【後編】ポテサラ界のキングオブキングス

本連載〈至高の名脇役〉にふさわしい一品料理の定番、ポテトサラダ。近年さまざまなアレンジや解釈が加わり、見た目も味も華やかな進化系が、ポテサラブームを盛り上げています。

 

一方で、じゃがいも、たまご、玉ねぎ、ハム、きゅうり、マヨネーズといった基本のレシピに忠実な王道のポテサラスタイルも、お店ごとに味に磨きがかけられて、さらに奥深いものになってきています。

前編の進化系に続いて後編で取り上げるのは、ポテサラの味を追求し続ける匠による、究極のポテサラたち。日本酒やビールに合う、居酒屋の名脇役として不動の地位を築く王道のポテトサラダを紹介します。

1. 日本酒に合うポテトサラダへの飽くなき追求

「おでん玉子のポテトサラダ」日和(神泉)

おでん玉子のポテトサラダ 600円(税抜)

おでんと自然派ワインを提供する居酒屋として、昨年神泉にオープンした「日和」。もともと同じ場所でおでん居酒屋を営んでいた料理長の望月さんが、近所の飲み友だちだったイタリア料理「AURELIO」のオーナー大本さんとコラボしてはじめたのがきっかけ。おでん屋さんだけに、出汁を生かした創作和食が自慢のお店です。今回紹介するのは、望月さんが目指している「日本酒に合うポテトサラダ」。

 

ポテサラに欠かせない具材として、じゃがいもの次に上げられるのが「たまご」。半熟卵をのせたスタイルや、自分でゆで卵を潰して作るひと手間足すスタイルなど、たまごのアレンジ方法は千差万別。望月さんも今のスタイルに行き着くまでは、色々な試行錯誤があったそう。現在は、2日間しっかりと出汁が染み込んだ「おでんのたまご」を使用。敢えて細かく潰さずに、その食感やおでんの出汁を染み込ませたたまごの味わいを楽しめるように形を残しています。

 

当然じゃがいもにもこだわります。時期によって銘柄は変わることもありますが、現在使っているのは、長野県東御市の「白土芋」。男爵いもの一種ですが、関東に流通することは滅多にないブランド品種で、滑らかな肌質と白い身、独特の旨味が特徴です。アクセントには、無添加の柴漬けときゅうりのピクルスを。同じ漬物としていぶりがっこを使うお店は増えていますが、柴漬けの赤とピクルスの緑で彩りも華やかに。仕上げの調味料は、定番のマヨネーズと塩胡椒、そして和がらしを少々。

 

奇をてらった斬新さはありませんが、望月さんの飽くなき追求が随所に見られる逸品。日本酒とぜひ味わってほしい。

2. 酒盗と生クリームが奥行きを作る、大人のポテトサラダ

「酒盗のポテトサラダ」かんだ光壽(神田)

酒盗のポテトサラダ 480円(税抜)

居酒屋激戦区、JR神田駅東口出てすぐにお店を構える「かんだ光壽」。日本酒を気軽に楽しめる居酒屋として、サラリーマンのお客さんを中心に常に満席で賑わっています。人気の秘密は、有名蔵元が手がける「かんだ光壽」オリジナル日本酒の豊富なラインアップ。ここでしか味わえない日本酒にぴったりな一品が、この「酒盗のポテトサラダ」。

 

よく潰したなめらかなじゃがいもは、甘みが特徴的な「キタアカリ」を使用。40分間じっくりと蒸すことで、さらにいも本来の甘みを引き出してくれます。粗挽き胡椒とカリカリに炒めたベーコンを細かく刻んで混ぜ込むことによって、なめらかな食感にほどよいアクセントを加えて大人味のポテサラに。

 

さらに決め手となるのは、まぐろの酒盗入りの生クリーム。濃厚さとクリーミーさが、味に奥行きを出してくれます。最初に感じるのは、生クリーム、ベーコン、胡椒の組み合わせによる、カルボナーラのような洋風な味わい。そして、マグロの酒盗の塩気と旨みが後から加わることで、日本酒と一緒に楽しめる究極の一品に仕上がるのです。

 

3. 世界一の呼び名にふさわしい、王道ポテトサラダ

「ポテトサラダ」青山ぼこい(表参道)

ポテトサラダ 630円(税込)

表参道駅から徒歩5分、骨董通りにひっそりと佇む「青山ぼこい」。昭和43年創業の歴史ある割烹・小料理屋。控えめに灯る行燈が目印のお店です。そして、創業以来多くのファンを虜にした人気メニューがこの一品。某グルメ雑誌でも「世界一のポテサラ」と賞賛されています。

見た目は至って普通のオーソドックスなポテトサラダですが、想像以上のこだわりが細部まで行き届いています。じゃがいもはキメが細かく滑らかな食感が特徴のメークインを使用。コンソメスープで茹で上げています。具材はベーコン、きゅうり、ゆで卵、玉ねぎとシンプルですが、炒めたベーコンの油も一緒に加えることで、しっかりとした旨みが口いっぱいに広がります。

 

さらに、多めのマヨネーズには卵黄を加えており、ポテトサラダ全体を濃厚かつまろやかに仕上げてくれます。控えめながらもしっかりと存在感を示す「ぼこい」のポテサラは、まさに居酒屋メニューの名脇役。ぜひ味わってほしい一品です。

4. じゃがいもとさつまいも、2つの食感と甘みのハーモニー

「いも芋サラダ」花とら(富ヶ谷)

「いも芋サラダ」750円(税抜)

タイガースファンの店主高橋さんが切り盛りする居酒屋「花とら」。カジュアルな雰囲気で和食を楽しむことができる、代々木公園駅の出口の目の前にあるお店です。当初は期間限定で出していたにもかかわらず、あまりの人気で定番メニューになった「いも芋サラダ」。その名の通り、じゃがいもとさつまいもの二種類のイモを使用した驚きの一品。

じゃがいもはポテサラの王道キタアカリ。さつまいもは程よい甘みの鳴門金時を使用。時期によっても銘柄は変えるそうだが、ホクホク感と上品な甘みをうまく掛け合わせています。さらに、2つのイモの食感にはひと工夫が。角切りにしたものとすりつぶしたものを合わせて使うことで、ホクホクの食感だけでなく、滑らかな舌触りを同時に味わうことができます。

 

隠し味には、生クリームと牛乳を少々。しっとりな口当たりとクリーミーな味わいをプラス。そこに定番具材のきゅうりと玉ねぎのシャキシャキが合わされば、口の中に様々なリズムの食感と味わいが広がります。二種類のイモが奏でるハーモニーは、ビールだけではなく日本酒とも相性抜群です。

〈至高の名脇役〉は、ポテサラ以外にもまだまだあります!

前編・後編で合わせて8つのポテサラを紹介させていただきました。調べれば調べるほど、奥深いポテトサラダの世界。進化系、王道系に関係なく、どのポテサラにも料理人たちの飽くなき追求が感じられました。ぜひみなさんが普段食べているポテサラとも食べ比べてみてください。

 

〈至高の名脇役〉は、ポテサラ以外にもまだまだあります! 次回は、イタリアンの名脇役「カプレーゼ」に焦点を当ててみたいと思います。乞うご期待。

 

企画・文・写真:大崎安芸路(Roaster)