フードライター・森脇慶子が注目の店として訪れたのは、東京・銀座「レ・コパン ドゥ ドミニク・ブシェ」。ひな鶏を丸々1羽使ったローストチキンや、じっくりと柔らかく煮込まれた仔羊のトマト煮込みなど、一流レストランならではのメニューが豊富に揃ったテイクアウトのその味とは?
【森脇慶子のココに注目 第26回】「レ・コパン ドゥ ドミニク・ブシェ」
テイクアウトもいいけれど、お弁当にはいささか食傷気味……。そんなお持ち帰り上級者に是非試していただきたいのが、これ。銀座のフランス料理店「レ・コパン ドゥ ドミニク・ブシェ」のテイクアウトの数々だ。
場所は泰明小学校のすぐお隣。小さな雑居ビルの地下にひっそりと佇むこの店は、パリと東京、合わせて3つのミシュランの星を持つガストロノミー「レストラン ドミニク・ブシェ」の姉妹店だ。オーナーシェフのドミニク氏は、パリの「トゥール・ダルジャン」をはじめ「ホテル・ド・クリヨン」のメインダイニング「レ・ザンバサドゥール」など名だたるレストランの総料理長を経て独立した、いわば大御所。
親日家としても知られるドミニクシェフが、自分自身、子供の頃から親しんできたフランスの家庭料理のおいしさを、もっと広く伝えたいとの思いから始めたのが同店。「母親がいつも私に作ってくれた、シンプルだけど温かみに満ちた料理をここでは提供していきたい」と語る。
なるほど、テイクアウトアイテムのラインアップを見てみれば、「レ・コパンの季節のテリーヌ」や「牛肉の赤ワイン煮込み 人参のピュレ」「ローストチキン じゃがいも」に「仔羊のトマト煮込み クスクス」etc.いかにも家庭的な素朴でわかりやすい料理がずらり。とはいえ、そこはフランスのガストロノミー界を牽引してきたドミニクシェフのこと。家庭料理とは言っても、かける手間暇は一流レストランのそれとなんら変わりはない。
例えば「仔羊のトマト煮込み クスクス」。元はと言えば、植民地時代の北アフリカやアラブから伝わった料理だが、今やフランスの国民食とまでいわれるほど、彼の地ではおなじみの味。家庭はもちろん学校給食でも定番になっているとか。それゆえ、作り方も簡単。香辛料などと共にただ煮込んだだけの肉や野菜のスープを、スムールと呼ばれる粒状の小麦粉(最小のパスタ)にそのままかけて食べるシンプルなスタイルが本来の姿だ。
が、しかし。ここでは、スープのベースとして用いるのは、水ではなく、2日間もかけて仕込むフォン・ド・ヴォー。これで仔羊肩ロース肉を煮こむのだから、「クスクスというよりも、ナヴァラン風煮込みですね」との伊藤翔シェフの言葉も頷ける。このフォン・ド・ヴォーの旨味に仔羊独特の草の風味がほのかに混ざり合い、エキゾチックな中にも品の良いコクを感じさせる。エレガントな「クスクス」だ。
また、圧巻はローストチキン。鶏を丸ごと一羽焼き上げるのは、なかなか家庭では面倒なもの。まさにテイクアウトなればこその一品と言えるだろう。しかも、そのサイズが気が利いている。いわゆる若鶏ではなく、フランスでいうプッサン。雌のひな鶏を使っているのだ。生後30〜40日、重さにして500〜600gの小型サイズで、2人で食べるにはちょうど良い大きさだ(私なら、多分1人でいけそうですが)。
味付けは、塩、胡椒のみ。だが、ローズマリーやにんにくと一緒に焼いているそうで、南仏を思わせる芳ばしい香りが食欲をそそる。ひな鶏なればこその柔らかさに加え、身に張りもあり、味わうほどに優しい肉汁の旨味が舌に伝わる。飽きの来ないおいしさだ。ちなみに、テイクアウトの際には食べやすくカットしてくれるのでご安心を!
ローストチキンは単品でも購入できるが、キャロットラペや豚肉のリエット、根セロリのレムラード(マスタードマヨネーズ和え)など前菜3品からなる「おつまみのセット」(内容はその時々で変わることも)や、パン・グリーンサラダにブルゴーニュ産の赤ワイン(750cc1本)が付いたセット「ローストチキンと赤ワイン」(2名分)13,000円なら、ステイホームでも、ちょっとしたディナー気分を楽しめそうだ。
そのほか、「鴨肉とフォアグラのテリーヌ」や「牛頰肉の赤ワイン煮込み」といったクラシックな料理にブルゴーニュ産赤ワインのハーフサイズが付く1人前用のセット「昔ながらのお料理とワイン」7,000円などもある。
※価格はすべて税込