〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
インバウンドの増加や食材の高騰で、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

人気餃子バル「ギョウザマニア」の姉妹店。ノウハウを生かした本場小籠包

西荻窪をはじめ都内に店舗を展開している「ギョウザマニア」をご存じだろうか。餃子バルとして有名で、作り置きをせず、注文を受けてから餃子の皮を伸ばして作るという日本では珍しいスタイルを取り入れている。本場で食べられるような出来たての餃子がおいしいとブレイクし、ミシュランガイド東京2019でビブグルマンに選出された。そんなノウハウを生かし、2018年神田に姉妹店としてオープンしたのが「小籠包マニア」。注文後に皮を伸ばして作るスタイルを守りつつ、小籠包に特化した専門店だ。

予算内でもいろいろ食べられるのがうれしい。

神田駅の高架下、雰囲気のある佇まいがわくわく感を盛り上げる

黒い外壁に並ぶ「蒸籠」「小籠包館」といった文字や、せいろが重ねられたディスプレイ、入り口脇に掛けられた鳥籠など、外観から感じられるのは独特な雰囲気。まるで中国のお店を訪れたかのような気分になる。

開店当初は日本語の看板を出しておらず、入り口もマジックミラーで隠れ家感が際立っていたが、現在は「小籠包マニア」と看板が飾られていて迷うことはないのでご安心を。店内の壁には中国語とポップなイラストが描かれていて遊び心満載。現地らしさが漂い「ちょっとおもしろそうな店に行ってみたい」、そんなときにもオススメの店だ。

神田駅から徒歩5分の高架下に雰囲気漂う店構え。
所狭しと描かれたかわいいイラストや文字。

皮は薄く、ヒダも細かく。肉餡の旨みとジューシーさを最大限に感じる「小籠包」

「ギョウザマニア」と同様に注文を受けてから皮を伸ばすスタイルはそのままで、出来たてが食べられる「小籠包マニア」。注文が入ると2~3cmほどの皮玉が7cmほどの大きさまで、するすると薄く伸ばされていく。皮をできるだけ薄くすることにより、中の肉のジューシーさを直に感じることができ、皮と餡の一体感が楽しめるのだ。

 

この薄さを実現できたのは、皮の美味しさを決定づける「老面」、いわゆるイースト菌の力が大きい。台湾や上海の老舗店では代々受け継がれた老面を持っており、それがその店ならではの皮の味の決め手となっている。本来門外不出の老面だが、縁があって2方から譲り受け、同店オリジナルの老面が完成した。これにより皮の強度が増し、今の薄さに辿り着いたという。

 

ほのかに小麦の風味を残した皮で閉じ込めるのは肉のうまみ。その蓋となるヒダの数は18以上と決まっている。「ギョウザマニア」でヒダを作る技術があがったことから小籠包を始めたというだけあって、試しに挑戦してもらったところ、なんと21ものヒダができた。その細かさと技術の高さは驚嘆ものだ。なお、21もヒダがあると中心が固くなりすぎるため、やっぱり18のほうがおいしいのであった。

薄く伸ばした皮で餡を包む様子。カウンター席から覗いて見ることができる。
ヒダの細やかさに繊細な技術を垣間見た。

自慢の小籠包を実食。本場の香酢をつけて食べるのがオススメ

せいろの中に並んだホカホカの小籠包を箸でつまみ、レンゲの上で皮を割ると、中からジュワーと澄んだ肉汁とスープが出てくる。このスープは、朝挽きの豚肉と鶏肉を使用した餡と、店で7時間煮込んだ鶏ガラスープが閉じ込めれた皮の中で混ざり合った極上のもの。深いコクが味わえる。

 

ただ、味はしっかり付いているが、鶏肉も使っているため豚肉のみのものより、さっぱりといただける。いくつでも食べることができそうだ。本場の香酢を付けて食べれば、さらに香りやうまみを楽しめる。

ホワッと匂い立つような小籠包。
鶏ガラスープと肉の旨みが溢れ出る。

専門店ならではの変わり種小籠包もぜひ食べてほしい

小籠包は「原味(プレーン)」の他に、専門店ならではのラインアップがある。「蟹黄醬(カニミソ)」は、肉餡に上海蟹の味噌と身が入った蟹好きにはたまらない濃厚な味。そして、「松露(トリュフ)」は、大きなトリュフのかけらが入っている贅沢な一品。香りを出すのに試行錯誤した結果、餡にはトリュフオイルも加えられた。さらに10月後半からは、ゴロッとした帆立が入った「帆立(ホタテ)」も加わり計4種類から選べる。4個入りと6個入りがあるため、少人数で訪れても複数種類を食べることができる。また、おひとり様や“量は食べられないけれどいろんな種類を食べたい”という方には、裏メニューで楽しめるので、店員に聞いてみるといい。

 

「酔払い海老」は紹興酒がたっぷり染み込んだ大人の味

小籠包の専門店ではあるが、小籠包以外の料理にも力を入れている。なかでも、客のほとんどが頼むというのが「酔払い海老」だ。“酔払い”という名の通り、桂花陳酒など数種類の中国酒を独自の配合でブレンドして味付けをした自家製のタレに一週間漬け込んだ、お酒の香りが濃厚な海老だ。一口食べるだけで、直接お酒を口に含んだかのように香りが広がるので、紹興酒好きな方やお酒に強い方にはとてもオススメ。ただし、運転する予定のある人は控えるべきだ。使う海老は、天然に近い状態で養殖された高級海老の「天使の海老」。頭をとった後は周りを気にせずかぶりついて海老ミソを堪能しよう。身は、ねっとりとした特徴的な食感の中にプリプリさがあり、お酒の香りと相まって癖になりそうな一品だ。

一週間漬け込んだ海老の素晴らしい照り。

ニンニクが効いた漬け卵黄を絡める、「にらと醤油タレに漬け込んだ卵黄」

箸休めには、見た目のインパクトが大きい「にらと醤油タレに漬け込んだ卵黄」を。皿の中央に円柱形に立てられたにらの上に、醤油タレに漬けた卵黄がのった一品だ。箸で卵黄を崩して、にらに絡めていただく。一皿で一束分使っているというにらは、臭みがまったくない。一方、卵黄はその見た目のシンプルさとは裏腹に、ニンニクの効いた醤油味でパンチのある濃厚な味。あえてにらに味付けをしないことで、卵黄がにらの甘みを引き立てるメニューとなっている。

漬け卵黄がねっとりと、にらに絡みつく。

さわやかな蓮の香りが広がる「自家製ちまき」

“ちまき”というと笹の葉や竹の皮で巻かれているものを想像するが、こちらは蓮の葉で包まれた自家製のちまき。1枚まるごと仕入れた蓮の葉をカットし、茹でて使っているため、せいろを開けた瞬間にさわやかな蓮の香りが広がる。初めて蓮の葉のちまきを食べる方はきっと驚くことだろう。もち米の中には松の実が混ぜられており、食感と香りに変化を与えている。もち米は太ると思われがちだが、蓮の葉には減肥作用があるとされ薬膳としても使われるので、女性にもオススメできる料理だ。

このほか、お酒を頼むとお通しで出てくるザーサイや自家製のタレを使った「よだれ鶏」なども絶品だ。

このボリュームちまきが380円とコスパも良い。

コスパにこだわっているので、いろんなメニューを食べ比べできる

「小籠包マニア」の魅力は味だけではない。気軽においしいものをたくさん食べてほしいことから、ほとんどのメニューが1,000円以下とリーズナブル。アルコールも生ビールや紹興酒が480円ほどで種類も豊富だ。1人で訪れて数種類の料理を注文しても2,000円台で楽しめてしまう。2階席はテーブル席なので10人前後のグループにも対応。1人での利用から宴会まで、幅広く利用することができるので便利だ。なお、小籠包を作る様子が見られる1階のカウンター席は人気のため、予約をするか早めに行くことをオススメする。

1階にはテーブル席と人気のカウンター席。
2階はテーブル席。
【今日のお会計】
■食事
・お通し 280円
・小籠包 原味(プレーン) 680円(6個)
・酔払い海老 320円
・にらと醤油タレに漬け込んだ卵黄 480円
・自家製 ちまき 380円

■ドリンク
・紹興酒 グラス 480円

合計 2,620円

※価格はすべて税抜

 

取材:岡崎たかこ(grooo)
文 :根本愛子(grooo)
撮影:松村宇洋