。前者には山芋を入れてふわふわとした食感にし、後者には背脂の生ハムであるラルドを入れてハンバーグ風にしています。
ここまで徹底しているからこそ生まれてくる食欲と好奇心をそそるアイデア豊富な“新感覚焼鳥”が、焼鳥の新しい扉を開いたのです。
焼鳥で季節感を出すことができる唯一無二の店。「ソバヤノニカイ」には、型にはまらない自由と楽しさがあります。
【本日のお会計】
■食事
・ソバヤノニカイコース 1名4,800円
※2名から注文可
※コース内容:前菜3品、本日のサラダ、串焼き5本、本日の炭火焼き、トリュフの炊き込みご飯、本日のデザート
■ドリンク
・白ワイン(ヴィラン:シャルドネ/フランス・プロヴァンス) グラス890円
・白ワイン(リーフレ:シルヴァネール/フランス・アルザス) グラス1,200円
合計 6,890円
※価格はすべて税抜